東長崎の角っこで、イタリアの郷土の味に出合う『Cadota』【東長崎】
「南イタリアのおばあちゃんが作るパスタです」と声をかけながら、店先でオレキエッテを作る新井シェフ。プーリア州で働いていた時に教わった『Cadota(カドタ)』の名物だ。焦がし小麦を使った生地はスモーキーな風味。トマトソースとカチョリコッタというヤギのチーズの組み合わせは定番で、軽めの赤ワインととても合う。
プーリアでの経験が現在のベースになっているという新井さん。「一番の学びは人とのつながりを大事にすること。食材も料理もお店も、人ありきで作っていきたいと思うようになりました」。イチジク農家を始めたのも帰国後。完熟の白イチジクはクロスティーニに仕上げてくれた。合わせるのは草っぽい青味のある白ワイン。「食後のコーヒーは『MIAMIA(マイアマイア)』さんへぜひ。東長崎を楽しんでください」と新井さん。なるほどここに来ると、お客さんも人とつながっていくみたい。
『Cadota』店舗詳細
熱燗ビギナー大歓迎。香る和食×燗酒に目覚める『氵(サンズイ)』【東長崎】
銀座『六雁(むつかり)』と代々木上原『酒坊主』での修業中に燗酒のいろはを学んだ店主の鈴木淳さん。和食にスパイスやハーブを忍ばせた料理は、ずばり両店のいいとこ取り。「料理に香りが多いほうが燗酒に合います。醤油系の煮込み×クローブなどは鉄板の組み合わせ」。おつまみも燗酒も、おまかせでお願いするとこれが楽しい。枝豆のスパイス蒸し、ナッツの入ったアジのタルタルなど、お腹の具合に合わせて一皿ずつどんどん出してくれる。
店内には淳さんが集めた60〜80年代のCDやレコードが流れていて、杯も進んでいい気分。締めはラムキーマカレーに、熟成感のある骨太な一杯を合わせて大満足。「全テーブルで燗酒を飲んでくれていると“今日はさんずいしてるね”って言うんです」と笑うのは、パートナーの千晴さん。初めて燗酒を飲むんですが……なんて若者が来たら、それはもう手厚く迎えてくれるそう。
『氵(サンズイ)』店舗詳細
気軽なペアリングが楽しいワインビストロ『kawasemi』【新大塚】
ワインラバーの心が躍る、春日通り沿いのビストロ兼ワインショップ。グラスワインが20種も飲めて、ソムリエが常駐となれば、料理に合わせていろいろ試したい。まずは亀井シェフが10年以上作り続けるシャルキュトリー。粗挽きの豚肩ロースで仕込むパテ、赤ワインでマリネした鴨ハムなど「肉の旨味には果実味のあるロゼをどうぞ」とソムリエ。
プリンのようになめらかなフォアグラのムースは、デザートワインを合わせてとろける心地に。スペシャリテのパイ包み焼きには、程よいタンニンでライチのように香るオレンジ。エビ、白身魚、ホタテのムース、仕上げはオマールエビの濃厚ソースと、海の幸オールスターズが集結した一皿だから、華やかなワインがぴったりだ。「定番以外の料理は季節ですぐに変わります。冬はカキや白子がおいしいですよ」と亀井さん。次はどんなワインを合わせてくれるかな。
『kawasemi』店舗詳細
取材・文=井上麻子 撮影=オカダタカオ
『散歩の達人』2025年11月号より




