濁りのない澄んだ出汁と旬の食材『おでんと旬菜魚 中々』[赤羽]
関西風の透き通っただしのおでんがとくに評判。食材にこだわり、手をかけた肴を提供する。おでんのだしは、日本酒1.2リットル、昆布、かつお節、むろ節、どんこ、そして調味料のみりんと焼き塩のみというシンプルな素材で透きとおっただしをひく。前日のものを使うと味が濁るため、毎日使い切ることで澄んだ味をだしている。
もちろん、大根や玉子もだしがふんだんに味わえておすすめだが、必ずオーダーしたいのが丁寧に作った鰯つみれだ。臭みもなく、とてもやわらかい。箸で割ると、中からじゅわっとだしが出てくるほど。常連も必ず頼むという大人気の一品だ。生の鰯をさばき、叩く。ネギ、味噌と和えてから、味をなじませるために一晩以上寝かせる。丸めてからおでん鍋に入れて煮る。提供するまでに3日かかるという手間のかかった一品だ。
赤羽界隈としてはちょっと高級な店だが、予約をしないと“中々”入れない人気店となった。日本酒の銘柄も頻繁に入れ替えているので、その時々のおいしさを堪能したい。
『おでんと旬菜魚 中々』店舗詳細
立ち飲みで堪能する赤羽せんべろ『丸健水産』[赤羽]
創業から約70年、最近はおでんと日本酒を楽しめる立ち飲みせんべろスポットとしても有名だ。店内で一から手作りする練り物は別格のおいしさだ。
旬の魚をさばき、すり身にした後、調味料を加えて練り、整形しては揚げていき、13時頃までにはすべての練り物が出来上がる。熱々できたてのさつま揚げは、何もつけなくても本当においしいので、早めに訪れて揚げたてを楽しもう。
鶏ガラと昆布で作るおでんのだしは、なくなり次第作って継ぎ足す。一日10回以上は継ぎ足すというから、大量のおでんが煮込まれては胃袋におさまっているのだ。3〜4時間ほど煮込むという大根は、さつま揚げから出た旨味と相まって、ふっくらやさしい味のだしが染み込んでいる。噛むたびに熱々の汁がじゅわっと溢れてくる。だしを吸ったさつま揚げは、そのまま食べるのとは違い、やわらかくて甘さが増したように感じた。
おでんにはやっぱり日本酒だ。すっきりした飲み口で、夏なら冷、冬なら熱燗がいい。ここでは3分の1ほど残して、丸健名物「だし割」(+50円)にしてもらおう。さまざまな旨味や甘さの入ったおでんのだしと日本酒が混じり合い、思わずほーっと息をつきたい気持ちになる人気メニューで、すいすいと飲めるけれど、飲み過ぎにはくれぐれも注意だ。
『丸健水産』店舗詳細
おでんと新鮮な魚をカウンターで気軽に楽しむ『なごみ処 響』[赤羽]
魚の鮮度は抜群、日本酒の種類も豊富。そして一年中いつでも楽しめるおでんが評判の、カウンターとテラス席のみの小さな店だ。
おでんのだしは、いりこや昆布などを使った透きとおった関西風で、毎日継ぎ足して使う。この日のおでん盛は、大根、玉子、はんぺん、厚揚げ、ちくわ、そしてもち入り巾着。下茹でしてから5時間煮込むという大根は、箸ですっと割れ、旨味が凝縮されただしがじゅわっと染み出す。もち入り巾着の餅がくたっとしていて、熱々しみしみなのがうれしい。
新潟から直送される鮮度抜群の魚を、毎日日替わりで提供している。刺し身や煮つけなど魚系が多いが、コロッケやクリーム煮などもあり、変化に富んでいる。今日は何があるかと楽しみにしている常連も多いという。
また、選びぬいた日本酒と焼酎は、自分が飲んでみて気に入ったものを仕入れるという店主。店が休みの日は、飲みに行くのが楽しみ、という生粋のお酒好きだ。
『なごみ処 響』店舗詳細
素材にこだわりたい!
ちくわぶ求め地元のママでにぎわう『川口屋』[赤羽]
志茂平和通り商店街に店を構えて80年以上。コンニャクや白滝の製造も行うが、主役は関東独自のおでんたね、ちくわぶだ。熟練の職人が巻き機を使い、一本一本手作業で巻き上げるちくわぶは全3種。コシを求めるならおでん屋さんのちくわぶ、やわらかめが好きな人は北海道産小麦100%使用ちくわぶがおすすめだ。
『川口屋』店舗詳細
家族おでんには安心の天然出汁を『中新商店』[王子]
昆布やワカメなど出汁の素材を中心に扱う海産物屋さん。湿気、高温が苦手な各素材を、-25℃と0℃の冷凍庫を使い分け、徹底して品質管理。「顆粒出汁もいいけど、ぜひ天然出汁のうまさを味わってみて。日高昆布の二等でも十分うまいおでんが作れます」と2代目の中野良宣さん。
『中新商店』店舗詳細
取材・文=鈴木健太、ミヤウチマサコ 撮影=金井塚太郎、オカダタカオ、ミヤウチマサコ