山下珠さん

1996年生まれ・東京都港区出身。身近な「ときめき」を大切に、街角のソフトクリーム看板やコンクリートに残る犬猫の足あとを写真で記録している。普段は会社員で、ポチという犬を飼っている。

Instagram: @softcream_display

その場の空気を和ませるマスコットキャラ的存在

「昔から、散歩しながら身近にある何気ないものを宝探しのように見つけるのが好きでした。

遠出した際には、観光地でその地域ならではのご当地ファッションに身を包んだペコちゃん人形などを見るのが楽しくて」

高校時代、観光地で撮影したペコちゃん人形。その傍らにはソフトクリームが。
高校時代、観光地で撮影したペコちゃん人形。その傍らにはソフトクリームが。

「観光地にはたいてい、地域の特産物を使ったソフトクリーム看板がありますよね。

お茶の名産地・静岡だったら緑色をだったりと、看板を通して地域性を感じられるのが面白くて、自然と目に留まるようになりました」

ソフトクリームがずらり。牧場が多い熊本は、ユニークな看板の宝庫。
ソフトクリームがずらり。牧場が多い熊本は、ユニークな看板の宝庫。
観光地にて、インパクト満点な金箔付きのソフトクリーム看板(写真=えりな)。
観光地にて、インパクト満点な金箔付きのソフトクリーム看板(写真=えりな)。
開店前のお店のドアからちらり。遠目にも目立つ存在感。
開店前のお店のドアからちらり。遠目にも目立つ存在感。

多種多様な看板にあふれる街なかでも、やわらかなフォルムのソフトクリーム看板は、どこかマスコットキャラクターのような魅力に満ちている。

「無機質な場所でも、ソフトクリーム看板が一つあるだけで空気がふわっと和む気がするんです。

食べ物の中でも、ソフトクリームだけが突出してオブジェ化しているのも面白いですよね。なぜだろうと気になったのが、写真を撮り始めたきっかけです。

遠目でも目立つので『あのお店にはソフトクリームがある』と一目で分かる。アイコンとしても強いですよね」

クリスマス時期、赤い帽子を被ってサンタ化するソフトクリーム看板。
クリスマス時期、赤い帽子を被ってサンタ化するソフトクリーム看板。
「まちゃみ」という名前が付けられた、抹茶味のソフトクリーム看板。
「まちゃみ」という名前が付けられた、抹茶味のソフトクリーム看板。
顔を描かれ、マスコットキャラとしてめでられている。
顔を描かれ、マスコットキャラとしてめでられている。

単なるソフトクリームとしてではなく、店頭を彩るマスコットキャラクターとしてめでられていることもあり、人間味や物語も垣間見える。

「クリスマスにはサンタ帽を被っていたり、お花が飾られていたり。金箔が有名な金沢では金色の折り紙が貼られているものもありました。お店ごとの装飾の工夫も見どころですね。

そのままでも可愛いですが、看板娘のように大切にされている様子が分かると、さらにグッときます。

名前を付けられたり、顔の表情まで書かれたりと、マスコット化していることもあるんです(笑)」

植え込みの中に潜んでいるのは、引退を控えたソフトクリーム看板か。世代交代の瞬間。
植え込みの中に潜んでいるのは、引退を控えたソフトクリーム看板か。世代交代の瞬間。
補修されながら、大事に使われていることが垣間見える。
補修されながら、大事に使われていることが垣間見える。

「現役で使われている姿もいいですが、年季が入った看板が補修されながら使われていたり、ボロボロになって引退寸前でバックヤードに置かれていたりする姿にも、ストーリーを感じてグッときてしまいますね」

地域性が見えてくる

ワッフルとアイスの質感がリアル。ドイツにて。
ワッフルとアイスの質感がリアル。ドイツにて。

その土地の特産品とかけ合わせられられる、オールマイティーな人気者・ソフトクリーム。北海道から沖縄まで、地域になじんだ姿を観察できる。

「イチゴや抹茶など、その地域の特色あふれるフレーバーを楽しめて、かつ手軽に買えるのがソフトクリームの良さ。どこにでもあるので、友だちから出張先で見つけた看板の写真が送られてくることもしょっちゅうです。

ドイツやオランダなど海外を訪れた友だちから、現地で見かけた看板の写真が送られてきたこともありました。ソフトクリームというよりはジェラートのような形。コーンの素材感やアイスの質感など、日本でよく見るものに比べてリアルなのが新鮮でしたね。

ソフトクリームたちが、地域ごとに自分らしい姿で活躍している様子を見るのは楽しいです。これからも各地を巡って、ご当地カラーあふれるソフトクリーム看板を探してみたいですね」

お部屋にもソフトクリーム看板。横の小さなソフトクリームは、かごバッグ。
お部屋にもソフトクリーム看板。横の小さなソフトクリームは、かごバッグ。

ソフトクリーム看板好きが高じ、自宅にもソフトクリーム看板を置いているという山下さん。

「ワンルームに住んでいた頃は、正直邪魔でした(笑)。でもアクセントになるし、部屋の雰囲気が和むので気に入っています。

ソフトクリームを嫌いな人って、ほとんどいないと思うんです。看板が街角にあるだけで、街の雰囲気が和らぎ、『ここはカフェかな』『何か売っているお店なのかな』とポジティブな気持ちにまでなれる。ソフトクリーム看板は、平和の象徴ですよね」

 

取材・構成=村田あやこ ※記事内の写真はすべて山下珠さん提供
『散歩の達人』2026年4月号より