山﨑賀功さん
静岡県在住。幼少時から道路標識のとりこになり、珍しい標識を求めて日本全国へ。撮り集めた5000点以上のコレクションは、HP「道路標識めぐりの旅」にて公開中。著作『ヘンな矢印標識』やSNSなどを通じて、「標識愛好家りん」の名で「異形矢印」の魅力を伝える。
バリエーションが無限に存在。集めがいがある異形矢印
「小さい頃から車好きで、車のおもちゃでよく遊んでいました。おもちゃの中に入っていた道路標識のキットで、初めて標識の存在を知りました。
小学生の頃、両親が運転免許の更新の際に持ち帰った『交通の教則』を読んでところ、道路標識のページに目が留まりました。大人向けの難しい文章ばかりの中、そのページだけ、カラフルなイラストがたくさん載っていて楽しかったんです。
そこから、一気に道路標識に惹かれていきました。車で遊園地に行くときも、一番好きなのは移動中の時間。窓から知らない街の道路標識を眺めるのが好きで、遊園地に着くとがっかりするくらいでした(笑)。
お絵かき帳にも、『こんな標識あったらいいな』と頭の中で思い描いた架空の標識を描いていましたね」
数ある道路標識の中でも、特に山﨑さんの目を引いたのは、「指定方向外進行禁止」の標識だ。
「矢印で示された方向以外の進行を禁じる標識です。出番が多い形は大量生産されていますが、道路の状況などによっては、デフォルトのタイプで表現できないことがあります。
そういう一風変わった特注タイプのものを『異形矢印』と称しています」
多差路やクランク型、Y字型といった複雑な形状の交差点、一方通行の多い駅前ロータリー、河川や踏切などで分離された道路。異形矢印が発生しがちなのは、交差点の形が複雑だったり一方通行が多かったりと、進行方向に迷いそうな道だ。
数多くの情報から要素を抽出し、シンプルなデザインに落とし込む。職人技とも言える情報集約は見どころの一つだ。
「例えば進入禁止や駐車禁止など、通常の標識ではデザインが決まっていることがほとんどです。
ただ、『指定方向外進行禁止』だけ、矢印のパターンが無限と言っていいほど存在するんです。あまりに自由度が高い標識なので、集めがいがあるというのが、一番の魅力ですね」
矢印の向きだけではなく、先端の形状や補助看板といった細かな部分にも地域差が見られる。
「長野や埼玉にはなぜか角が丸い矢印が多く、大阪では矢じりが大きい矢印が目立つ。理由は分からないものの、そういう地域差も見られます。
また矢印の下には補助看板が添えられていることがあります。自転車に乗る人が多い関東圏では『自転車を除く』など、対象車両から地域の交通事情が垣間見えてきます」
これまで約5500種類以上もの異形矢印を撮り集めてきた山﨑さん。いつも取材の際は、SNSやネットで予備調査を重ねた上、現地での撮影へ向かう。
「予備調査では、他の道路標識マニアの方のサイトやSNSをチェックしたり、Googleマップで複雑な形状の交差点を見つけ出したりした上で、ストリートビューで看板の様子を確認し、マップ上に地道にピンを打っていきます。
ある程度数が溜まったら、休みの日を利用して撮影へ向かいます」
一番の勇姿を写真に残したい
「僕が大事にしているのは、現場主義。ストリートビューで見た標識が実際にあるとは限りません。ピンを打った標識がある場所の周辺を歩き回り、実際の道の状況や標識の様子を自分の目で見るようにしています。
何より思うのが、異形矢印のかっこいい姿を写真に収めたい、ということ。雨の日も風の日も日々変わらず立って、進行方向を示しながら健気に交通の秩序を守ってくれているのに、誰にも注目されないまま廃れて生涯を終えるなんて、あまりにもかわいそうです。
一番の勇姿を記録しておきたいと思っています」
取材・構成=村田あやこ ※記事内の写真はすべて山﨑賀功さん提供
『散歩の達人』2026年5月号より








