『東京「多叉路」散歩 交差点に古道の名残をさぐる』

交わる道から読み解く、東京の歴史

荻窪 圭 著/淡交社/1600 円+税

あれは今から約2年前の取材時のこと。糀谷から雑色へ向かって歩いていたら、あれ? 右にも左にも前にも斜めにも続く道が……! 突如出くわしたその道の交差に戸惑い、そして興奮する私をニヤリと見つめる看板には「七辻の由来」とあった(「辻」とは「十字路」を表す言葉)。これが今までで最も印象深い「多叉路(たさろ)」との出合い。
東京の道は複雑だ。交通手段の変化や人口流入による土地利用の変化などの影響を受け、新たに道を追加しては、古くからの街道と交わり、時にはそれが何重にも重なり合っている。本書はその成果ともいえる多叉路を厳選し、多叉路化の歴史を、古地図などを基にひも解いていく、なんとも散歩心をくすぐる一冊だ。
選ばれし多叉路は全部で20。九叉路を有する九道の辻(小平市・東村山市)から浅草六区の六叉路、そして赤羽の三叉路まで。360度カメラを駆使した筆者のユニークな解説が光る。中でも特にときめいたのは、池袋の六ツ又交差点。江戸時代の地図を基にした川越街道に関する分析をふまえ、今もビルの一角にちんまり鎮座する庚申塔(こうしんとう)をみてみるとその存在にも納得。まるで謎解きのように、街の歴史が理解できて面白い。何よりその場を見る目が変わる。
本書を読み、街の話をする際「あの五叉路の…」と無意識に交差点へ言及していた自分を発見。なるほど私は多叉路好きだったのか。板橋のあれは七叉路か? そうそう、あっちにもいい六叉路が……いやはや止まりません。(町田)

『勝海舟関係写真集』

森重和雄・髙山みな子・三澤敏博 著/ 出版舎 風狂童子/ 8000 円+税

140枚超の関係写真を掲載した勝海舟写真集であり、勝海舟ガイド本。著者の一人、三澤さんには本誌でも幕末関連記事をお願いしているが、彼から興奮気味に見せてもらったことのある「洋服を着た勝海舟」の写真も掲載。ほか絵画や銅像、ゆかりの地など、様々な視点で海舟について学べる、資料性高すぎる一冊。(土屋)

『喫茶チェーン観察帖』

飯塚めり 著/カンゼン/1600円+税

これは見逃せないぞ! と思って手に取った一冊。チェーンの喫茶店を一挙ずらりと並べている本は今までないのでは? 松樹新平さんデザインの店舗、三軒茶屋のブルーボトルは蔵前のカキモリとコラボ⁉ などなど、目から鱗の情報が満載だった。(佐藤)

『東京アンティークさんぽ』

カツヤマケイコ 著/双葉社/1200円+税

古道具好きの著者が、東京近郊を中心にさまざまな骨董市をめぐるコミックエッセイ。小さな食器や用途不明のオブジェでも、作られた時代背景がわかるといとおしい。骨董市なんてガラクタばかりでしょ? と思っている人にこそ勧めたい、古道具選びのコツもわかる一冊。一期一会のモノに出合ってみたくなる。(吉岡)

『散歩の達人』本誌では毎月、「今月のサンポマスター本」と称して編集部おすすめの本を紹介している。2020年も年の瀬にさしかかり、いよいよそれを一斉公開する時が来たと言えよう。ひと月1冊、選りすぐりの12冊を年末年始のお供に加えていただければ幸いである。