鍋を振り続けて約60年。ベテランのさらにその先に挑む

流れるような動きで炒飯を作る店主の亀山勉さん。鍋を振る音がリズミカルに響く。

今はなくなってしまったが、国立にあった中華屋「大陸」からの暖簾(のれん)分けが店名の由来だ。店主の亀山勉さんは、この店で6年の修業の後、東十条でお兄さんと開いた共同経営の店を経て、独立して自分の店を開業。一度は看板をおろし、池袋のラーメン店で3年ほど働いていたが、「どうしてももう一度、自分の店を持ちたい」という気持ちが強く、赤羽の駅前に改めて開店したのが約30年前。同じ赤羽で、広さの十分な物件が居抜きで見つかり、2004年に今の場所に引っ越してきた。

計算してみると、中華やラーメンに関わってきた年月はなんと約60年!人生のほとんどは鍋を振ってきたということだ。チャーハンを作る亀山さんの姿に、「ベテラン」という言葉では言い表せない歴史を感じた。

みんながイメージする「町中華」らしい店舗なので、ドラマのロケに使われることもしばしば。そのためサインがたくさん飾られている。

一番の自慢のメニューは支那そば。店の看板にも「昔ながらの味 当店No.1」と書いてあるほどの自信作だ。働いていた池袋のラーメン店の味をベースに作り上げたというから、他の店で働いたこともプラスにしているのがたくましい。

もう一つの看板メニューは十条のソウルフードといわれるからし焼き。豚肉と豆腐を唐辛子やニンニクの入ったタレで炒める。単品でも頼めるので、ビールのおつまみに頼む人も多いという。

「秘密のタレ」を使った「支那そば」と半チャーハンは、安くてボリュームたっぷり

支那そばと半チャーハンのセット730円。

支那そばは、スープも具もとてもオーソドックスなスタイルだが、スープと合わせるタレにはちょっとした特徴が。醤油の風味はあるが、醤油味ではなく、塩味というほど塩が強いわけでもなく……。何味か?といわれると難しい味わいなのだ。

「秘密のタレなのよ」と妻の綾子さんは笑う。

透きとおったスープにメンマのつけダレが合わさり、ほんのりオレンジ色に。

つるつるの麺と、鶏ガラ、煮干し、豚足、野菜などで取ったスープはシンプルで中太麺との相性がよく、やさしい味わい。きちんと素材の旨味を感じる。

厚く切ったチャーシューも歯ごたえのよいメンマも、ボリュームたっぷりで、支那そばだけでも満足できる。単品だと600円なので、懐にもやさしすぎる料金設定だ。

定番のチャーハンはしっとり系でやさしい塩味。

麺類と、半カレーライスやおにぎり、ライスと春巻きなど、種類豊富なセットメニューも魅力的。カレーもいいな……と思ったが、今回はやっぱり定番! の半チャーハンを選んだ。

パラパラではなく、ちょっとしっとり系。角切りのチャーシューが入っていることで、噛むたびに肉の旨味と甘じょっぱさをじわっと感じる。ふんわりとした玉子の甘みと塩コショウの味付けが絶妙で、支那そばのスープを飲みながらチャーハンを楽しんだ。

約30年、毎日試食して、味のチェックをかかさない

店主の亀山勉さんと妻の綾子さん。

亀山勉さんは新潟出身、妻の綾子さんは愛媛出身。出身地は離れているが、働くために上京し、東京で出会った。二人三脚でお店を営んできた二人が、今でも毎朝欠かさないのが「秘密のタレ」の味チェックだ。

タレは寸胴鍋で大量に作りストックしたものを使うのだが、なぜか天候や温度により微妙な味の違いが出るという。そのため、毎朝支那そばを作り、二人で試食するのが日課になっている。一人では気づかない味の変化を、二人でチェックすることで味を守ってきたのだ。

「やれる限り店は続けたいね」

勉さんはそう力強く話した。

町中華だったら、なるとは外せないよね。
住所:東京都北区赤羽1-49-9/営業時間:11:00〜15:00・17:00〜21:30/定休日:日/アクセス:私鉄・地下鉄赤羽岩淵駅から徒歩2分

取材・⽂・撮影=ミヤウチマサコ