淹れ方を教えてもらったのは、『カフェ海猫山猫』掘薫さん・泰彰さん
山上の一杯を極めたい。その一心で門戸を叩いたのは、挽きたてハンドドリップにこだわる『カフェ海猫山猫』 。
「まず豆選びですが、高山の場合は湯の沸点が低くなり味がぼやけてしまうこともあるため、ロースト香のある深煎りがおすすめ。また、春の低山なら酸味と華やかな香りのある豆というように、山や季節と結びつけて選ぶのも素敵です」 と店主の堀薫(ほり・かおる)さん。
道具は軽い方がいいが、 ドリッパーは多少重くても家で愛用しているものを。 パーツが取り外し可能な1〜2杯用のものならケトルの中に収納しやすい。 今回の道具一式なら20ℓ程度のバックパックで十分収まる。
「山は体が冷えるし湯も冷めやすいので、ドリップは通常より高い97℃程度で。沸騰しにくい山域ならば、豆を一杯15gではなく20gに増やすと味をしっかり抽出できます」
プロ直伝の淹れ方!
STEP 0 準備
ドリップの粉面が水平になるよう平らで風の当たらない場所を探し、道具を並べる。淹れたてをすぐ飲む方がうまいのでカップも用意。
【コーヒー豆】1杯150㎖に対し15〜20g。自宅で量り、ラップで小分けに。
【シェラカップ】最後のドリップを捨てるための受け皿として使用。コップにもなる。
【ガスバーナー】アルコールストーブより湯を再加熱しやすい。弱火にできるものを。
【ナルゲンボトル】耐熱性が高く、目盛りがついているのでドリップした量も一目瞭然。
【ケトル】鍋型のコッヘルでもいいが、注ぎ口のあるケトルの方が淹れやすい。
【細い注ぎ口】別売りの注ぎ口を付けてより細くお湯を落とし、雑味を抑える。
【ドリッ パー】多少重くても普段家で使いなれているものを。1〜2杯用が◎。
【マグカップ】山は冷めやすいので、木製や二層構造で保温性のあるものがいい。
【ミル】かさばらないようハンドルが取れ、かつ粒度調整できるもの。
【ミニテーブル】これがあれば凸凹の登山道でもドリップの際、粉を水平にしやすい。
【食品温度計】湯が熱すぎると雑味が出るので、湯温の計測用に。
STEP 1 湯を沸かす
湯は1杯150㎖が目安だが、山ではすぐ冷めやすいので多めに沸かす。湧き水のある山ならばくんでおき、それで淹れると気分が盛り上がる。
STEP 2 その間に豆を挽く
粒度(豆の細かさ)は1㎜ぐらいの中細挽きで。多くのハンドミルは何段階か粒度を調整できる。豆に熱が伝わると劣化するのでゆっくり回す。
STEP 3 温度をチェック
沸騰した湯で淹れるとエグみが出るのでNG。家では85~95℃ぐらいが理想だが、山上だとすぐ冷めるので97℃ぐらいで淹れる。
STEP 4 ドリップする
ナルゲンボトルにドリッパーを挿したら約30秒蒸らす。その後、粉に垂直に湯を落とす。ドリッパー内の湯がなくならないよう細く注ぎ続ける。
STEP 5 最後はシェラカップに取り分ける
最後にドリップされるコーヒーは雑味が多いので、別のカップに取り分ける。淹れたてがうまいので、大人数でも少量ずつ複数回に分けて淹れる。
STEP 6 好きなカップに注ぐ
保温性はもちろん、口当たりも大切なので木製カップがおすすめ。布にくるむなど割れないよう注意を払えば、陶器のマグカップでもOK。
STEP 7 完成!
愛用コースターを敷けば、見た目にもおいしそうに。残ったコーヒーの粉などのゴミは、豆を入れてきたジップロックに封入して持ち帰る。
山ならではのアレンジも!
甘いものが好きなら疲労回復効果のあるハチミツ、血流の巡りをよくするシナモンシュガーを入れてもおいしい!
蒸らしの間もガスバーナーの弱火で湯温を保ちつつドリップ。湯気の立つマグカップを口にすると― ―うまい、マジうまい! 苦みとコクが店で飲むコーヒー並みだ。
「飲みたい場所を探しながら歩き、その山をイメージして選んだ豆を、その山の湧き水を沸かして飲む。そういう物語を紡いでいくのが山コーヒーの楽しさだと思います」
取材・文=鈴木健太 撮影=オカダタカオ
『散歩の達人』2021年3月号より