出茶屋 at 丸田ストアー
ここで焙煎はじめました
屋台の珈琲屋として小金井市内各所やイベントに出店し、人とのつながりを紡いできた鶴巻麻由子さんが、「いつかやりたかった」焙煎をスタートした。アナログ焙煎機が軽快な音を立てるその場所は、昭和から続く集合商店「丸田ストアー」。きっかけは、定期開催する「はけのおいしい朝市」の仲間『SPOONFUL』(スプンフル)の眞嶋麻衣さんからの相談だった。「お魚屋さんが閉店して、どうしよう」。こりゃ一大事、「私も大切にしたい場所」と、一緒にやってきた花店『PETAL』(ペタル)の森このみさんとチャレンジを決意した。屋台と小屋とストアーと。おもしろいコミュニティーがさらに広がる。
青い月と猫
いざ、コーヒー豆の坩堝(るつぼ)へ!
訪れたら、ぜひ店主の野澤忠彦さんに声をかけて。ずらりと並んだ豆のひとつひとつについて、持ち味や来歴など、身振り手振りを交えて教えてくれる。「こいつ(マンデリン)はかなり化けるんです。製法や焙煎の仕方で、バリエーションが果てしなく増える!」という言葉どおり、現在マンデリンだけで8種類も。「同じ豆でも、深煎りと浅煎りでは香りが全然違います」と香りを嗅がせてくれたり、おすすめを試飲させてくれたり、まるで参加型。
珈琲松井商店
名物は、かの文豪をイメージ
店主の松井寛さんの家は代々三鷹在住。一時母の実家に太宰治が下宿していたそうで、喫茶店になる前の酒とたばこを扱っていた時代の『松井商店』によく買い物にきていた。それが名物である「Dazai coffee」の由来だ。深い苦味を出しつつ、全体的に穏やかな風味に仕上げているのはモテ男だった太宰と、その繊細さをイメージしたから。「おいしくなってね、と心で唱えながら淹れるんです」と微笑む松井さん。太宰作品を片手に訪れたい。
すずのすけの豆
マイペースに楽しめて、幸せ
コーヒーを片手に読書する人、手紙を書く人、カウンター席に座り、店主の鈴木真悟さんとおしゃべりする人。ここでの過ごし方は人それぞれだが、みんな一様に居心地よさそうだ。つい長居したくなるのは、冷めても味わい深いコーヒーのせい。多めに豆を挽き、たっぷりの粉にサッとお湯を注ぐのがコツらしく、苦味とコクの間をかいくぐって華やかな香りが舞う。焙煎機が豆を煎るパチパチという音をBGMに、ゆっくり過ごしたい。
構成=フラップネクスト 取材・文=信藤舞子、松井一恵 撮影=高野尚人、千倉志野