赤羽の地に約75年。二人の2代目店長
古くからある純喫茶から今どきのカフェまで、赤羽は喫茶店が多い。中でも『梅の木』は開業から約75年という、とても長い歴史を持つ老舗喫茶店だ。
初代と家族で営んでいたのが現在の『梅の木本館』。のちに長男が本館を継ぎ2代目に。そして、1985年にできた『梅の木新館』を次男が継ぎ、こちらも2代目となった。これが現在の店長である溝端さんだ。本館と新館、お互いに自由に作り上げてきた店なので、個性の違いを楽しめる。
新館は2階にあり、窓が大きいため、シックなアンティーク調だが明るさも十分。天井が高く広々としていて、ゆったりと寛げる雰囲気だ。お代わり半額サービスなど、喫茶店らしいサービスも。思わず長居してしまいそうだ。
自家焙煎した豆で淹れるコーヒーを
コロンビア、ブラジル、マンデリン、モカ、インドネシアロブの5種を配合したブレンドが自慢だ。1階の焙煎機で生豆から自家焙煎し、すぐに冷凍して保管するので鮮度が保たれる。新館の開店当初はキリマンジャロやケニアを入れたこともあったが、すぐに今の配合に落ち着いたので、30年以上同じブレンドで提供している。
おすすめはアイスコーヒー。絶対ガムシロ入りで!
ブレンドと同じく5種の豆が配合されたアイスコーヒー。ブレンドとの違いはインドネシアロブをより深く焙煎して入れていること。より深いコクが味わえる。
特徴的なのは、なんといっても泡だ。アイスコーヒーとガムシロップをシェイカーで混ぜるため、自然に泡立つという。アイデアマンだった初代の提案で始めたのだが、見た目もおもしろく、何よりコーヒーがマイルドになると好評だ。
深く濃い味わいの中、ほんのりとやさしい甘み。くどい甘さではないので、普段はガムシロップを入れないという人もぜひ試して欲しい。
新しもの好きの初代から受け継いだ言葉を大切に
最近は小倉トーストがメニューに加えられ、とても人気だという。バターを塗ったトーストの上にあんこがたっぷり。甘さとしょっぱさが絶妙で、和風なのにコーヒーとの相性もいい。玉子と小倉トーストと飲み物がセットになった小倉モーニングとしても人気だという。
「置物の向きひとつでもいい。毎日、お客さんにとって発見のある店でなくちゃ」
新しもの好きの初代は、いつもそう言っていたそう。見回してみると、店内にはさまざまな置物や植物があり、季節感を感じる。
ずっと守ってきた味と新しい味、これからも歴史を紡ぎながら進化する喫茶店なのだ。
取材・⽂・撮影=ミヤウチマサコ