随所に細やかな工夫が光る握りのコース『鮨 山沖』
店主の山沖新(あらた)さんは、寿司一筋30年以上。店を構えてからは10年以上経つ。昼メニューは握りと巻物がズラリと並ぶ。柵漬けのマグロや、貝柱を添えて口当たりにキレを加えたウニ、切れ目を入れてシャリを詰める玉子など、独創的な品を手際よく握る。また「これを目当てに来る人もいるんです」という、イワシの出汁のお吸い物。わずかに入ったまぐろ節の甘みに、ホッと人心地がつく。
『鮨 山沖』店舗詳細
日本橋で130年を超える歴史 時代に流されず江戸前を守る『𠮷野鮨本店』
箸袋の裏に「日本橋 髙島屋さん真裏通り」の文字。屋台時代を含め、日本橋で130年以上寿司を生業とする。酢飯は赤酢と塩のみ、マグロはヅケでも出し、コハダは粗塩をまぶしてしっかりしめ、ほぼすべてのネタに煮きりやツメを塗って出すなど、江戸前の仕事を大切にしてきた。「おまかせもいいけど、時には自分の好きなネタを自由に頼んでほしい。寿司の良さはお客さんが自由にメニューを組み立てられるところにあるから」と5代目。
『𠮷野鮨本店』店舗詳細
昭和元年創業の魚屋がルーツ魚の目利きに自信あり『繁乃鮨』
ルーツが魚屋だけあり、仕入れるネタには自信あり。「昔は2代目の親父と築地に行って、どんな魚を選ぶのか目で学んでましたね。仲買との付き合いが何十年とあるから、本マグロも最上級のものを出してくれるんです」と職人歴約30年の3代目・佐久間さん。縦返し3手という美しい所作で握られる寿司は、やや小ぶりで舟形の品のある佇まい。自慢の赤身を口に運べば、そのねっとりとした官能的な食感と、濃厚なうまみに悶絶!
『繁乃鮨』店舗詳細
ロールケーキ大の、豪華オリジナル『橡 TOCHINO-KI』
「見た目の衝撃はもちろん、食感も大切に」と、人形町に店を構えて13年になる大将・橡木義和さん。超太巻きなので、海苔は2枚使用だ。酢飯をのばしたら、トビッコ、真ん中に卵焼きとマグロ、さらにエビ、イカ、キュウリなどを隙間なく並べるも、要は淡い緑色のアボカド。野菜ソムリエの女将、雅子さんの提案で、「ねっとりおいしい」と採用に。店主夫妻もここぞというときに手みやげにすると、なぜかいいことが起きるという。福を呼ぶ巻き寿司!?
『 橡 TOCHINO-KI』店舗詳細
ゼラチン豊富で、お肌もしっとり『日本橋 玉ゐ 本店』
アナゴ専門店が打ち出した名物は、約70㎝のアナゴを丸1本使う太巻きだ。夏から秋の旬に1年分を仕入れ、さばいて煮アナゴの状態で冷凍保存。今日使う分だけを焼き、タレを付け、もう一度焼けば、タレが染み込んで滋味深くなる。これを具沢山の太巻きにドーンとのせる。「タレこそ、自慢です」と、寿司職人で広報の佐藤裕二さん。アナゴ数万本の旨みが凝縮されているという。ゼラチン質が豊富で、持ち帰る頃がしっとり食べ頃。
『日本橋 玉ゐ 本店』店舗詳細
江戸前寿司伝統の希少な巻きに遭遇『㐂寿司』
しっとりしたシャリ、ほろ甘い芝エビのオボロ、車エビとコハダの歯応え。目に舌に、四味一体の優しい透明感が広がって、うっとり。この江戸前ならではの技が織りなす「手綱巻き」を、創業95年の老舗の大将、油井一浩さんが受け継いでいる。「元々にぎりの箸休めで、お茶屋へ配達する弁当にも詰めました」。酢飯をまとめながら空気を抜くので、日持ちするのだ。今は品書きになく、存在を知る人が注文し、周りの客の興味をそそる。
『㐂寿司』店舗詳細
構成=柿崎真英 取材=鈴木健太、高橋健太・松井一恵(teamまめ) 撮影=井上洋平、山出高士、金井塚太郎