『らあめん ジャ』の醤油と鶏を極めた中華そば
2021年、中野駅から徒歩5分の路地にオープンした『らあめん ジャ』は、ランチ時間帯のみ営業するラーメン店。同じ店舗で夜から営業する居酒屋『ご飯屋 楽多(らくだ)』の店主が、試行錯誤を重ねて生み出したラーメンは、鹿児島県大隅半島の醤油屋が作るこだわりの醤油や国産鶏など、素材の旨みを最大限に生かしたシンプルで洗練された一杯だ。
『らあめん ジャ』店舗詳細
『麺屋Cage』のあごだし和風ラーメンは〆ラー&朝ラーに!
中野駅の北口から歩くこと約2分の場所で、深夜からひっそりとオープンする『麺屋Cage』。翌日の早朝まで、ラーメンと数種類のおつまみ、アルコールを提供するラーメン居酒屋だ。さまざまなジャンルの飲食店で経験を積んできた店主が辿りついた一杯は、あごだし和風ラーメン。黄金色の美しいスープは、さっぱりとしていながら、あごだしの旨みとコクがギュッと凝縮している。また、春にはピンク色のスープが美しい桜ラーメンや、夏には爽やかな冷やしジェノベーゼラーメンなど、季節ごとに展開する斬新なメニューも要チェックを。
『麺屋Cage』店舗詳細
中野に“新生”家系ラーメン『箕輪家』が君臨!
もともとはイベント出展時のみ現れる家系ラーメンの店が、2022年11月に中野にオープンした。豚骨ラーメンの名店『博多ラーメン でぶちゃん』から伝授された豚骨スープにアレンジを重ねた“箕輪家流”の家系スープは、中毒性のなかにマイルドさが感じられる。老若男女が親しみやすい味わいは、「普段は家系ラーメンを食べない」という人にもぜひおすすめしたい。
『箕輪家』店舗詳細
名店『かしわぎ』の塩ラーメンは豚ベースなのに透明な“豚清湯スープ”
東中野で不動の人気を誇る『かしわぎ』の看板メニューは、豚ベースながら透明なスープの“豚清湯(ブタチンタン)”の塩ラーメン。中華の調理法である掃湯(サオタン)を用い、豚骨スープ特有の力強さを残しつつ、澄んだ美しいスープを作っている。そんな手間暇かけたスープは、とにかく複雑。凝縮した豚のコクと、奥深くから旨みや苦味などさまざまな味わいが絡み合いながら押し寄せてくる。常にアップデートを続けるラーメンは、今後もどんな進化を見せてくれるのか楽しみだ。
『かしわぎ』店舗詳細
フレンチの技法がキラリ。東中野『メンドコロ キナリ』の濃口醤油ラーメン
2018年のオープン以来、全国から人々が訪れる東中野の名店『メンドコロ キナリ』。フレンチで修業を積んだ店主・越川さんが作る、フランス料理の技法を忍ばせたラーメンが評判だ。20種類の醤油、15種類の塩を組み合わせた重層的な“かえし”と、煮干しをメインにした魚介系の出汁を組み合わせ、スッキリとした味わいに。隠し味にはシェリー酒を使いコクを出すという、フレンチならではの技法も。シンプルながら、「また食べたい」と思わされる一杯だ。
『メンドコロ キナリ』店舗詳細
新中野『粉麺小屋』はうどん店の技術が詰まった完全手打ちラーメン!
新中野エリアにある『粉麺小屋(こめんこや)』は、なんと“うどん店”から業態を一転したラーメン店だ。うどん店で長年技術を培った麺職人が手打ちする麺は、絶妙なモチモチ感が心地良く、歯切れが良い。うどんとラーメンの良いところをミックスしたような麺は、小麦の香りが引き立っていて、食べ進めるうちに「最後の1本まで逃すものか」という気持ちになる。オリジナルのスープは、地鶏ガラのスープをベースに、上質な素材にこだわった鰹節など“節系”のスープをあわせて昇華させたダブルスープ。化学調味料は一切使わないため後味はすっきりしていて、毎日でも食べたくなる優しい味わいだ。
『粉麺小屋』店舗詳細
明るい旨さの魚介とんこつ『麺屋 はし本』
駅から徒歩で7分、真っ白いのれんに客足の絶えない人気店『麺屋はし本』。マスクの下からでも笑顔のわかる店主の橋本健太朗さんが、大勝軒での修行時代や、シンガポール店の立ち上げなど、すべての経験を取り入れ表現する。
魚介とんこつWスープと分類されるスープは三河屋製麺の中太の麺によく絡み、橋本さんの気さくな気持ち良い接客のように、コクがあるのに重くなくグイグイと食べ進めてしまう。分厚いチャーシューはしっとりと柔らかく、食べ応えも抜群。「おいしいと感じたものを最大限おいしく作り込むこと」が橋本さんのモットー。スタンダードな素材で丁寧に構成されている『はし本』のラーメンが食べたいと、遠くから足を運ぶお客さんたちがその旨さを証明している。
『麺屋 はし本』店舗詳細
ラーメンはフレンチ!『ただいま、変身中』が変身し続けるワケ
ラーメン店というよりバーのようなカウンターに、照明、ブレンダーで泡だてたムース状のスープにそそり立つ薄切りのバゲット。少しの小麦感と、密度ある表面にスープがよく絡む麺は老舗の『大橋製麺』と作り上げたオリジナルの麺だという。低温で仕上げた鮮やかなピンクのしっとりとしたチャーシュー、炙って濃密な味わいとなった牡蠣、やわらかく薄く立ち上がるバゲット。麺の合間にバゲットをスープに浸していただくとトッピングの工夫が、この一杯をまるで軽いコース料理のように表情豊かにしていると気がつく。
フレンチの技術とルックスだが、ラーメンとしか表現できない一品をつくりあげている。「ラーメンもフレンチでしょう」と、ちょっとだけニヤッとしながら答える元・星付きフレンチのシェフの、本気のエスプリをみた。
『ただいま、変身中』店舗詳細
甘味処でいただく乙なラーメン『富士見野』
「縁日の日には開けているからね」と言われてそうか新井薬師の門前町かとハッとする、昔ながらの商店街。ここに3代目の石山さんご夫婦が営む甘味処『富士見野』はある。初代が1934年(昭和9)に甘味処『富士見野』を開店してから約90年、この場所には親が連れてきた赤ん坊が、いつの間にか連れ合いと、そのまた子どもを連れて食べに来る。そんな気心の知れた、安心感がある店だ。
おすすめは、当代の石山繁さんがリニューアルした鶏出汁醤油の透明なスープと、甘味処ならではの餅を使った餅入りラーメン。杵つきの滑らかな焼き餅にスープが染み入り絶品。お腹に余裕のある向きは、ぜひご一緒に本職の甘味をどうぞ。大福からあんみつまで、毎日仕込んだあんこにお餅、頂かぬ手はないでしょう。
『富士見野』店舗詳細
ビストロシェフが作る清湯豚骨白醤油拉麺『LABO麺』
中野駅の南口、ちょっと意外なほどに小じゃれたレンガ道の商店街に、実際しゃれたカフェのような店舗がある。ここで清湯豚骨白醤油拉麺というラーメンが食べられるのは、実は一種の奇跡的なタイミングでもあるのだ。2020年4月、オープンから6年を迎えようとしていたビストロ『root』は緊急事態宣言の時短要請を受けて休業を余儀なくされた。そんな混乱の中、ひとりのフレンチシェフが、かつてこだわりすぎて実現できなかったラーメンを完成させる。豚骨をコンソメスープを作る技法「クラリフェ」で透明に濾(こ)し、昆布と豚骨のスープを合わせ、鶏の粗挽きで凝固させた透明な清湯豚骨に旨味の露のような白醤油で仕上げた。澄んだスープの上で鮮やかにその味を発揮するのは、低温仕上げのチャーシュー、ポルチーニのペーストだ。
2021年9月現在、昼は『LABO麺』、夜は『root』として営業。夜はコース料理のシメでラーメンをいただける。
『清湯豚骨白醤油拉麺 LABO麺』店舗詳細
玉を中心に綿密に計算された調和『玉 バラそば屋 中野店』
どんぶりいっぱいに広がるバラ肉の柔らかさと甘み、ヒタヒタと迫る塩とんこつスープの塩っけ、それらを統べる玉(卵黄)の輝きを溶き放つと、渾然一体となった調和が訪れる……。見た目の肉々しさやあっさりとしているが塩が立ったとんこつスープが、実は綿密な計算の中でぶつかり合わずに小宇宙(コスモ)を生み出すのだと気づいた瞬間の喜びである。
また、そのバラ肉の柔らかさと甘みをコアにした、味噌バラそばにそそりたつ香味野菜の山も愛おしい。シンプルにして大胆な力強さを味わってほしい。
『玉 バラそば屋 中野店』店舗詳細
上品な旨味が広がる優しい鶏スープ『鵺 NUE NOODLE DINING』
真っ黒なファサードをまとった『鵺 NUE NOODLE DINING』では端正で優しい、手間を惜しまぬ美しささえ感じる鶏白湯そばを味わえる。スープはベタつきもなく鶏の臭みもない、上品な旨味が広がる優しい鶏スープ。次に炙りが香ばしいチャーシューをかじると、厚手の肉がホロっと崩れる。そこにスープがしっとりと染み込み格別の味わいとなるのだ。
一方で気になるのはマスターの背後にある、この明らかに「好きなヒトが選んだ」希少揃いのモルト。「バーで飲んだお客さんが、ラーメンと一緒に頼む酒がビール一択なのもどうなんだろうか」と思いつくあたり、マスター喜田さんの気遣いと、ウイスキー愛が垣間見える。緊急事態宣言の前は明るい飲み屋街からシメの一杯を求めてやってくる酔客も多かったが、現在はその落ち着いた雰囲気に惹かれ、女性客も多く訪れる。
『鵺 NUE NOODLE DINING』店舗詳細
普通のラーメンのレベルが普通じゃない『五丁目ハウス』
『五丁目ハウス』は、濃厚とんこつ醤油ラーメンの系統ではあるけれど、白米無料、海苔、ほうれん草、テーブルには高菜と生姜とお酢に擂り胡麻、唐辛子のセットと、ものすごくオーソドックスに家系の構造といえるのだ。しかしスープもチャーシューもそのバランスが“絶妙”なのである。
こだわってる、ってとこはなくて「この街にこんなお店があったらイイな」を作っているという菅野さん。並盛り680円の破格の価格もそのひとつ。「唯一こだわってるって言えるのは、海苔かな、季節ごとに種類を取り寄せて調整してる。家系は海苔でしょう(笑)」と、余裕ある笑顔を見せる。
「家系以外も色々作っていいとこ取りして食べたい味をつくっただけ。普通ですよ」。その“だけ”を完成させるのは見えない努力かセンスなのか。ちなみに、テーブルでのお冷やは水ではなく口をさっぱりとさせるルイボスティをブレンドしてるとのこと。そういうとこだぞ、この店の普通は。
『横浜家系らーめん 五丁目ハウス』店舗詳細
文=稲垣恵美、畠山美咲 写真=稲垣恵美、荒川千波