10時間煮込んだ豚骨スープがとろり『豚骨味噌ラーメン じゃぐら高円寺』

味玉豚骨味噌らーめんは930円。片面だけ炙ったチャーシューは、肉を食べたという充実感がある。
味玉豚骨味噌らーめんは930円。片面だけ炙ったチャーシューは、肉を食べたという充実感がある。

『豚骨味噌ラーメン じゃぐら高円寺』は高円寺駅から南に徒歩8分ほど。高円寺に数あるラーメン店の中でも指折りの人気店と言っていいだろう。

スープは豚のゲンコツ、カシラ、そして鶏のモミジを、骨を叩き割るようにしながら、ほぼつきっきりで10時間煮込む。だから濃度が高く、どろっとした食感のスープが出来上がる。コラーゲンもたっぷり溶け出している。

麺はスープが絡みやすいように特注している中太麺。国産小麦を使っていて、香りもよくもちもちした食感だ。チャーシューは、豚バラを煮込んで、醤油ダレに漬け込んだもの。提供前に片面だけ炙って香ばしく仕上げている。「スープの味が濃い分、チャーシューはあっさりしています。スープにディップして食べていただく感じです」と店主の千代田英司さんは話す。

パル商店街を通り抜けて、ルック商店街をもう少し新高円寺駅方向に歩いた場所にある。
パル商店街を通り抜けて、ルック商店街をもう少し新高円寺駅方向に歩いた場所にある。

『豚骨味噌ラーメン じゃぐら高円寺』店舗詳細

全国のラーメンを食べ歩いたマニア店主の店『麺屋 賢太郎』

三刀流かさね味わい麺750円。玉子の黄身が絶妙にとろり。
三刀流かさね味わい麺750円。玉子の黄身が絶妙にとろり。

店主の森江賢太郎さんは「幼き頃よりらーめんマニアだった当方は二十有余年に渡り、邪念を排すべく、一人で幾度も全国を食べ廻った」と店内に達筆な字で書き記すラーメンマニア。ラーメン店での修業経験はない代わり、各地でラーメンを食べ歩いては、1人研究を重ね、納得のいくラーメンを作り上げた。

「豚骨と鶏ガラ、それから煮干し。スープは3種類全部別々に炊いて、最後に合わせているんですよ」と森江さん。3つのスープ全てを合わせて作るから三刀流という、三刀流かさね味わい麺がいちばん人気だ。麺は後半もおいしく食べられるようにと中太の縮れ麺を採用。その日の湿度を考慮しながら、少し硬めに茹で上げる。丼にはサバやウルメの魚粉を多めに入れ、そこに熱々のスープを加える。魚粉が醸し出す香りのよさと存在感を味わえる一杯に仕上げるためだ。

麺は最後までおいしいように中太縮れ。
麺は最後までおいしいように中太縮れ。

『麺屋 賢太郎』店舗詳細

高円寺・大一市場で煮干し出汁!『DRIED SARDIN BROTHERS』

淡麗煮干そば780円。濁りが出ないように作ったほんのりグレーなスープを上品にカイワレが彩る。
淡麗煮干そば780円。濁りが出ないように作ったほんのりグレーなスープを上品にカイワレが彩る。

ディープな空気が流れる大一市場の中に2021年7月にオープンしたのが『DRIED SARDIN BROTHERS』だ。“DRIED SARDIN” =干したイワシ、つまり煮干しをガッツリ使ったスープが売り。

いちばん人気は淡麗煮干そば。チャーシューは豚肩ロースとバラ肉のうち、豚肩ロースがのる。メンマとカイワレと海苔のほか、あらみじんの玉ねぎがたっぷりのっているのもポイントだ。

ほんのりグレーがかった色味のスープは程よく煮干し感。えぐみはない淡麗スープに仕上げている。全粒粉入りで香ばしさもある中細麺とみずみずしい粗みじんの玉ねぎがスープによく合う。煮干しラーメンの付け合わせとしてはポピュラーな玉ねぎだが、食感と味に変化を生みだしていて、最後の一片をレンゲで探しつつ、スープが進んでしまう。

第一印象は煮干しの香り。一度の仕込みに煮干し6キロほど、さらに椎茸と昆布と入れている。
第一印象は煮干しの香り。一度の仕込みに煮干し6キロほど、さらに椎茸と昆布と入れている。

『DRIED SARDIN BROTHERS』店舗詳細

高円寺駅から1分!『自家製麺 火の鳥73』のクセになる辛口味噌

火の鳥辛口味噌850円。とろりと粘度があるスープは途中で焦がし唐辛子を入れて味変も楽しんでほしい。
火の鳥辛口味噌850円。とろりと粘度があるスープは途中で焦がし唐辛子を入れて味変も楽しんでほしい。

『自家製麺 火の鳥73』は初代が1973年に屋台でラーメンを売り始めたことに記念して、店名に73と付けている。現店主は初代の娘婿にあたる浅羽範彦さんだ。

看板メニューは、初代が石神井公園に店を構えた頃から火の鳥辛口味噌。味噌に合わせるのは、初代が考案した焦がし唐辛子だ。唐辛子はミキサーで細かく砕いたあと、少ない油で徐々に温めて、最終的に赤黒くなるまで色づける。この香ばしさにハマる人が多いのだとか。スープは辛口というが、辛さが苦手な人でも食べられる程よいレベルだ。もう少し辛さが欲しいなら卓上の焦がし唐辛子を少量加えてみてほしい。全体にシャープさが加わる。

スープは無化調・無添加の味を追求。豚のゲンコツと鶏ガラは、かつては1つの寸胴でガンガンと煮込んでいたが、今はそれぞれに適した炊き方に分けている。昆布と鰹やサバ、イワシから一番出汁を贅沢にとるようになった。

初代が考案した焦がし唐辛子が火の鳥辛口味噌のポイント。
初代が考案した焦がし唐辛子が火の鳥辛口味噌のポイント。

『自家製麺 火の鳥73』店舗詳細

“くさうまスープ”の虜になる『ラーメン 健太』

ラーメン800円。メニューは他にネギ、トゥルトゥル、替え玉、半替え玉のみと潔い。
ラーメン800円。メニューは他にネギ、トゥルトゥル、替え玉、半替え玉のみと潔い。

豚骨というとこってり濃厚なイメージもあるが、『ラーメン健太』のスープはさらりとしている。泡が浮いているが白濁しているわけでもない。寸胴鍋の中でゲンコツを炊き、火を入れては冷まし、熟成させるうちに泡が出て、その状態は営業中にも変化する。店主の健太さん曰く「豚骨ががんばっている」と泡がたくさん出てスープの状態がいい。ただし100%コントロールできるものでもないそうだ。

店内には「作業中でも遠慮なく、声をかけてください」という張り紙。細麺で食べやすい『ラーメン 健太』では8割近い客が替え玉を頼むが、1人で店を回す店主に声をかけづらい人も多いよう。「スープの温度も下がるけん、替え玉は早く出してあげたい。だって、俺はラーメン食う時はそうやもんね」。最初から最後の一杯まで同じ気持ちと丁寧さで作っていると大真面目な顔で話す。

スープの寸胴鍋は2つを使い分けていて、大きい方で8割完成させたあと、左の鍋で仕上げる。
スープの寸胴鍋は2つを使い分けていて、大きい方で8割完成させたあと、左の鍋で仕上げる。

『ラーメン 健太』店舗詳細

人気店『麺屋はやしまる』。つけ麺で味わう太麺のなめらかさ

ミックスわんたんつけめん塩1060円。ワンタンは海老と肉が2個ずつ。写真の麺は1.5倍量。1.5倍まで無料。
ミックスわんたんつけめん塩1060円。ワンタンは海老と肉が2個ずつ。写真の麺は1.5倍量。1.5倍まで無料。

『麺屋はやしまる』といえば、高円寺のラーメン好きが行列する人気店として知られる。ラーメンの系譜的に言えば、目黒の『支那ソバ かづ屋』や浜田山の『たんたん亭』の流れを汲む。そのことからワンタン麺を目当てに訪れる人も多い。しかし、「意外とラーメンとつけ麺のスープを同じだと思っている人も多いから、ぜひつけ麺を食べてみてほしいんです」。美大卒という経歴を持つ店主の林信(はやしまこと)さんはつけ麺推しだ。

ミックスわんたんつけめん塩1060円は自慢のワンタンが肉と海老、両方楽しめる一杯だ。茹で上げて手早く水で締め、平皿に守られた麺はツヤツヤ。太麺ながら、ツルツルでモチモチの食感に箸が止まらない。

皮は薄さとなめらかさ、強くて破れないという、相反する特徴を持たせているワンタン。トゥルっとした舌触りに満足感がある。具は食感を残した甘い海老。そしてもう一方は、豚肉のむちっとした食感と旨味。

ワンタンは箸でつまむのに難儀するトゥルトゥル具合。
ワンタンは箸でつまむのに難儀するトゥルトゥル具合。

『麺屋はやしまる』店舗詳細

深夜に働く人に野菜たっぷり。身体も気遣う『らーめん一蔵』

味噌野菜ラーメンは970円。野菜がたっぷり。
味噌野菜ラーメンは970円。野菜がたっぷり。

『らーめん一蔵』のオープンは2001年。「オープン当初は中太と言っていましたが、最近太麺が流行ってきたので、今では中細と言われるようになりました」という、店主の冗談とも本気ともつかないコメントが、20年という時間を感じさせる。

『らーめん一蔵』では、ごま油で炒めたもやしが入るメニューが多いが、名前に野菜とつくラーメンには、キャベツやピーマン、ニンジン、玉ねぎ、そして豚ひき肉が加わって、まさに野菜たっぷりだ。豚バラ肉で作るチャーシューは3時間煮たあと、一晩寝かせて、翌日別のタレで表面をしっかり焼き上げるというなかなか手の込んだもの。分厚めに切られていて食べ応えのある1枚だ。

味噌野菜ラーメンは970円。味噌は3種類を合わせて、さらに擦りゴマを加えている。まろやかなスープは一味唐辛子がアクセントで、塩分がそれほど高くないのも好感触。

野菜の下から発掘するかのような麺は卵入りの中太麺。
野菜の下から発掘するかのような麺は卵入りの中太麺。

『らーめん一蔵』店舗詳細

チャーシューたっぷりでやさしい味が魅力『喜多方ラーメン坂内 高円寺北口店』

シンプルながらチャーシューが5枚入りの喜多方ラーメンは760円。
シンプルながらチャーシューが5枚入りの喜多方ラーメンは760円。

「週に2、3回食べに来る女性のお客さんもいますよ。そんなに好きでいてくれるのかとうれしくなります」と『喜多方ラーメン坂内(きたかたラーメンばんない)高円寺北口店』店長の石丸国宏(いしまるくにひろ)さんは話す。

『喜多方ラーメン坂内』が出しているのは、あっさりした醤油味のラーメン。いちばんシンプルなメニュー、喜多方ラーメンは760円と割安にもかかわらずチャーシューが5枚ものっている。

フランチャイズ展開している『喜多方ラーメン坂内』は2023年3月現在で全国14の都県に64も店がある。フランチャイズというと、本部から食材が送られてきて、調理は最後の部分を行うだけなのかと思えば、そうではなく、スープもチャーシューも、お店で手間暇かけて作っている。

お店は高円寺駅北口の目と鼻の先だが、細い路地に面している。
お店は高円寺駅北口の目と鼻の先だが、細い路地に面している。

『喜多方ラーメン坂内 高円寺北口店』店舗詳細

秘伝の味噌ダレがポイント『味噌ラーメン専門店 味噌一 高円寺店』

わかめの香りもいい味噌一らーめん800円。もやしなどの野菜がシャキシャキしているのがうれしい。
わかめの香りもいい味噌一らーめん800円。もやしなどの野菜がシャキシャキしているのがうれしい。

『味噌ラーメン専門店 味噌一 高円寺店』は1993年にオープンし、2023年には30周年を迎えた。月曜日は21時閉店だが、他の曜日は明け方5時まで営業していて、深夜に働く人にも人気だ。

圧倒的な人気メニューは、シンプルな味噌一らーめん800円。オリジナルの味噌ダレがポイントで、レシピは社内でも一部の人だけが知っている。シャキシャキした食感のもやしや豆苗、コーンが彩りよく盛り付けられて、ぱつんと歯切れのいい太麺も食べ応えがあっていい。

『味噌ラーメン専門店 味噌一 高円寺店』では、入り口付近に味付け玉子、火吹きメンマ、火吹きもやしが置かれている。セルフサービスでカンパとして小銭を缶に入れると食べられるメニューだ。集まったお金は交通遺児育英会や埼玉のNPO、松ぼっくりの会に寄付されている。

セルフサービスメニューと年季の入ったカンパ缶。
セルフサービスメニューと年季の入ったカンパ缶。

『味噌ラーメン専門店 味噌一 高円寺店』店舗詳細

シンプルなメニューでも満足感あり『麺処 田ぶし 高円寺本店』

本家 田ぶし らーめんは850円。普通盛りでもなかなかのボリュームだ。
本家 田ぶし らーめんは850円。普通盛りでもなかなかのボリュームだ。

2003年に高円寺に1号店をオープンした『麺処 田ぶし』。今やインドネシアのジャカルタにまで店は広がり、焼き鳥店やビストロ居酒屋などを含む飲食店企業に成長した。

本家 田ぶし らーめんは、チャーシューに玉子、メンマとネギ、ノリとラーメンらしい具材がのって、ラーメンを食べるぞという気持ちが盛り上がる。

具材以上に、魚介の旨味と香りで香ばしく仕上がった自慢の香味油と店舗ごとに作るもっちりした麺が決め手。もちろんスープも自慢で、2日かけて完成させている。

さらに腹ペコで訪れた人にうれしいのが大盛り無料というサービスだ。対象はつけ麺も含む全てのラーメンのメニューだ。「7、8割の人が大盛りを頼みますね」というから、若い人が多い高円寺らしい。

お店があるのは高円寺中通商店街。
お店があるのは高円寺中通商店街。

『麺処 田ぶし 高円寺本店』店舗詳細

飲んで食べて締めにラーメンを『二階麺肴酒店 黒黒黒』

スパイスチューハイ550円、マーラーよだれどり650円、ザーサイセロリ450円、豚足500円。席料が別途100円かかる。
スパイスチューハイ550円、マーラーよだれどり650円、ザーサイセロリ450円、豚足500円。席料が別途100円かかる。

『黒黒黒』と書いて“ミクロ”と読ませる『二階麺肴酒店 黒黒黒(にかいめんさかなさけてん ミクロ)』は、「お酒を飲みながら中華料理や懐かしさのある一品料理をつまみ、ラーメンで締める」スタイルの店だ。

豚足は、紹興酒とブランデー、数種類のスパイスを使ったタレを注ぎ足しながら、長時間煮込んで仕上げている。マーラーよだれどりは、鶏胸肉が程よく柔らかい。そして意外な組み合わせのザーサイセロリがさっぱりと箸休めにちょうどいい。

忘れてならない締めのラーメンの代表格、煮干し中華そばは、煮干しと昆布を煮出したスープに、配合にこだわった4種類の醤油をブレンドしたカエシを加えている。スープのストレートな醤油味と、煮干し由来の苦味のコンビネーションは「お酒のあとにいいんですよ」とスタッフさん。

煮干し中華そば850円。
煮干し中華そば850円。

『二階麺肴酒店 黒黒黒』店舗詳細

取材・文・撮影=野崎さおり