スウェーデンなど北欧のお菓子と心地よいFIKAを提供
FIKAとは、スウェーデン人が大切にしている生活習慣のこと。甘いものとコーヒーをお供に、家族や友人、同僚と会話を楽しむひとときを指す。
その「FIKA」と「FABRIKEN(ファブリーケン/工場)」を組み合わせた店名が示す通り、『FIKAFABRIKEN』は、FIKAを生み出す場所。スウェーデンをはじめ、北欧の魅力的なお菓子と一緒にFIKAを提供している。
思わず、お菓子が陳列されたコーナーに吸い寄せられる。そこに並んでいるのは、かわいらしい見た目でありながら決してきらびやかではない、どちらかと言えば素朴なたたずまいの品々。プリンセスケーキやキャロットケーキ、シナモンロール、クッキーなど、見ているとわくわくする。どれも店内で手作りされたものだという。
聞けば、大学時代スウェーデンに留学していたというオーナーの小原愛さん。生活していた寮の大きなオーブンで、よくケーキを焼いていた。のちに『FIKAFABRIKEN』をオープンしたのは、本場で体験したFIKAを日本にも伝えたいと考えたから。生活習慣という「目に見えない文化」は、言語化して定義づけするよりも感じてもらった方が自然で、「FIKAを体験する場所」としてカフェは最適だった。
スウェーデンの伝統菓子の一つ、プリンセスケーキにうっとり
小原さんが留学していたのは、世界各国から学生が集まるインターナショナルな大学。バックグラウンドがそれぞれ異なるため、「いきなりグループワークを始めても会話がぎこちなくなってしまう」そう。そんな時に有効だった魔法の言葉が「FIKAしよう」。
「カフェテリアで、故郷について、学部でどんな勉強をしているか、休日は何をしているのか話すんです。ほんの15分程度でも一緒にFIKAすることで、お互いの人となりを知ることができて、コミュニケーションがしやすくなります」
そして、FIKAには甘いお菓子が欠かせない。きれいな色のマジパンで覆われたプリンセスケーキは、スウェーデンの伝統的なお菓子で、「いわゆる今流行りのカフェにはあまり置いていなくて、コンディトライと呼ばれるような昔ながらのお店にあります」。マジパンは黄緑色が一般的だが、店舗など、作る人によってオリジナリティが表れる。「以前マルメで食べたプリンセスケーキはピンクだったんです」と、『FIKAFABRIKEN』では気持ちが華やぐピンクが定番になっている。
スポンジ生地の間にラズベリージャムやカスタードクリームを挟み、ふわふわの生クリームをのせ、マジパンで表面を覆う。
「私自身、毎日食べられるような気取らないケーキが好きで、スウェーデンのプリンセスケーキは日本人には少し甘さが強いので、全体がちょうどよくなるように調整しています」
縦にフォークを入れ頬張ると、まずシャリッとしたマジパンの歯触りと、ふわっとした生クリームの心地よさにハッとさせられる。それから、スポンジ生地の朗らかな味わいと口溶けのよさ、生クリームの甘み、ジャムの酸味など、口の中で順番に展開していくのが楽しい。
日本にも「3時のおやつ」のような、甘いものを食べてリラックスする文化がある。FIKAはそれよりもっと自由度が高く、小原さんが言うには「時間も決まっていませんし、細かい定義がありません」。なるほど、元々「3時のおやつ」には夕飯までの間、小腹を満たすために食べる間食の役割だったり、明確に目的があった。けれどもFIKAは、例えば前述したグループワークの時のように、いろんな場面のちょっとした時間にも気軽に行えるのだ。
お気に入りをテイクアウトして自宅でもFIKAしよう
また別の日、自宅でFIKAすることに。コーヒーを淹れ、『FIKAFABRIKEN』で購入したお持ち帰り用のシナモンロールをテーブルに並べた。
かぶりつくとシナモンの芳しさが鼻先に舞い、生地に潜むカルダモンの爽やかな香りがふわり。カルダモンは種のまま仕入れ店内で挽いているので、新鮮な状態で使われ、歯触りもよく、噛んだ瞬間にパッと香り立つ。
焼き菓子も、自宅でFIKAするのにぴったり。種類豊富でどれにしようか迷うのも楽しい。
なかでも気になるのは、スウェーデン王室でも愛飲されているセーデルブレンドの茶葉が練り込まれ、オレンジピールやローズの花びらも入っている紅茶クッキー。ピーナッツバターのコク、きび砂糖の穏やかな甘みが心に染みるピーナツパタークッキーも人気だ。
自宅や職場の引き出しに『FIKAFABRIKEN』のクッキーを忍ばせておけば、より気軽にFIKAできていいかも。のんびりしたい休日はもちろん、忙しい平日にもパッと気持ちを切り替えることができ、きっと集中力がアップするに違いない。日々心地よく過ごすために、スウェーデンで受け継がれてきた暮らしの工夫。ぜひ真似して、取り入れたい。
取材・文・撮影=信藤舞子







