蓄音器とSPレコード『シェルマン アートワークス』【銀座】
LPレコード登場前の音に酔いしれる
蓄音器は最初期のレコードプレーヤー。電気を一切使用せずに音を出す。最盛期は1910年代〜30年代だという。SPレコードとはLPレコードの登場以前、蓄音器の時代に作られた円盤レコード。原材料はLPレコードが塩化ビニールなのに対して、SPレコードはシェラックという天然樹脂で、収録時間も約3分から5分と短い。音の質感も現代とは異なるが、当時の空気をそのまま味わえるので、蓄音器でSPレコードを聴きたいという音楽ファンも多い。
八重樫さんおすすめの3枚
ルイ・アームストロング「ユー、ラスカル、ユー」
「サッチモ」の愛称で親しまれたアメリカのトランペット奏者、歌手。1920年代の録音で、若きアームストロングの声や音が生々しく響いてくる。
エンリコ・カルーソ『道化師』より「衣装をつけろ」
史上初のミリオンセラーを出した、イタリアの大テノールの歴史的名盤。1902年にホテルの仮設スタジオで作曲者みずから伴奏して録音された。
セルゲイ・ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番」
ロシアの作曲家ラフマニノフが自身の曲を演奏したレコード。レーベルにはビクターのブランド名「ビクトローラ」とビクター犬がプリントされている。
『シェルマン アートワークス』店舗詳細
ブラジル、アルゼンチン音楽『大洋レコード』【神楽坂】
神楽坂の路地裏から南米音楽の魅力を発信
「渋谷系に影響されたバンドマン時代にルーツを探っていったら南米音楽にたどり着きました」。とは、店主の伊藤亮介さん。ブラジル、アルゼンチンのポピュラー音楽を中心に選りすぐったCDやLPを販売している。セレクトのポリシーは「美しくたおやかな歌、ポップな発想」。また、伊藤さんは熱狂的な横浜DeNA ベイスターズファンで、店名は前身の大洋ホエールズから取った。
伊藤さんおすすめの3枚
Zé Manoel『Coral』
ブラジル北東部出身のピアノ弾き語りシンガー。このアルバムはブラジル外のプロデューサーと共作したもの。シティ・ポップなどの作りに近い極上のサウンド。
Arthur Nestrovski『VIOLÃO VIOLÃO』
静かな音楽がお好きなら、こちらがおすすめ。彼はギター奏者でサンパウロの市民交響楽団のディレクターでもある。あらゆる場面で音色の美しさが際立つ。
LUIZ MILLAN『Brazilian Match』
ブラジル音楽初心者向けの1枚。曲を書くだけの人で世界中から大御所のミュージシャンを集めて演奏したり歌わせたりしている。自分のボサノバを追求している人。
大洋レコードレーベルより国内版新譜が発売!
Salomão Soares & Vanessa Moreno『Outros Ventos [+1]』
鮮やかな声とピアノのパフォーマンスでブラジル・ジャズに驚嘆を与えてきたサンパウロのシンガーであるヴァネッサ・モレーノと、パライバ出身のジャズ・ピアノ奏者であるサロマォン・ソアレスによる新譜CD が、11月の初来日を前に発売!
『大洋レコード』店舗詳細
中国のインディーロック『mogumogu』【阿佐ケ谷】
中国の最新音楽シーンの入り口はここ
雑居ビルの外階段を上ると北京出身の店主・moguさんが出迎えてくれる。レコードのラインアップは日本ではなかなか手に入らない中国のインディーロックが中心。9年前に初めて日本に旅行で来たときに中央線の雰囲気が気に入り、2023年、阿佐ケ谷にこの店をオープンしたそうだ。「音楽シーンに関して東京は自由。北京ではライブの前に歌詞や動画を検閲されるんです」。北京の若者の間では日本の坂本慎太郎や羊文学なども人気だという。
Moguさんおすすめの3枚
White +『Ⅱ』
ドラムとシンセサイザーの2人組。ジャンルはエレクトロニカで歌詞は少し。ライブでは常に200人ぐらい集客する実力派で、東京ツアーを行ったこともある。
プノンペンモデル『金邊模型1994-2024』
テクノ御三家と言われた日本のバンド、P-MODELの元メンバーらによるバンド。これは30年間の楽曲の集大成。mogumoguレーベルから中国でリリースした。
Run Run Run『RUNRUNRUN』
全員が中国人メンバーによるサイケデリックロックバンド。このアルバムを発表したことによって、中国のインディーシーンから注目されるようになっている。
『mogumogu』店舗詳細
/営業時間:14:00~23:30/定休日:不定/アクセス:JR中央線阿佐ケ谷駅から徒歩4分
取材・文=石原たきび 撮影=高野尚人
『散歩の達人』2025年10月号より




