鎌倉野菜の味噌汁で季節を実感『朝食屋COBAKABA』
定食の要の味噌汁が具だくさん。すぐ隣の鎌倉農協連即売所(通称レンバイ)で農家さんと話しながら旬の鎌倉野菜を調達し、トマト、タケノコ、新じゃがなどを惜しげもなく使っている。しかも、九州産大豆と麦で仕込む鹿児島産味噌のやわらかな甘みが野菜それぞれの香味をふんわり抱くよう。県内産平飼い有精卵+150円の卵かけごはんや、頭からかぶりつける無添加のサバの文化干し定食1500円で味わいたい。
7:00〜13:30LO、水休。
☎0467-22-6131
レンバイの片隅で鎌倉の味を見つける『DAILY by LONG TRACK FOODS』
レンバイの食材を用いたホームメイドのデリや焼き菓子がずらり。なかでも鎌倉野菜のピクルスは歯触りシャキシャキ。春夏はベビーコーン、冬はカブやカリフラワー入りで「あっさりした漬け汁なので、最後にトマトを入れてガスパチョ風にしてもおいしいです」とスタッフ。ふわふわしっとりのキャロットケーキや分厚いクッキーサンドアイスも評判だ。
10:00〜17:00、月休(祝の場合は営業)。
☎0467-24-7020
長時間のさんぽでも足が軽いL字型靴下『鎌倉御成靴下商店』
掘っ立て小屋のような小さな店は、L字型靴下1760円〜の専門店。かかとをやさしく包み、締め付け感がなく、ズレにくい。スニーカーソックスですら靴の中で泳がずノンストレスだ。なかには、クッション性をもたせた歩行サポートタイプまである。春夏は冷感素材、秋冬は発熱素材を揃え、年間約50品を国内縫製。一度履いたらやめられない。
10:00〜17:30、火・第1・3水休。
☎0467-23-3788
フォスター建築で歴史に触れる『鎌倉歴史文化交流館』
著名な英国のノーマン・フォスター建築事務所が設計した豪邸が寄贈され、2017年に開館。光る人造大理石の壁と蘇州のアンティークタイルの廊下、一面の窓越しに切岸ややぐらを望む元ダイニングなど、私邸の風情を極力活用。市内で発掘された考古の出土品を多数展示し、企画展も催す。庭園散策もでき、見晴台から海が望める。400円(鎌倉市民は無料)。
10:00〜15:30入館、日・祝休。
☎0467-73-8501
オリジナルライトの灯(あか)りに和む『うつわと灯り threetone』
益子、琉球ガラス、瀬戸物など、各地の工房で見つけた作家の器を幅広く品揃え。さらに「お客さまと作家をつなぐだけじゃなく、自分も作りたくなって」と、大阪のガラス工房に特注し、オリジナルの吹きガラスペンダントライトも制作。色と大小の組み合わせ次第で雰囲気がガラリと変化する。今後さらにモノづくりに力を注ぐ予定だ。
12:00〜16:30、月・火・水休。
☎なし
Instagram:threetone_utuwa
築100年の古民家で憩う『麻葉屋の勝手口 縁側cafe』
店名のとおり、出入りは勝手口から。小屋で注文をして庭に回り、縁側から2間続きの和室に上がれば、店主の生家から持ち込んだ調度品がしっくりなじむ心地よさ。開け放たれた窓の外の、美しき庭の緑に言葉を失う。疲れた体を癒やすのはあんみつセット。店主の栗原祥子さんが毎朝焼く米粉&シナモンの大仏クッキーも添えられてほっこり。
12:00〜17:00ごろ、水不定・月・火休。
☎なし
Instagram:kominka_cafe_kamakura_asabaya_
ローカル酒場で濃密な夜を『山山ふもと』
北鎌倉『喫茶ミンカ』オーナーから託され、カウンター6席の小体の店を切り盛りするのはヤスコさん。味噌はもちろん、時になれずしといった発酵食を手作り。野草を用いるなど、ひとひねり効いた肴のオンパレードが感涙モノ。西日本の地酒や週替わりフルーツ酎ハイが進む。ひと仕事を終えた住民たちのオアシスだ。お通し500円。
18:00〜23:30(金・土は19:00~深夜)、木・日休。
☎なし
Instagram:yamayama_fumoto
早朝でも、ランチに早い時間に着いても、ブランチスポットが点在する鎌倉駅周辺は頼もしい。その一つが『朝食屋COBAKABA』。店主の内堀敬介さんは「鎌倉の日々の暮らしを味わいながら1日をスタートしていただければ」と、鎌倉農家の即売所・レンバイの旬野菜をたっぷり入れた味噌汁を用意。タケノコの季節だな、ソラ豆だな、と季節を実感するのみならず、二十四節気ごとに味噌汁を記録し、季節の巡りも目で楽しめる。しかも、俳句の会を毎月第1木曜に開催。「人もいきもの。朝と夕、夏と冬、その時その時の過ごし方があり、鎌倉はそれに気づける場所ですから」。
朝8時から売り切れ次第終了のレンバイに向かうと、日々、料理人や住民があいさつを交わす牧歌的風景だ。滅多に出回らぬ希少品種や洋野菜も食べ方指南を受ければ財布の紐はゆるくなるばかり。敷地内には食品市場が併設され、『DAILY by LONG TRACK FOODS』で鎌倉野菜のデリや農家手製のドレッシングも発見。うれしい。
路地を伝い歩いていいものを見つけたい
人出にすさまじさを感じるが、脇道や路地は一転してのんびりムード。うっかりすると寺社に出くわし、さすが古都、とうなるばかり。そのなかには日連聖人にぼたもちを捧げたと伝わる小さなぼたもち寺もあって、背後から迫る山から鳥の声が降り注ぎ、草花が日差しをたっぷり浴びていた。堂守さまに言わせると「鎌倉には120寺社もあるそうですよ。ちゃんと数えたことはないのですが」。
横須賀線と江ノ電の線路を渡り、駅西側の御成通りへ。脇道の小さな店の前で靴下が風に揺れている。店長の鈴木かほるさんいわく「鎌倉の人は自分にとって心地いいものを見つける達人」。その言葉通り、今小路へと続く、雑貨店やカフェが連なるしゃれた商店街では、地元客が次々と足を止めていた。
扇ヶ谷(おうぎがやつ)まで足を延ばすと、谷戸の際にお屋敷が点在していた。無量寺谷(むりょうじがやつ)の奥に立つ『鎌倉歴史文化交流館』は展示、フォスター建築もさることながら、見晴台からの眺めが素晴らしい。谷戸と海の狭間に街がギュッとコンパクトにまとまっているのを見て、学芸員の山本みなみさんは「鎌倉時代に京から来た女性の日記に“袋の中にものを入れたように人が住んでいる”と残されています。当時から人が多かったんですね」と笑った。
ここから佐助隧道(ずいどう)を抜けて、銭洗弁財天、佐助稲荷、葛原岡神社を巡るのもいいが、小径(こみち)を戻って鶴岡八幡宮の東側に抜けると『麻葉屋の勝手口古民家 縁側cafe』が開いていた。先ほどの豪邸とは違って、木造家屋のおばあちゃんち風情。縁側席の隣同士で話が弾んだり、子供や犬をあやしたり。鎌倉の日常に紛れ込んだ気分だ。庭ではウメ、アジサイ、サルスベリなどが季節を謳歌するが、「鎌倉には6月、一面にホタルが舞う場所もありますよ」と、店主の栗原祥子さん。扇川(おうぎがわ)や滑川(なめりがわ)など、清流風景も鎌倉の情緒。そこにホタルの乱舞が加わるとは、なんて幻想的だろうか。
日が傾くと街の雰囲気は一変。観光客がたちどころに消え、小町通りは静けさを取り戻して地元時間の幕が開いた。『山山ふもと』は、小町で3〜4軒周遊する酒場ホッパーたちのホットスポット。「小さな酒場がたくさんある京都みたいに、ここをサテライト関西にしようと思って」と話す関西人の店長ヤスコさんの目論見に、居合わせた客が満足げにグラスを傾けた。
そういえば、『鎌倉歴史文化交流館』の山本さんが言ってたっけ。「鎌倉武士は酒宴好き」と。盃として使われた土器(かわらけ)が大量に発掘されているのが何よりの証拠。その気風のせいか、夜が更けるほど人が溜まり、地元情報からアングラ歌謡までさまざまな話題で盛り上がる。見識の広さに舌を巻きつつ、くつろぐ地元の人たちと酌み交わす夜の楽しいこと。鎌倉にまたすぐ来たくなった。
取材・文=林 さゆり 撮影=オカダタカオ
『散歩の達人』2026年6月号より






