老舗日本茶専門店の思い切ったリニューアル

中野駅南口から徒歩2分。商業施設や飲食店で賑わうエリアの一角に、日本茶専門店『OHASHI』はある。老舗の雰囲気漂う突き出し看板とは対照的な、フレンチシックな外観。店内に入ると、まるでヨーロッパにある雑貨店のようなインテリアやディスプレイに目を奪われる。所狭しと陳列されている商品も、日本茶とは思えないような可愛らしいパッケージが並ぶ。

常連さんも大切にしたいと、リニューアル前と変わらない商品を揃えた一角も残している。

この店は、1653年 (寛永14)に茶問屋として創業。戦後まで日本橋に店を構えていたという老舗中の老舗だ。店主の森田徹さんは、2007年に伯父である先代からこの店を引き継いだ。その際に「350年以上の長い歴史を持つこの店を、自分の代で途絶えさせることのないよう、今後の経営方針について考えをめぐらせた」という。当時すでに、日本茶の茶葉の需要は右肩下がりという状況に直面していた。

そんな厳しい状況を乗り越えるためには、若いお客さんの開拓が不可欠だと考えた森田さん。これまでひいきにしてくれたお客さんを大切にしながらも、「若いお客さんを育てていきたい」という想いで、内装から商品パッケージまでを若い層に焦点を当てたデザインに大幅リニューアルしたのだ。

このパッケージデザインには古いポストカードのイラストを使用。

そのすべてのディレクションを担当したのは、森田さんの妻。内装は、フランスの片田舎にある小さな店をイメージしているのだそう。思わず誰かにプレゼントしたくなるような可愛らしいパッケージは、欧米の古いポストカードや布の柄を使用している。

また、これを機にオリジナルのロゴも制作。「急須をモチーフにした」というロゴは、なんと森田さんが一人で作り上げた力作だ。

新たな『OHASHI』の歴史を刻む

森田さんは、大学卒業後に三重から上京し、伯父が営んでいたこの店に就職。その後、静岡でお茶作りを学ぶなど、お茶に関する知識を身につけていった。そのような下積み時代を経て、今では茶師コンシェルジュとして、茶葉選びから美味しく淹れる心得まで、お客さんに分かりやすく提案している。

また、森田さんはこの店で扱う日本茶のブレンドやパック詰めも行う。代々伝わる商品の味わいは、茶葉の品質にも左右されるが、ブレンドを行う者の技術が最も大きく反映されるという。そのため、少しでも味わいがブレてしまうと、常連さんから声を掛けられることもあるのだそうだ。常連さんからの正直な感想を、森田さんは成長のきっかけとして、常に有り難く受け取っていると話す。

そんな森田さんの技術が活かされる商品の一つである特上煎茶1080円は、この店の定番商品でもある。静岡、鹿児島、滋賀、京都、福岡から仕入れる茶葉の中から、形・味・香り・旨味が一番良い茶葉を使って作っているそうだ。

煎茶のパッケージには、急須をモチーフにしたオリジナルロゴが光る。

また、お土産やギフトに人気が高いのは、豊富に揃うお茶の中から、ほうじ茶や玄米茶など数種類がセットになったギフトボックスだ。ギフトボックスは8種類あり、内容によって箱のデザインや柄を変えているという遊び心も楽しい。

「ある年のホワイトデーの時期には、これらのギフトボックスを求めて訪れる男性客が後を絶たず大忙しでした」。

ギフトボックスは1200円~。

新たな客層に目を向け、大きなリニューアルを図って2020年で13年を迎える。森田さんの想いを受け止めるかのように、「確実に若いお客さんがついてきてくれている実感がある」という。これからも新しいアイデアで、日本茶が持つ可能性を魅力的に表現してくれることだろう。

『OHASHI』店舗詳細

取材・文・撮影=柿崎真英