半澤隊員がすすめる!鶏好き必食、もも肉を一枚ぜいたくに使った油淋鶏
秋葉原を四半世紀にわたり見守る町中華!
『雁川』がここ秋葉原にやって来たのは今から25年前。まだこの街に東京都中央卸市場神田市場、通称やっちゃ場があった頃の話だ。もちろんメイド喫茶なんてない。今のように若者があふれる前で、街を歩く人々はやっちゃ場や電気街に行き来する男たちばかりだった。今も引き継がれる盛りの良さは、この土地柄が大きく影響しているだろう。
もともとこの店は経堂の人気町中華だったが、とにかく出前が忙しすぎ店を移すことに決めたという。2代目松田武夫さん、3代目で現店主の将吾さんの作る中華が評判を呼び、秋葉原でもすぐに人気の店になった。週替わり料理などで新メニューを食べられるチャンスが多いのもこの店の特徴だ。「バズる」という言葉が生まれる前に、まさに「バズった」牛すじチャーハンはじめ、看板メニューが豊富なので何度も足を運びたくなる。
3代目のアレンジで、DX化した油淋鶏
DX油淋鶏単品750円(満腹夜定、950円)も、まさに彼がアレンジした看板料理の一つだ。もも肉を1枚観音開きし、180℃の油で6分間かけてゆっくり揚げる。サクサクかつジューシーでこれだけで十分おいしいがタレにもこだわりが。「酢ではなく甘味のあるりんご酢を使っているのがポイントですね」と、3代目。いくつもの中国料理店で腕を磨いて来た、彼だからこその創意工夫が町中華の料理を進化させているのだ。「変わらない味」を売りにする町中華も多いが、『雁川』には時代の変化やニーズに応える物腰の柔らかさがある。今後も長く見守っていきたい店だ。
秋葉原『雁川』店舗紹介
取材・構成=半澤則吉 撮影=山出高士
鶏好きを自認する僕は小さいときから、好きな食べ物=鶏のから揚げと即答してきた。が、10代の終わり、上京した頃に油淋鶏なるものを初めて食べ、戦慄走る。から揚げを酸っぱくしていいんだ、そしてこんなにおいしくなるんだ、そう驚いた。以来好きな食べ物リストに油淋鶏が追加された。それでも油淋鶏は町中華では意外と、お目にかかれない。から揚げはあっても一手間かかる油淋鶏を作る店は少ないのだ。町中華探検隊として活動し6年、油淋鶏に出会えたのはわずか2、3回あったかどうか。だから『雁川』で油淋鶏を発見したとき、即座に注文した。店の人気メニュー、牛すじチャーハン目当てで訪れたにも関わらずだ。出てきた「DX油淋鶏」は本当にDXだった。デカい。聞けば、もも肉を一枚使っているという。マジか、僕が無類の鶏好きと知ってのことですか。思い切ってど真ん中からいかせてもらう。ネギだくのタレが揚げたての鶏肉によく絡み、箸が止まらなくなった。「やっと会えたね」と一人呟く。町中華を巡っているとごくたまにある、「俺が長い間探していたのはコイツだ」という感触を確かに感じる一品だった。