物語のワンシーンに登場するような館『シネコヤ』[鵠沼海岸]

ゆったりと映画を楽しめる2階席。棚には懐かしいパンフレットが。
ゆったりと映画を楽しめる2階席。棚には懐かしいパンフレットが。

遠くて甘い記憶が蘇(よみがえ)るような、懐かしいにおいがするブックカフェ。映画と本とパンをテーマに掲げていて、本を開きながらパンを味わい、さらに映画鑑賞もできるという、新しいスタイルの街の文化拠点だ。旗を揚げたのは、「好きな本と映画と飲食をつなげて何かをやりたい」と考えていた代表の竹中翔子さん。小屋を持たずイベントなどの活動を続けるなか、写真館だったこの建物とめぐり合った。古い趣を残して改装した空間のノスタルジックなことよ。蔵書は映画を柱に旅や社会問題にも枝葉を広げ、「今月の本」からイメージして映画を選ぶ。

お供にはアイスティー460円と神奈川県山北町の『デスチャー』のあんぱん220円を。
お供にはアイスティー460円と神奈川県山北町の『デスチャー』のあんぱん220円を。
1970年代から揃う『キネマ旬報』は貴重な寄贈書。
1970年代から揃う『キネマ旬報』は貴重な寄贈書。
竹中さんが手にする『日本の小さな本屋さん』は7月の本で、映画は『ブックセラーズ』を上映。「古書店や、名画座ロビーを彷彿とする空間でごゆっくり」。
竹中さんが手にする『日本の小さな本屋さん』は7月の本で、映画は『ブックセラーズ』を上映。「古書店や、名画座ロビーを彷彿とする空間でごゆっくり」。
1階は書斎みたいな趣。
1階は書斎みたいな趣。
シネコヤ6
こんな本あります。
『世界の映画館』(パイインターナショナル)、『東京ノスタルジック喫茶店』(河出書房新社)、『世界の美しい書店』(宝島社)。この3冊がそのまま同館のコンセプト。

『シネコヤ』店舗詳細

住所:神奈川県藤沢市鵠沼海岸3-4-6/営業時間:HPを確認/定休日:不定/アクセス:小田急電鉄江ノ島線鵠沼海岸駅から徒歩3分

本堂地階に並ぶ処方箋に導かれる『海近寺巣(東光院)』[大磯]

静かに音楽が流れ、心落ち着く空間。
静かに音楽が流れ、心落ち着く空間。

いざという時は24時間僧侶が駆けつけ、霊柩車まで所有し業者を介さない葬儀を行う。ユニークな海辺の当寺に、図書館を発見。「新しいお寺の在り方を模索して、死生観や葬儀、福祉の本などを読むうちに本棚が満杯になって」。執事の古井昇空(しょうくう)さんがなりゆきをにこやかに話す。「ならばいっそ公開しよう」と、バリアフリー化を機にフリースペースを兼ね、設けた。並ぶのは、もともとあった仏教書に加え、「住職と私が読んで、読んでもらいたい本。自己を見つめ背中を押してくれる処方箋です」。古書店で探す絶版本も多く、蔵書は増え続けている。

大磯町の歴史を伝える今昔写真を掲示したり、地元のフリーペーパーも揃える。コーヒーや日本茶もセルフで提供。
大磯町の歴史を伝える今昔写真を掲示したり、地元のフリーペーパーも揃える。コーヒーや日本茶もセルフで提供。
写経も自由にできる。
写経も自由にできる。
第29世住職の大澤曉空(ぎょうくう)さん(右)と古井さん。「私たちが考えている事を本を通じて伝えられたら」。「平日夕方は子供たちが集いにぎやかですよ。どうぞ気軽に」。
第29世住職の大澤曉空(ぎょうくう)さん(右)と古井さん。「私たちが考えている事を本を通じて伝えられたら」。「平日夕方は子供たちが集いにぎやかですよ。どうぞ気軽に」。
本堂左手から地階へ。誰でも自由に利用できて、登録すれば貸し出しも可能。
本堂左手から地階へ。誰でも自由に利用できて、登録すれば貸し出しも可能。
海近寺巣6
こんな本あります。
『DIY葬儀ハンドブック』(駒草出版)、『うらやましい孤独死』(フォレスト出版)、『気になる仏教語辞典』(誠文堂新光社)、『月刊住職』(興山舎)、『ブッダ』全14巻(潮出版社)。新刊からレアな専門雑誌、コミックまで揃う。

『海近寺巣(東光院)』店舗詳細

住所:神奈川県中郡大磯町大磯1525/営業時間:9:00~18:00/定休日:無(葬儀や通夜が入ると休)/アクセス:JR東海道線大磯駅から徒歩10分

取材・文=松井一恵(teamまめ) 撮影=木村心保