曲線のバーカウンターから禁酒法時代のバーに

実際にバーカウンターは不思議な曲線を描いている。
実際にバーカウンターは不思議な曲線を描いている。

赤羽のすずらん通り商店街から、少し離れた路地にあるバー。カウンター奥の壁には、店を象徴するようなマリリン・モンローのポスターが飾られている。レンガの壁の店内にゆったりしたカントリージャズが流れる空間だ。オープンは2018年。マスターの太田知昭さんに、その経緯を聞いた。

「赤羽のバーで7年くらい働いていました。この店の店長が体調を崩して辞めるタイミングで、たまたま僕が勤めていたバーの共通のお客様から『やってみたら?』と、声をかけていただいたのがきっかけです。そのお話をいただいて、物件を見たら、カウンターがちょっと面白い形だったんです。このカウンターを見て、アメリカのバーの雰囲気を想像して、スピークイージーならはまるんじゃないかと思いました」。
※スピークイージーとはアメリカの禁酒法時代に、看板を出さすに隠れて営業していたバー。

ジャズを奏でるミュージシャンなど、1920年代アメリカの雰囲気を醸し出す写真がある。
ジャズを奏でるミュージシャンなど、1920年代アメリカの雰囲気を醸し出す写真がある。

マリリン・モンローが活躍した華やかな時代

2階の入り口扉にも、マリリン・モンローの姿が。
2階の入り口扉にも、マリリン・モンローの姿が。

1階のシャッターアートにはじまり、入り口の扉や壁など、至る所にマリリン・モンローのピンナップやイラストがある。「カウンターの壁にあるポスターは、僕の部屋に貼ってあったものです。マリリン・モンローが活躍していた華やかな時代が好きで、映画も好きなので、実際に映画関係のお客さまも多いですよ」。

「禁酒法があったアメリカは、アンタッチャブルの時代ですよね」と、ここで今日初めてのお客さんが話しかけて来た。

「ですね。007などの映画も好きです」と太田さん。映画好き、バー好きの共通言語がぐっと心の距離を縮めてくれるようだ。

初めて来てもリラックスできる雰囲気がいい。チャージは300円。
初めて来てもリラックスできる雰囲気がいい。チャージは300円。

試行錯誤して作るオリジナルのカクテル

ハバナモヒート1200円。
ハバナモヒート1200円。

カクテルは試行錯誤して独自の味を作り出している。なかでもハバナモヒートは、缶素材の入れ物で提供するオリジナルの1杯。キューバのハバナクラブというラム酒を2種類使い、通常のモヒートよりもコクがある味に仕上げている。その時々で、常に新しいお酒を入荷しているそうだ。

初夏初恋のソルティドッグ1200円。グラスを縁取る塩も美しい。
初夏初恋のソルティドッグ1200円。グラスを縁取る塩も美しい。

懇意にしているメーカーが作る「初夏初恋(しょかはつこい)」というリキュールもそのひとつ。ジンを原酒に、とちおとめと日光山椒、ハバネロを加えた夏らしい爽やかな味のリキュールだ。口当たりは甘いが、後味はピリリと辛口。このリキュールにグレープフルーツジュースを加えてソルティドッグを作っている。

ウィスキーの誕生日(蒸留日)の星座をラベルに描いたステラーセレクションのウイスキーも、そのラベルの美しさに魅せられて入荷したそう。

ステラーセレクション ピーテッドオークニー2000。乙女座のボトル。1杯2550円。
ステラーセレクション ピーテッドオークニー2000。乙女座のボトル。1杯2550円。

年に一度は海外のベストバーへ勉強に行く

店主の太田知昭さん。かつては目白のバーで働いていた。
店主の太田知昭さん。かつては目白のバーで働いていた。

太田さんは、年に一度はバー巡りを目的に海外に渡航している。「今、業界でもアジアのバーが注目されています。アジアのベストバーで1位になった店に行くなどして、勉強させてもらっています。世界で活躍するバーテンダーは、実は日本人も多いんですよ。そういう方に紹介してもらって、一昨年はシンガポールとタイ、昨年は台湾などに行きました」と太田さん。「旅が好きなんですよ」と、どこか楽しそう。旅や新しいお酒からインスピレーションを受けたオリジナルのカクテルを味わえる。しかもオールドスタイルのバーで。貴重な体験ができるバーだ。

1階入り口の看板。レトロなマルガリータの看板がおしゃれ。
1階入り口の看板。レトロなマルガリータの看板がおしゃれ。
住所:東京都北区赤羽2-19-1 2F/営業時間: 17:00~翌2:00(日・祝は16:00~翌1:00)/定休日:水/アクセス:JR赤羽駅から徒歩4分

取材・分・撮影=新井鏡子