数々の名店を取材してきた町中華探検隊が、中華にとどまらず和食や洋食も併せ飲む「町中華」の気になるメニューや文化を研究。前編では、テーマとなるメニューを扱う町中華の名店を取材。後編ではそのメニューについて隊員が大いに語り合います。第12回は、きっと誰もが出会ったことがある「そば屋の中華」。 

意外とあるある、そば屋の町中華。のれん二枚がけの店も?

半澤

今回は浅草のそば屋『辰巳庵』さんで冷やしラーメンをいただいたので、座談会のテーマはそば屋における中華です。みなさん、そば屋の中華料理で思い出すお店はありますか。

マグロ

新宿に住んでいたとき「更科」ってそば屋があったんですが、ラーメン評論家がそこのラーメンをうまいといっていて、お客がみんなラーメンを注文していたんですね。自分も食べてみたら結構おいしかったです。

山出

やっぱり和風なんですか?

マグロ

そうですね、和テイストで。自分はそこではそばは食べたことないくらいラーメンにハマりました。

半澤

なるほど、ラーメンがおいしいそば屋さんてけっこう多いですよね。

山出

今まで町中華探検隊で行った中では、荻窪の『春木家本店』さんがそば屋ですよね。

半澤

そうですね。あそこはまさにそば屋としてスタートしたという歴史があります。昔の写真を見せていただいたら、中華とそばののれん二枚がけでしたね。そば屋ではあるけど、世の中の認識としては町中華でもあるんですよね。

トロ

もう何年も前だけど平井の「あさひ」に行ったね。あそこものれん二枚がけだった。半澤隊員は天丼食べてたなあ。

半澤

「あさひ」さん、閉店しちゃったんですよね。町中華で天丼を食べたのは初めてだったのであの経験は、忘れません!

マグロ

山形県はラーメンがよく食べられていますが、もともとそば屋がラーメンを出していたんです。

トロ

そばも有名だものね、山形は。

マグロ

そう、だから『春木家本店』がいっぱいあるような状態ですね。

山出

山形といえば冷たい肉蕎麦があるじゃないですか。俺はあれが大好きなんですよね。

マグロ

鳥中華ってのもありますよね、ラーメンの麺で、日本そばのつゆを使っているという。

半澤

なるほど、それはまさに『辰巳庵』さんの冷やしラーメンシステムですね!

マグロ

冷たいスープを作るのって難しいんですよ。そば屋だからできる味で。

山出

『辰巳庵』さんはごま油も効いてましたね。コショウ入れて食べたかったなあ!

トロ

確かに、町中華では出せないメニューだね。

そば屋で中華が出る、二刀流のからくりとは?

半澤

ほかにもそば屋で中華料理がある店は多いですよね。

マグロ

そば屋でも「冷やし中華はじめました」の貼り紙を貼っているところは多い。中華料理をたくさん作るわけじゃないけど、冷やし中華だけはやっているという。

半澤

どういうことでしょう?

マグロ

冷やし中華だけなら鶏ガラスープをとったりしなくていいからね。

山出

なるほど!

マグロ

そば屋の製麺所の営業が中華麺を入れて、貼り紙をくれる仕組みなんだよね。

トロ

そうそう、製麺所がスープまで提供していたりする。力が入ってないようなメニューも、意外とおいしいんだ。

マグロ

喫茶店にもラーメンがあることもある。例えば淡路町の『栄屋ミルクホール』なんかもそうだね。

トロ

製麺所の営業が中華屋もそば屋も掛け持ちでやってたりするから、そういう流れが生まれたんだろうね。

半澤

ほかには酒場で人気の店も中華があったりしますよね。

マグロ

そう、もともと町中華だった店が、違う業態になるということもありますよね。牛丼の松屋も最初は町中華だったんですよ。牛丼がおいしいってことで牛丼屋になった。

半澤

へえ! そうなんですか、知りませんでした。

山出

ほかには「洋食中華」もありますね。深川あたりは洋食と中華の両方ののれんを下げているケースは非常に多い。

半澤

確かに、あれものれん二枚がけですね。

山出

甘味屋さんでもそうだけど、メインの商売をやってプラスアルファで何かを作ろうかってなったときに、丼一杯があればできるラーメンということになったんでしょうね。そしてそれが売れてメニューが増えていったという。

トロ

確かに。そういう流れだったんだろうね。

山出

洋食と中華のコックさんが、お互いに教え合って洋食中華が生まれたということでしたね。

半澤

根津の『オトメ』さんにうかがったときも、料理を教え合っていたお話をうかがいましたね。昔はそういう文化があったんだなあ。

二刀流からさらなる進化を止めない『辰巳庵』!

半澤

こうやって見ていくと、そば屋などの二刀流町中華にもいろんなパターンがありますね。今回取材した、『辰巳庵』さんはお客の声が反映されてメニューが増えていったケース。しかもそばだけでなく、町中華側も成功したという例ですね。

トロ

これまで、中華とそばのメニューが同じくらいある店はいくつか入ったことがある。そういうお店って住宅地にあるんだよ。家族とか広い層に受け入れられるように、進化してったんじゃないかな。

マグロ

『辰巳庵』さんもそうですが、見た目はおそば屋なんですよね。入って初めて、こんなのもやってるのかと気づく。そこが面白いよね。僕はだから、最初に『辰巳庵』さん入ったときは、そば屋だと思って入ったんだよ。

トロ

『辰巳庵』は内観もそば屋だよね。

マグロ

冷やしたぬきでも食べようかなと思ったら、壁の目立つところに冷たいラーメンと書いてあったんで思わず注文してしまいましたね。

半澤

二刀流でやっている店って、絶対忙しいですよね。

トロ

確かに、大変だと思うよ。最近できたような店はそんな店あんまりないよね。やっぱり歴史がある店が、長い時間をかけて進化していった過程でもあるんだよね。

マグロ

『辰巳庵』さんは出前も多いし、そういう中でいろんなメニューが生まれていったんだよね。

山出

2代目がそばのつゆを作って、3代目が中華担当と、ちゃんと担当分けがあるのも面白かったですね。

マグロ

『辰巳庵』さんは、カレーとかハンバーグとかそばでも中華でもないメニューも人気なんだよね。

山出

ベーコンエッグ定食なんてものもありましたね。

トロ

こうなると何でもアリだね。

マグロ

今、一番新しいメニューが出前用のロコモコ丼。もはやカフェメニューだよね!

山出

3代目が元栄養士なんですよね。だから料理の幅も広い!

半澤

確かに、ほかにはなかなか見られない進化っぷりでした!

構成=半澤則吉 撮影=山出高士

※増山かおり隊員は育休のため、しばらくお休みします