物語のワンシーンに登場するような館『シネコヤ』[鵠沼海岸]
遠くて甘い記憶が蘇(よみがえ)るような、懐かしいにおいがするブックカフェ。映画と本とパンをテーマに掲げていて、本を開きながらパンを味わい、さらに映画鑑賞もできるという、新しいスタイルの街の文化拠点だ。旗を揚げたのは、「好きな本と映画と飲食をつなげて何かをやりたい」と考えていた代表の竹中翔子さん。小屋を持たずイベントなどの活動を続けるなか、写真館だったこの建物とめぐり合った。古い趣を残して改装した空間のノスタルジックなことよ。蔵書は映画を柱に旅や社会問題にも枝葉を広げ、「今月の本」からイメージして映画を選ぶ。
『シネコヤ』店舗詳細
住所:神奈川県藤沢市鵠沼海岸3-4-6/営業時間:HPを確認/定休日:不定/アクセス:小田急電鉄江ノ島線鵠沼海岸駅から徒歩3分
本堂地階に並ぶ処方箋に導かれる『海近寺巣(東光院)』[大磯]
いざという時は24時間僧侶が駆けつけ、霊柩車まで所有し業者を介さない葬儀を行う。ユニークな海辺の当寺に、図書館を発見。「新しいお寺の在り方を模索して、死生観や葬儀、福祉の本などを読むうちに本棚が満杯になって」。執事の古井昇空(しょうくう)さんがなりゆきをにこやかに話す。「ならばいっそ公開しよう」と、バリアフリー化を機にフリースペースを兼ね、設けた。並ぶのは、もともとあった仏教書に加え、「住職と私が読んで、読んでもらいたい本。自己を見つめ背中を押してくれる処方箋です」。古書店で探す絶版本も多く、蔵書は増え続けている。
『海近寺巣(東光院)』店舗詳細
住所:神奈川県中郡大磯町大磯1525/営業時間:9:00~18:00/定休日:無(葬儀や通夜が入ると休)/アクセス:JR東海道線大磯駅から徒歩10分
取材・文=松井一恵(teamまめ) 撮影=木村心保