漢方のすべてが揃う場所

品川駅から高輪方面へ3分ほど歩いた場所に、広々とした施設を構える『ニホンドウ漢方ミュージアム』。漢方のあるライフスタイルを提案すべく、ギャラリーとスクール、ブティック、レストランから構成される複合ショップだ。ここでは、1つの施設にいながら漢方を五感で体験することができるのが大きな特徴だ。

ギャラリーの様子。
ギャラリーの様子。

そもそも漢方とは、中国から伝わり、日本で発展してきた日本独自の伝統医学のこと。“人間の体も自然の一部”という考え方に基づき、自然・心・体の調和を目指して、体全体の状態を整えていくという治療法である。ギャラリーには、その考え方を生活に取り入れるためのヒントとなるような知識や解説をまとめたパネルや、生薬・和漢植物の現物見本などが展示されている。

生薬・和漢植物の現物見本が並ぶ。
生薬・和漢植物の現物見本が並ぶ。

展示物の中にはセミの抜け殻やカキの貝殻など、普段の食生活では取り入れることのない素材も並んでいた。広報を担当する村上さんによると、「植物はもちろん、動物や鉱物など、自然界に存在するあらゆる産物の中で、なんらかの薬効を持つものが漢方薬の原料となる生薬として使われる」のだという。漢方ビギナーの方は、まずはこのミュージアムに足を運んで、漢方の基礎となる知識を頭に入れてから、ブティックやレストランを訪れると、理解がさらに深まるはずだ。

和漢素材を美味しく体に取り入れる

『薬膳レストラン10ZEN 品川店』では、漢方の考え方を取り入れた薬膳料理と漢茶や漢方酒を提供している。漢茶とは、和漢植物と西洋ハーブをそれぞれの効果効能別にセレクトし、ブレンドした、この施設を運営する薬日本堂オリジナルのお茶のこと。ブティックで販売している茶葉を実際にいただける場として、お料理をいただくついでに、お気に入りのお茶を見つけるお客さんもいるという。薬日本堂は、大手飲料メーカーのロングセラー商品となる健康茶の開発にも携わっており、その優れた知識とブレンドセンスに基づいて作られた漢茶はとても飲みやすい。

気通茶462円(茶葉は880円でブティックにて販売)。
気通茶462円(茶葉は880円でブティックにて販売)。

レストランでは、10種類展開する漢茶の中からランチタイム、ディナータイムともに5~7種類のお茶を厳選して提供している。中でも、おすすめなのは気通茶(きつうちゃ)。“ストレスをためない気分転換上手”をテーマにしたお茶で、ベースとなるルイボスティーに、リフレッシュの役割を持つエゾウコギなどをブレンドしている。そのほかにも、軽やかな体づくりをサポートする軽々茶(かるがるちゃ)や、寒さが苦手な方におすすめの、温めに着目した素材を配合した暖宮茶(だんきゅうちゃ)など、それぞれの体の悩みに合わせて選びたくなるようなお茶が揃う。

デトックススープランチ1650円。
デトックススープランチ1650円。

また、料理にも和漢素材をふんだんに使用しているが、それらをまったく感じさせない味わいに仕上げるアレンジ力が光る。ランチメニューには美容やデトックスなど、目的に合わせて選べる複数人向けの薬膳鍋のコースのほか、お一人様用鍋も用意。今回いただいたデトックススープランチは、スープに花椒(ホアジャオ)や金針菜(きんしんさい)など、むくみにいいとされる和漢素材を合わせた、まさに老廃物すっきりのデトックス鍋だ。ほかにも、唐辛子や八角、生姜など体を温める効果のある和漢素材も含まれているため、食事中はもちろん、食べ終わった後もしばらく体がぽかぽかする状態が続いていた。ディナータイムにはチェックシートから自身の漢方体質タイプを割り出して、それぞれのタイプに合ったスープを2種類選べる薬膳鍋コースも提供している。自分の体の状態を知れて、さらに補うこともできる、一石二鳥の鍋である。

ここを訪れて、漢方の考え方や基礎知識をギャラリーで学び、実際に漢方を取り入れた料理をレストランでいただくだけでも、漢方へのイメージは変わることだろう。これまで敷居が高いと感じていた漢方との距離が縮んだ、そう感じることのできる場所だった。

『薬膳レストラン10ZEN 品川店』店舗詳細

住所:東京都港区高輪3-25-29 漢方ミュージアム内/営業時間:11:30~14:30LO・17:30~21:00最終入店(日・祝は17:00~20:30最終入店)/定休日:無/アクセス:JR・京急品川駅から徒歩5分、JR高輪ゲートウェイ駅から徒歩8分

取材・文・撮影=柿崎真英