『町中華名店列伝』

地元のあのお店も、名店かもしれない!

町中華探検隊 著/自由国民社/1500 円+税

主に昭和のころに創業し、当たり前のように街に存在してきた大衆的な中華食堂。「町中華」として注目されるようになって数年、高齢や建物の老朽化を理由に閉店してしまうお店もあれど、今も元気に営業中の町中華が、近隣で働く人たちやご近所ファミリーの胃袋を満たしている(ぜひ『散歩の達人』2020年7月号「東京さんぽ図鑑」の「町中華」もご覧ください!)。
本書は、さまざまな町中華好きが集まる「町中華探検隊」(現在隊員は90名ほど)の、下関マグロ副隊長、増山かおり隊員、半澤則吉隊員、西益屋ハイジ隊員が36の町中華を紹介した一冊。次々に現れる心躍るメニュー、独特の店構え、お店の方々の姿。当たり前だが一つとして同じお店はない。おなじみのチャーハンやラーメンだけ見ても、現在のスタイルに至るまでの背景はまったく異なる。名物料理はなおのこと。親戚から教わったという荻窪『ことぶき食堂』のブタカラ。近所に多かった朝鮮(韓国)料理店の焼き肉を真似た上中里『百亀楼』の朝鮮焼き。洋食との兼業時代の名残という京橋『三喜屋』のスパサラ。街と人と時代が生み出したメニュー、その物語を聞くだけでおなかが満たされるようだ。
そして考える。地元のあのお店も、思えば町中華ではないか。ときどき行く会社の近くの中華屋さんは、どんなお店だったっけ。紹介されている“名店”は魅力的だが、あれ? 自分にとって最良の名店はあの店ではないか。もしかしたらあの料理にも秘められたストーリーがあるのではないか――。そんなふうに思わせてくれる、二度おいしい一冊なのだ。(渡邉)

『富士山八十八景』

パイ インターナショナル 編著/パイ インターナショナル/2000円+税

日本のシンボル、霊峰・富士山の美麗写真集。21人の写真家によって、さまざまなシチュエーションで撮影された富士山の多彩な表情に癒やされる。掲載点数は奇しくも『散歩の達人』2020年7月号の『東京さんぽ図鑑』と同じ88景! 中には都心で撮影されたものも。「富士見(P.58)」で紹介した場所も併せて、絶景スポット巡りの予習にぜひ役立てて。(吉岡)

『おかえり台湾 食べて、見て、知って、感じる 一歩ふみ込む二度目の旅案内』

池澤春菜 高山羽根子 著/インプレス/1680円+税

声優・作家と多方面で活躍する二人が巡る台湾ガイド。博物館、本を売る人、アート最前線などのテーマで構成され、自身の体験や現地の人の取材を交え紹介している。中でも興味深かったのは、茶藝館と漢方。ゆったりとお茶文化を味わい、体調に合わせ漢方を調合、と現地流の調子の整え方を学ぶ旅なんていいなぁ。(町田)

『くらべる京都』

岡部敬史 文 山出高士 写真/東京書籍/1300円+税

「くらべる」シリーズ第12弾のテーマは「京都」。賀茂川と鴨川、川床(かわどこ)と川床(かわゆか)など京都の歴史と地理を比較するパートのほか、嵐山と嵐山渓谷(埼玉県)、京都の祇園と千葉の祇園など、その他地域と比較するパートも。東京の女坂は男坂に負けないくらい急でカーブがあるけど、京都の女坂は結構なだらか!(佐藤)

『散歩の達人』本誌では毎月、「今月のサンポマスター本」と称して編集部おすすめの本を紹介している。2020年も年の瀬にさしかかり、いよいよそれを一斉公開する時が来たと言えよう。ひと月1冊、選りすぐりの12冊を年末年始のお供に加えていただければ幸いである。