鉄道旅をしているような写真展

会場に入るとまず現れるのは改札や駅を写し撮った作品たち。“ここから鉄道の旅が始まる”といった演出に期待も高まってくる。
木造の駅舎、レンガ積みのトンネル、昔の雰囲気を残す木製の出札口、古い木のベンチ……。

会場を進んでいくと、駅の風景から、陽に照らされたレールや腕木式信号機などの鉄道にまつわる風情たっぷりの作品が登場してくる。
キヤノンオープンギャラリーの特徴である長い直線の展示スペースにたどり着くころにはすっかり鉄道旅にでた気分だ。

鉄道の橋は列車で渡るだけでなく、見るだけでも旅情を掻き立てる。
鉄道の橋は列車で渡るだけでなく、見るだけでも旅情を掻き立てる。

柱を一つ越えて壁面が変わるごとにテーマが移っていくのも粋な演出だ。
旅をしていくうちに車窓が移り変わっていく雰囲気だ。
こういった演出ができるのも、一口に「鉄道」といっても幅広く、本当にたくさんの要素を含んでいるからだろう。

格好いいと思うと同時に、プロの技量に圧倒されてしまう一角だ。
格好いいと思うと同時に、プロの技量に圧倒されてしまう一角だ。

もちろん、鉄道好きの間でもこれぞ! といった人気車両を大迫力で写したコーナーもある。
古くからある鉄道施設はもちろん、最新の西九州新幹線の様子までバラエティーに富んだ作品が並ぶ。
最新の新幹線もいずれ鉄道遺産として後の世に引き継がれていくのだろう……と思うとちょっと感慨深いものがある。

最後の一枚にたどり着くまで、それぞれの作品に写る風景に懐かしがったり、見とれたりしながら、すっかり鉄道の世界に浸ってしまった。

illust_2.svg

『鉄道遺産』は遠い存在でも、ただ古いものでもない

今回の写真展の作品を選定・構成した長根広和さんにお話を聞くことができた。30人ものプロカメラマンの作品をひとつの展示にまとめるのはさぞかし大変だったのでは……。

「それぞれが鉄道写真を生業としているプロですから、譲れない得意分野や独自のカラーがありますので。頭から煙が出るほど考えましたよ(笑)。それだけにバラエティー豊かな見ごたえのある展示になっていると思います。鉄道遺産……というと大仰に聞こえるかもしれませんが、じつは意外に気付いていないだけで生活のそばにたくさんあるんですよ。今回の展示を通して、そこに気づいてもらえたら嬉しいなと思います。みなさんがお酒を飲んだりするガード下だってそうですよね(笑)これに気づき始めると、宝探しみたいで楽しいですよ。」

言われてみれば、普段何気なく使っている鉄道には何十年も使い続けられているものがたくさんあるし、この先何十年も使われていくだろうものもある。鉄道遺産を探しながら歩くのは確かに楽しそうだ。

「いま活躍している車両や駅、最新の新幹線だって、我々が死んでもきっと次の世代、その次の世代と共にいてくれると思います。鉄道という存在を、150年前の日本の鉄道誕生から私たちが引き継いだ鉄道を、これから先もずっと繋いでいけたらいいですよね。」

『鉄道遺産 今、そして未来へ』開催概要

■開催日:2022年9月28日~10月28日(日・祝休館)
■入場料:無料
■会場:キヤノンオープンギャラリー1・2(東京都港区港南2-16-6)
■アクセス:JR品川駅港南口から徒歩8分

■来場者特典:オリジナルステッカー(数量限定)
特製ステッカーは全3種類あり、この写真展でもらえるのは品川バージョン。同時期に開催されている鉄道写真展『煙響』(キヤノンギャラリー銀座)・『森と共に生きていく』(キヤノンギャラリー大阪)でそれぞれ別バージョンがもらえる。ステッカーの配布は10月15日まで。
■公式サイト:EOS×鉄道開業150年スペシャルサイト(https://cweb.canon.jp/eos/eos-railways/)

 

 

取材・文・撮影=星野洋一郎(さんたつ編集部)