知られざる画家の才気に触れる
20世紀前半のスイスで活躍した異才カール・ヴァルザー(1877~1943)。20代でベルリンに出たヴァルザーは、革新的な表現を目指したベルリン分離派に加わり、象徴主義的な絵画作品をいくつも残した。そこはかとない昏(くら)さと精妙な色彩をあわせもつ彼の作品群は、謎めいた神秘性を湛え、見る者を惹(ひ)きつけてやまない。
『東京ステーションギャラリー』館長の冨田章さんは、「20世紀前半に活躍したカール・ヴァルザーの作品は、クリムトやシーレ、ムンク、ビアズリーなど、世紀末美術に特有の神秘性や象徴性を感じさせます。独特の昏さをまとっている点も共通しています。特筆すべきは、ヴァルザーが今から120年前に来日していることで、京都市や宮津市などに滞在して多くの作品を描いているのです。これらの作品は当時の日本の人々や風景を瑞々しい色彩で伝えており、画家としての力量が存分に発揮されています」と見どころを語る。
全作品約150点が日本初公開となる本展。初期の象徴主義的作品や日本滞在記の作品に加えて、挿絵や舞台美術、壁画でも活躍したヴァルザーの全貌を伝える画期的な試みに注目したい。
生き生きとした筆致で描かれた芸妓や歌舞伎にも注目
1908年にドイツの小説家ベルンハルト・ケラーマンとともに来日しているカール・ヴァルザー。ヴァルザーは東京や宮津(京都府)などに滞在し、熱心に日本の風景や風俗を描いた。これらの作品は当時の様子を伝える貴重な資料であり、また美術的にも非常に優れた見応えのあるものとなっている。多くは水彩で描かれ、これまでほとんど公開されてこなかったために、驚くほど鮮やかで美しい色彩を残している。京都の風景や祭を描いた重厚な油彩画とともに、120年前の日本の姿が鮮やかに甦る。
挿絵や舞台美術にみる多彩な仕事ぶり
ヴァルザーは生涯を通じて、挿絵や舞台美術、室内装飾や壁画の仕事で生計を立てていた。ドイツとスイスにはいくつもの壁画が現存するほか、舞台美術の分野ではシェイクスピアをはじめ多くの作品でセットやコスチュームのデザインを担当した。また、装幀や挿絵でも、ひとつ下の弟で詩人として名を馳せたローベルトの本をはじめ、少なくない仕事を残している。エッチングを中心としたそれらの作画や挿絵にみられる巧みな線描表現も見どころのひとつになっている。
開催概要
「スイス絵画の異才 カール・ヴァルザー 世紀末の昏き残照」
開催期間:2026年4月18日(土)~6月21日(日)
開催時間:10:00~18:00(金は~20:00。入館は閉館30分前まで)
休館日:月(5月4日・6月15日は開館)
会場:東京ステーションギャラリー(東京都千代田区丸の内1-9-1)
アクセス:JR東京駅丸の内北口直結
入場料:一般1800円、高校生・大学生1300円、中学生以下無料
※身体障害者手帳などの手帳をお持ちの方は一般1300円、高校生・大学生1100円、その付添いの方(1名まで)は無料。
【問い合わせ先】
東京ステーションギャラリー☏ 03-3212-2485
公式HP https://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/202604_karl.html
取材・文=前田真紀 画像提供=東京ステーションギャラリー






