現代にも通じる痛烈な社会への諷刺の数々

 Gulliver’s Travels, Jonathan Swift, 1726(個人蔵)。
Gulliver’s Travels, Jonathan Swift, 1726(個人蔵)。

世界中のさまざまな世代の読者を引きつけてきた諷刺文学の傑作『ガリヴァー旅行記』。その面白さは、ユーモラスでシニカルなガリヴァーの、変幻自在な視点、多義的で多面的な好奇心、そしてそこから生じる想像と創造の大きな広がりにある。

展覧会の担当学芸員は、「『ガリヴァー旅行記』は、過去3世紀の間、世界中のさまざまな世代の読者を引きつけてきた諷刺文学の傑作です。作中で描かれる、科学技術が人々の暮らしや常識からかけ離れていくことへの不安や、国のかたちをどう作るかという問いは、現代の私たちにも切実なテーマであり、時代を超えた人間社会への透徹した視点を示しています」と見どころを語る。

300年の時を超えて、今なお人間社会へのさまざまな気づきを与えてくれるガリヴァーの旅。この稀有な名作の魅力を、豊富なコレクションを通じてさまざまな角度から伸びやかに映し出す。

Gulliver’s Travels, foreword by George Saintsbury, Jonathan Swift, 1886(個人蔵)。
Gulliver’s Travels, foreword by George Saintsbury, Jonathan Swift, 1886(個人蔵)。

奇想天外な冒険に秘められたメッセージとは

Gulliver and King of Brobdingnag, James Gillray, 1803(個人蔵)。
Gulliver and King of Brobdingnag, James Gillray, 1803(個人蔵)。

刊行当初から好評を博し、各国語版に翻訳もされた『ガリヴァー旅行記』は、大人から子供まで多くの読者に熱心に読まれていたと記録が残されている。そこには、あちこちに「笑い」が埋め込まれているが、単なる批判や皮肉とは異なったガリヴァー独自の諷刺の視点がある。人間社会、政治、海外の国々、科学の世界、そして人間の身体を見つめ、どのように着想して冒険譚の形に仕上げたのだろうか。その着想源に迫る。

さらに展示の最後では、『ガリヴァー旅行記』と日本との関係についても紹介。実は物語の中には、ガリヴァーが日本にやって来るエピソードも登場するが、その背景には、ウィリアム・アダムズやエンゲルベルト・ケンペルなどをはじめとする日英交流史上の重要人物たちがもたらした事実があった。慶應義塾が有する貴重な古典籍を手掛かりに、『ガリヴァー旅行記』に秘められた東西交流の実相を探る。

主人公の奇想天外な冒険と、そこに秘められた作者スウィフトのメッセージを、さまざまな角度から読み解いてみよう。

『蓬莱山』, 江戸時代(Nara-ehon Horaisan, Edo period)(個人蔵)。
『蓬莱山』, 江戸時代(Nara-ehon Horaisan, Edo period)(個人蔵)。

関連プログラムも開催

2026年7月10日(金)18時30分~、講演会「徹底解説!『ガリヴァー旅行記 300年』——作品創造の好奇心に迫る」が、『慶應義塾大学三田キャンパス北館ホール』にて開催される。入場は無料。申し込みは公式HPより。

開催概要

『ガリヴァー旅行記』300年「ガリヴァーと奇想天外!ワンダーランド―18世紀イギリスのはじける好奇心(キュリオシティ)」展

開催期間:2026年6月1日(月)~7月30日(木)
開催時間:11:00~18:00
休館日:土・日・祝(ただし6月13日〈土〉・7月11日〈土〉は開館)、6月15日(月)、7月13日(月)
会場:慶應義塾ミュージアム・コモンズ展示室(東京都港区三田2-15-45 三田キャンパス東別館)
アクセス:JR山手線・京浜東北線田町駅から徒歩8分、地下鉄浅草線・三田線三田駅から徒歩7分、地下鉄大江戸線赤羽橋駅から徒歩8分
入場料:無料

【問い合わせ先】
慶應義塾広報室☏03-5441-7640
公式HP https://kemco.keio.ac.jp/all-post/20260601/

 

取材・文=前田真紀 画像提供=慶應義塾ミュージアム・コモンズ