盃がついつい重なる三大看板料理『魚とごはん 折右衛門』【市川】
地元出身の店主、森達也さんが毎日通うのが松戸南部市場。各地の浜を知り尽くす仲卸さんと顔なじみで「上質な魚が手に入ります」と話す。そんな鮮魚は刺し身で。身の弾力、しっとりした舌触りに目を見張るが、森さんがほれた鹿児島のヨシビシ醤油の甘みが魚の深い香味を増幅。また、注文ごとに「腕が痛くなるほど」練り上げるさつま揚げもさることながら、締めの土鍋ごはんも必食だ。出汁炊きのキヌヒカリ、サバの塩焼きと明太子、薬味が口中で渾然一体になり、これぞ贅の極み。締めのつもりがつまみにもよしで酒をもう一杯、頼みたくなる。
『魚とごはん 折右衛門』店舗詳細
口中でふくらむ 芳香にうっとり『BISTRO nombre』【市川】
黒板に記された旬味の数々に誰もが迷いの森に入る。「千葉産も手に入りますから」と、店主の星卓二さんは毎週船橋市場などで吟味。なかでも2月までの冬季名物筆頭が白子のムニエルだ。「話に夢中でもおいしく味わえるように」と、表面だけをガリッと香ばしく焼いた上に、香味野菜満載の焦がしバターをジュッとかけ、時間を置いてもサクトロ&クリーミ〜。また、シャルキュトリーの一つ、鶏レバーはバニラや生クリーム、ナツメグなどで臭みを除き、ふくよかな風味と芳香を際立たせる。しかも、ワインと合わせると深い甘みへと変貌。口福な夜だ。
『BISTRO nombre』店舗詳細
こっくり和むスパイスの香り『欧風カレーとespressoのお店 TRAD』【京成八幡】
「欧風ビーフカレーが大好きで」と、シェフの渡邉陽子さん。店主で夫の朋弘さんとともに研究を重ね、どっしり味わい深い欧風カレーを編み出した。ライスとルウが別盛りのスタンダードな欧風カレーもいいが、ここは欲張りにキーマと相盛りの欧風クラフトキーマカレーを楽しみたい。2種のカレーをライスとともに口中へ運べば、キーマのたっぷりスパイスの芳香がふわり。そこへ欧風の奥行きある甘みと香ばしさが後を追う。自家製ドレッシングのサラダやアチャールを挟んで、かき込む手が加速する。せっかくだから、自家製のプリンとエスプレッソもいただこうかな。
『欧風カレーとespressoのお店TRAD』店舗詳細
丁寧な仕事が光るイタリアンを独り占め『Vishamonte』【本八幡】
四つ角の角地に赤白緑3色ののれん。足を踏み入れれば、長いカウンターが席の主を待っている。イタリアを始め、数多くのレストランで修業を積んだ店主・伊藤雅広さんの料理を堪能するならコースで決まり。タイのカルパッチョはシャキシャキ野菜でさっぱりサラダ仕立てに。肉厚のパテドカンパーニュや甘いイイダコのトマト煮、牡蠣のグラタンの波状攻撃で、ワインが何杯も進む。「できたてが一番」と、パスタは注文後に伸ばして切る。ホクホクのジャガイモが内包されたアニョロッティデルプリンは、チーズのふくよかな風味と合わさって、至福。
『Vishamonte』店舗詳細
取材・文=林さゆり(魚とごはん 折右衛門・BISTRO nombre)、どてらい堂(欧風カレーとespressoのお店TRAD・Vishamonte) 撮影=泉田真人(魚とごはん 折右衛門・BISTRO nombre)、オカダタカオ(欧風カレーとespressoのお店TRAD・Vishamonte)
『散歩の達人』2026年1月号より






