五感でいただく麗しきごちそう『割烹きほく』【淡路町・小川町】
宇和島鯛めし定食1000円。鯛のあらとかつお節で取った出汁に醤油などを合わせた特製ダレ、生卵を刺し身に絡めればまろやかな味に。
路地裏にあるビルの地下1階、迎えてくれたのは清水さん夫妻。宇和島鯛や鬼北産キジを使った定食があるのは、日本料理を中心に名門ホテルなどで腕を磨いてきた店主の故郷が愛媛であることから。旬の食材やその日のおすすめが添えられる小鉢、脇役に徹しながら素材の味が丁寧に引き出された汁物もさることながら、食事をサーブされるときの高揚感といったら! 目でも舌でも楽しめる定食とはまさにこのこと。
厨房を仕切る十樹さん。
十樹さんとなつみさんの夫婦で店を切り盛りする。
2024年12月に開店。半個室のテーブル席とカウンターがある。シ ックな雰囲気で接待や会食にも重宝しそう。
夜メニューの雉(きじ)炭火焼1600円。十樹さんの地元・愛媛県鬼北町から仕入れたキジのもも肉を使用。日本酒700円~のほか焼酎も充実。
『割烹きほく』店舗詳細
住所:東京都千代田区神田多町2-9-20 CELESTIA B1/営業時間:11:00~13:30LO・17:00~22:00LO(月は夜のみ)
太っ腹な盛りでおなかがまさにパンパン『寄合(よりあい)』【水道橋】
メンチーズカツ定食1200円。精肉店に特注するミンチ、8種類ほどの調味料をブレンドしたオーロラソースなど、細部も徹底追求。
2024年、ビルの老朽化で五反田から水道橋にやってきた。人通りの少ない場所ながら日によっては入店待ちの列ができるほど。口コミで広まった10種類以上ある和定食は、どれも太っ腹すぎるボリューム。メイン料理だけでなく、秋田の農家さんから仕入れる「あいかわこまち」のごはんが大盛り&おかわり一杯まで無料だったり、豚汁が具だくさん過ぎたり。おなかがペコペコであるほど、行きたい衝動にかられる一軒だ。
生アジフライ定食1200円。アジは、豊洲市場で働く仲卸の知人から鮮魚を仕入れている。入荷がない日もあるので、あればラッキー。
DJ・RENとしても活動する店主の上杉蓮さん。
上杉さんをはじめ、スタッフの稲田さんと川島さんもDJやモデルといった肩書きを持つ。
昼の12時を過ぎるとおなかをすかせた人達であっという間に満席に。店内に流れるBGMは、上杉さんのオリジナルプレイリスト。
『寄合』店舗詳細
母の愛情がこもったヘルシー定食『むすこのごはん』【神田】
本日のランチ定食1100円のおかずは日替わり。取材時は豚しゃぶ、サバの香味漬け、白和え、たらこにんじん、かぼちゃの煮物。
「自分のお店を持つことは、子育てがひと段落した頃からの夢でした」。2人の息子の母である本間法子さんが、シェアキッチンでの営業を経て開店したのが2024年12月のこと。家族を思って日々手作りする献立と同じように、健康面も意識した定食はお守りのような一食。玄米にあずき、黒米を入れて圧力鍋で炊いた発酵玄米と国産食材を使った滋味あふれる家庭料理は、午後からの活力を満タンにしてくれる。
「今日は何を作ろうかな~」と実家の台所に立つ母のような本間さん。
息子の信孝さん(右)は不定期ながらも本間さんを手伝う。店内のお花は近藤薫さんが担当。
オープンキッチンでカウンターもテーブル席も距離感が近く、ほっとできるアットホームな雰囲気。
夜の営業では、黒酢の角煮や日替わり3種盛り各500円が登場。17時~18時30分はハッピーアワーでアルコール類が半額に。
『むすこのごはん』店舗詳細
白米がこの上なく進む鯖の黒煮『食堂新(あらた)』【神保町】
看板メニューの鯖の黒煮定食950円はしじみ汁付き。おでんやきんぴら、ひじきなど、手作りのおばんざいはその日のお楽しみ。
店の代名詞である、こっくりとした色合いが目を引くサバの黒煮。口に入れた瞬間からほろりとほぐれていく身と骨の柔らかさ、しっかりと染み込んだたまり醤油の濃厚な香ばしさは、ごはんのお供として群を抜いている。「脂ののった、ノルウェー産サバを2日かけて仕込んでいます」とオーナーの平野新さん。ほかにない、サバの新たな持ち味を引き出した煮魚を求めて週に数回食べに来る常連客がいるのも納得だ。
煮魚もフライも食べたい、欲張りな人のために生まれた鯖の黒煮あじフライ定食1100円。タルタルソースは、和風で酸味控えめ。
「鯖の黒煮のおいしさをもっとたくさんの方に知ってもらいたい!」と意気込む平野さん。
2023年の開店以降、平野さんと共に鯖の黒煮を広める中村瑛里子さん。
カウンターに並べられたおばんざいに「ぐぅ~っ」と空腹が刺激される。
『食堂新』店舗詳細
文=新居鮎美 撮影=井上洋平
『散歩の達人』2025年5月号より