『竹むら』(淡路町)
この店は昭和5年(1930)創業時の木造建築。「うちは並びにあるかんだやぶそばが親戚筋で、この建物もそば屋建築に何となく似ています」というのは二代目ご主人。長年のお客がいつ来ても同じ味をと昔ながらの調理法だが、クリームあんみつも案外甘さ控えめに感じる。自家製赤えんどう豆の塩気や生寒天の風合いが絶妙に調和しているのだ。寒天で程よく腹を冷やし、最後に熱いお茶で締めくくるのが江戸の粋だ。
『竹むら』店舗詳細
『てん屋』(京急蒲田)
澄んだ味わいが職人の真面目さの証し
原材料が天草、水のみとシンプルゆえ、「丁寧に行うことが一番」と2代目の平野雄司さん。天草は伊豆産で 「半島の東側は波が荒く、太くて香りや味が強いものが多い」 そうだ。塩梅をみながら東と西を調整して使う。完成品は水にさらしてあり、注文ごとに天突き器で切ってくれるのがうれしい。あんみつもあんこなど一つひとつ手作りで、赤エンドウ豆のふっくらした食感がハリのある寒天とコントラストを成し、やみつき。
『てん屋』店舗詳細
『甘味処 みつばち』(湯島)
こしあんとあま~い黒蜜が濃密に絡み合う
あんこが舌の上でほろっと崩れ、とろ~っとした黒蜜と絡む。北海道産小豆の旨味を引き出した素朴なこしあんと、ファンから「どこよりも甘い」「癖になる甘さ」と評判の黒蜜は、紛うことなき名コンビだ。あんこは初代の味を守り、黒蜜はそれに合うように考案されたとか。通常の約3倍の量の沖縄県産黒糖を寸胴鍋の中で砕きながら煮詰め、それをポットで提供。お好みの量をかけて。
『甘味処 みつばち』店舗詳細
『甘味処 甘寛』(北千住)
絶妙にふっくらした個性派つぶあん
日々、愛用の羽釜でこしあん、つぶあんを炊き、メニューによって使い分け。あんみつに合わせるつぶあんは北海道産とよみ大納言の豆の歯触りと、ほどよく水分を含みふっくらした食感を併せ持ち、独特の仕上がりになっている。さらりとした白蜜の透き通った甘みも白眉。別々の器で登場するので、あんこオンリーで味わったり、椀に移して白蜜をつけたりいろんな食べ方を楽しんで。
『甘味処 甘寛』店舗詳細
『あんみつ みはし 上野本店』(上野)
究極のソフトこしあん&さっぱり黒蜜
珍しい直方体のあんこは雑味のない穏やかな甘みが感じられ、舌触りもユニーク。北海道産の小豆を丁寧に炊いた後、昔ながらの製法によって晒らし、よく搾り、加糖。柔らかく、口溶けのいいこしあんにするには、最後にあまり練り上げすぎないのが秘訣だ。これとタッグを組むのは、那覇市より450kmほど南にある波照間島の黒糖を使った黒蜜で、さっぱりした甘みと鼻先を舞うきりっとした香りがたまらない。
『あんみつ みはし 上野本店』店舗詳細
『成城あんや』(成城学園前)
素材を生かしたピュアな味わいが秀逸
北海道産小豆を使ったあんこは、空気を含ませながら火入れし、あんみつ用に柔らかく練ったもの。キメの細かい上品なこしあんで、えぐみのないまろやかな黒蜜がマッチする。黒蜜の材料は種子島から直送されてきた黒砂糖のみ。器の底には、一般的な賽の目状の寒天ではなく、南伊豆の天草を大鍋で煮出して作るところてんを崩して入れてあり、ちゅるんとした喉ごしのよさが全体をきれいに一つにまとめている。
『成城あんや』店舗詳細
『あんみつの深緑堂』(向島)
華のある見た目、味わいにときめく
赤みを帯びた紫色のこしあんにうっとり。豆を煮る過程で渋切りを素早く行うのが、北海道産小豆の色をきれいに出すコツだ。口に入れるとなじみがよく、黒砂糖をはじめ数種類の砂糖をブレンドして作った黒蜜が、絶妙な対比効果であんこの滋味、澄んだ香りを煽る。後味をすっきりさせるのは寒天で、伊豆各地から異なる食感を生む天草を集め、配合によってベストな弾力を拵えている。
『あんみつの深緑堂』店舗詳細
『甘味 かどや』(大師前)
昭和から紡ぐ風情と味わいに惚れる
存在感のある筆看板の下で、白地暖簾(のれん)がはためく。店に入り、昔ながらのあんみつを頬張れば、身も心も大満足。クリームあんみつや、ゆであずきも味わえるのがうれしい。「おばあちゃん直伝」と、娘の中田有香さんが胸を張る今川焼きも見逃せない。卵入り生地とラードの温かな香りが鼻先をかすめ、食べれば端はパリッ、それでいてふんわり。中に詰まった北海道小豆のつぶあんもほっくりとろり。
『甘味 かどや』店舗詳細
『甘味 おかめ 麹町店』(半蔵門)
恍惚(こうこつ)となるほど、目に舌にうれしい素朴な甘み
おかめのお面とお福さんに出迎えられ、松本民芸家具の水屋簞笥(たんす)が粋。終戦翌年に有楽町で始まった店は、再開発を経て、1990年に麹町に本店を移した。ゆったりした席に着けば、「甘いものにはお茶よね」と、静岡産ほうじ茶がすっと差し出される。果実なしの蔵王あんみつは、金時豆のふくよかなこと。みやげとしても人気の拳大おはぎも絶品。北海道小豆のつぶあんと糯米(もちごめ)がねっとり絡み、やさしい甘みにため息がもれる。「田舎のおばあちゃんの味に似てるって言われるの」と、 目を細めるのは3代目の阿部弘子さん。「本当は甘味だけでやりたかったの」と笑うが、毎朝の仕込みはかつお出汁をひくことから。茶めしおでんや雑煮で、じっくり味わいたい。
『甘味 おかめ 麹町店』店舗詳細
構成=フラップネクスト 取材・文=信藤舞子、佐藤さゆり 撮影=オカダタカオ、阿部了