川邊実穂(かわべみほ)
サウナライターとして活動し、約5年間で240カ所以上のサウナ施設を訪問。初の著書『絶景サウナ旅』(三笠書房)が「Saunner of the Year 2024 書籍部門」を受賞するなど話題に。「日刊ゲンダイMOMENT」にて「サウナで、わたしはわたしになる」を連載中のほか、2025年3月に刊行予定の書籍『シン・サウナ』(川田 直樹、KADOKAWA)にブックライターとして参加。
星空外気浴を心ゆくまで。サウナ好きの理想郷『星降る山荘 七時雨山荘』(岩手県)
築120年の古民家をリノベーションして造られたサウナの名前は「サウナイーハトーヴ」。イーハトーヴとは『七時雨(ななしぐれ)山荘』がある岩手県出身の宮沢賢治による造語で、意味は「理想郷」だ。
その名前にたがわず、サウナ室は薪ストーブならではのじんわりとした熱に包まれる、まさに理想のサウナ。そして何より、『七時雨山荘』の醍醐味は今にも星が降ってきそうな中での星空外気浴だ。周囲7km圏内には他に民家もお宿もなく、星の瞬きを遮るものはない。
ただ、電波も入らない山奥にある『七時雨山荘』は、豪雪エリアのために11月から4月末までお店をクローズ。サウナ好きは今か今かと、春のオープンを待ち望んでいる。
『星降る山荘 七時雨山荘』詳細
一面に広がる牧草の中、ポツンとたたずむDIYサウナ『Quiet Storm Nasu』(栃木県)
「サウナは外遊びを楽しむためのもの」が信条のオーナーが手がけるサウナは、とにかく自由。サウナ室の中にはフィンランドの“ロンケロ”缶がぶら下がっていたり、さらにはSTAUBの鍋やピック、アルミホイルまで置かれていて……? これはお客さんがサウナストーブを使った料理(SAUNA COOKING)をするときに貸し出しているものだ。実際にサウナストーブの熱でじっくりと火を通していただく“マッカラ”(=ソーセージ)は絶品!
休憩場所も決まりはない。自分の好きなところに椅子を置いたり、ハンモックに身を預けたりと気持ちの赴くままにどうぞ。春にはヒメジオンやタンポポが一面に広がる中で外気浴ができるのも、このサウナ施設ならではだ。
『Quiet Storm Nasu』詳細
標高1464m、乙女湖とともに楽しむ薬草蒸気浴『ホトリニテ』(山梨県)
標高1464m、1日1組限定の宿『ホトリニテ』では、“人工”と“自然”の際を知る“際ツアー”というアクティビティが楽しめる。その1つがテントサウナ内でたっぷりの薬草蒸気に包まれる「薬草蒸気浴」だ。『ホトリニテ』の宿の一角はラボのようになっていて、白樺やオーク、クロモジといった何十もの薬草が乾燥されている。月日をかけて結晶化された自然の恵みを、グラグラと煮出して蒸気として味わえるのだ。
井戸水をくんだ水風呂に入った後は、乙女湖を眺めながら休憩を。雪が溶け、ふたたび植物が芽吹き出す春ならば、鹿の鳴き声も聞こえてくるかもしれない。圧倒的な静寂の世界で、自分と向き合う時間を楽しんでほしい。
『ホトリニテ』詳細
四季折々で表情を変える日本海へダイブ!『サウナ宝来洲』(新潟県)
日本海の波の荒々しさは常ではない、と知ったのは『サウナ宝来洲(ホライズン)』と出合ってからだ。冬はしんしんと雪が降る中でのサウナや雪ダイブといったこれまたエクストリームな体験ができるのだが、春になると日本海も穏やかに。
サウナ室では波音のBGMが流れ、この後の日本海ダイブへの期待値を高めてくれる。そしてもう1つ、全国のサウナ施設でもここだけ⁉なユニークポイントが、1つの施設で海だけでなく川も水風呂として楽しめること。海と川で水温が異なるので、その境界線に体を置くと、感覚がちょっと麻痺するような不思議な体感を味わえる。ぜひ、トライしてみていただきたい。
『サウナ宝来洲』詳細
ハーブに囲まれた土の中のサウナホテル『The HIVE』(富山県)
そこは土の中のサウナホテル。六角形の蜂の巣=「HIVE」は、まさに忙しい毎日を過ごす人々を癒やす存在として、オープンから長らくその人気が続いている。
『The HIVE』の魅力の1つが外気浴スペースからも広がるハーブ群だ。視覚だけでなく、ハーブの力を全身で感じられる秘密はロウリュにある。自家栽培のハーブは同じ敷地内で蒸留され、オイルに姿を変える。そして私たちはハーブオイルを垂らした水で、ロウリュを。蒸気を通してハーブを余すことなく味わえるのだ。
1日1組限定のホテルで心ゆくまでサウナを楽しんだら、もう1つのお楽しみがインド出身・アチャさんの本格インド料理! これをめがけて『The HIVE』に来る人もいるほどの人気の一品は、必食です。
『The HIVE』詳細
サウナのある暮らしを、立山連峰とともに『くらすサウナつるぎ』(富山県)
立山連峰のその雄大さは、実際に目にしないとわからない。その眺望を、サウナと一緒に楽しめるのが『くらすサウナつるぎ』だ。
離れにある木造小屋は、サウナのために新設されたもの。サウナ室には大きな窓が設けられ、立山連峰を借景として眺められる贅沢さだ。水風呂や外気浴もさることながら、この施設ならではの特徴は何といっても露天風呂。天然温泉の出張サービス(別途有料)を利用すれば、宿泊者のためだけの温泉露天風呂が完成する。
連泊プランやワーケーションにぴったりな書斎もあるため、宿泊以上移住未満な、サウナのある生活を満喫したい。
『くらすサウナつるぎ』詳細
自然が織りなす美しさから目が離せない『SETONITE』(岡山県)
こんなにもサウナ室を出たくない、と思うこともなかなかない。それはバレルサウナの窓から広がる瀬戸内海があまりにも美しかったからだ。『SETONITE』では空や海が、刻一刻と表情を変え、新しい姿を見せてくれる。夕暮れどきのマジックアワーでは世界中がピンクと紫の淡いグラデーションに包まれてしまったような、どこまでも幻想的な世界が広がる。
そして明け方にはサウナ室の目の前の瀬戸内海が満潮に。水風呂代わりにプカプカと漂うこともできる。自然だからこそ生み出せる美しさを、丸ごと体験できる施設だ。
『SETONITE』詳細
そこは令和の竜宮城! 瀬戸内海と遊ぶ『URASHIMA VILLAGE』(香川県)
「URASHIMA VILAGE」は、浦島太郎が亀を助けたとされる丸山島を望む場所にある。サウナ室からも、もちろんサウナ室を出てからも、どこまでも広がるエメラルドグリーンの瀬戸内海を、ほぼプライベートビーチのように楽しめてしまう贅沢さだ。
休憩は大の字になるのにぴったりな「ととのい岩」で、太陽の光をめいっぱい全身で受け止めながら。春には卒業旅行などで、複数棟を貸し切りしてグループ利用をする人も増えるという。浦島太郎のようにいつまでもここにいたいと願わずにはいられない、とっておきの極楽サウナだ。
『URASHIMA VILLAGE』詳細
見たことも感じたこともない青の世界へようこそ『稲積(いなづみ)水中鍾乳洞』(大分県)
世界的にも稀少な水中鍾乳洞に、サウナ⁉と驚くけれど、知れば知るほど、そこはサウナにぴったりな環境だ。鍾乳洞に溜まった水は1年を通して約16度と水風呂の水温として最適。それだけでなく、鍾乳洞から溶けだした鉄分やカリウムが含まれたその水質は、体の奥まで響くような本能的な気持ちよさを味わえる。海中で使用されるライトによって鮮やかに彩られた青の世界は、私たちを非日常へと心地よく誘う。
2024年に新設されたサウナ小屋の休憩スペースでは、頭上いっぱいに桜の樹の枝葉が。タイミングが合えばヒラリ桜の花びらが舞いおりる中で休憩できるかも。サウナの後には絶品スパイスカレーもご賞味あれ!
『稲積水中鍾乳洞』詳細
異国情緒漂う地上の楽園『亜熱帯サウナ』(沖縄県)
「亜熱帯サウナ」は沖縄県のやんばるにある自称「日本一野生的なサウナ」。約1年もの歳月をかけ、敷地面積約2,000坪の広大な森を切り拓いて誕生した本施設は、異国情緒あふれる唯一無二の空間だ。毎週土曜日はハンドパンの生演奏、毎週日曜日は専属熱波師「徐々にととのうカズキ」によるプレミアム熱波も楽しめる。原生林に囲まれながら、蝶や鳥といった生き物たちの存在を感じる休憩時間は、日本にいることを忘れてしまうような至福のひと時。
『亜熱帯サウナ』詳細
掲載写真はすべて、『絶景サウナ旅』取材時のもの。現在は、一部の仕様や設備に変更の可能性があります。
取材・文=川邊実穂 撮影=佐々木麻帆