高水湧基さん
2008年、「UC」のハンドルネームでブログ『日本給水党』を開設。以来、全国各地の給水塔を撮影・記録し続けている。 著書に『まちかど給水塔図鑑』(創元社)、『団地の給水塔大図鑑 2026増補版』(シカク出版)などがある。
Instagram: @watertoweruc
可愛い形と自由なデザイン
「給水塔とは、汲み上げた水を高い位置のタンクに貯め、重力を利用して給水する設備です。今のようにポンプの性能が上がる前は、安定した水圧で水を送り続けることが技術的に難しかったので、重力の力を利用していたんです。
街中の給水タンクも基本的には同じ仕組みです。地上や地下の受水槽に貯めた水をポンプで屋上の高置水槽へ汲み上げ、各階に給水します。
給水塔が団地などの複数の建物に給水するのに対し、給水タンクは原則として、設置された建物だけに給水します」
給水塔が場所ごとに異なるデザインなのに対し、給水タンクは工業製品のため、基本的な形状は共通している。一方、持ち主の個性が色濃く現れるのも魅力だ。
「団地の給水塔や水道局の配水塔は企業や組織が所有しているのに対し、給水タンクの持ち主は、ビルのオーナーなど、より小さな単位です。
タンクに絵や店の屋号を描くなど、好みを反映した自由なアレンジが施されることがあります。中でも球型のタンクは、たこ焼きやボール、メロンなどに見立ててペイントされがち。
建物の上にあって人目を引くので、宣伝効果もあるのでしょうね」
全国的に普及しているのは、FRP製のパネルタンクだ。
「かつては高価でしたが、日本住宅公団(現・UR都市機構)が採用し、一気に普及しました。現在、街なかで見る給水タンクの多くががFRP製です。
実はタンクの模様からメーカーを見分けられるんです。上下にかまぼこ型の凹みがあれば三菱ケミカルインフラテック、丸が並んでいれば日立化成工業(現・レゾナック)。メーカーごとに模様が違うんです。
受水槽なら近づいてロゴを確認し、答え合わせもできます。見分けられるようになると楽しいですよ」
給水タンクは、身近な場所で気軽に観察できるのもうれしい。
「スーパーに行く道中や通勤途中、会社の窓の外など、建物が多い地域なら必ずと言っていいほど見つかります。
屋上の高置水槽は、高架を走る電車から眺めると、ちょうど目の高さ。車窓からの鑑賞も楽しいですよ。メーカーごとのパネルの模様を覚えて、クイズ感覚で当てるのもおすすめです」
47都道府県の給水塔を紹介
今年(2026年)6月、高水さんは『まちかど給水塔図鑑』(創元社)を出版。
「団地や工場の給水塔、水道局の配水塔、ビルの給水タンクなど、給水塔とその仲間たちを幅広く収載しました。給水塔は全国47都道府県を網羅しています」
写真はすべて高水さんが撮影し、掲載点数の約3割を本書のために撮り下ろした。
「ネット検索のほか、自治体や水道局のホームページ、航空写真などさまざまな方法で訪問先を決めます。
撮影は晴れた日に行うのがマイルール。太陽が正面から当たる時間帯に着くよう行程を組み、複数社の天気予報を確認します。公共交通機関を使うので、移動経路にも気を配っています」
撮影には苦労話も……。
「最北端として旭川の給水塔を紹介する予定でした。Googleストリートビューで確認してから向かったのですが、現地に着くとなんと撤去されていたんです。
そこで急遽向かったのが、図鑑の最初に掲載した小樽の高架水槽。以前から訪れたい場所として地図に印をつけていたので、ギリギリでリカバーできました」
あらためて、給水塔の魅力とは。
「給水塔は、水道局の技術者などが設計していることが多く、設計者の名前が公式の記録に残っていない場合もあります。
一方、高い位置にタンクを置くという条件を満たせば、外観の自由度は高い。地域の文化や歴史、予算などの制約の中から、土地独自の給水塔が生まれている。その面白さをあらためて感じました」
取材・構成=村田あやこ ※記事内の写真はすべて高水湧基さん提供
『散歩の達人』2026年10月号より









