素材の個性を絶妙に引き出し、合わせる『自然菓子 cacika』
ザクッとした食感のスコーンは小麦本来の香りを放つ。滋味あふれる自家製つぶあんを挟むと明確なコントラストを成し、それらをまろやかにまとめ上げるのは、香りがよく口当たりの軽いグラスフェッドバターだ。Bean to Barチョコレートを使う幻スコーンは、カカオ豆のほのかな果実味のおかげですっきりした後味。一つひとつの個性は強いが、それらを自然と寄り添わせる妙技にときめく。
『自然菓子 cacika』店舗詳細
穏やかな甘みと素材の力強さを兼備『coromo-cya-ya』
フォークを当てるとタルト生地はガツッと手応えがあり、噛み締めると小麦の旨味がじわっと広がる。「いろいろ試して、薄力粉よりも味わいを強く感じられる中力粉にしたんです」とディレクターの中臣美香さん。リンゴは火を通してから白ワインを足しつつソテーし、糖度や水分量を調節。シャクッとした歯触りとほのかな酸味が存在感のあるタルト生地と合わさり、キレのいい甘みを演出してくれる。
『coromo-cya-ya』店舗詳細
小麦が感じられる、パン屋らしい味わい『リールオパン』
フランス育ちの店主・島岡令央奈さんが目指すのは「子供の頃から食べていた小麦の味がしっかりするパン」。フランスでは食事はもちろん、おやつもパンは珍しくなく、「中でもパン ヴィエノワ ショコラは定番」だとか。島岡さんが作るのは小ぶりだがずっしりしていて食べ応え十分、頬張ると北海道産小麦の味がふわり。マドレーヌは甘すぎず、バターのコクで香ばしさと素材の旨味が際立つ。
『リールオパン』店舗詳細
モチーフはずばり、井の頭の「井」!『東急百貨店 吉祥寺店 諸国銘菓売場』
元々は武蔵野市にあった「小美濃せんべい」が考え、1957年に廃業するまで愛されたせんべい。2004年に東急百貨店吉祥寺店が開店30周年を迎えた際、数量限定で復刻した。キリッとした醤油の味、バリッと歯切れいい食感は当時を知る地元商店会の女性部「たんぽぽの会」の協力を得て再現し、現在は吉祥寺『花見せんべい』が製造。それが人気を呼んで定番化し、今また界隈の名物に。
『東急百貨店 吉祥寺店 諸国銘菓売場』店舗詳細
取材・文=信藤舞子 撮影=原幹和