シェア型本屋が地域の溜まり場に『ブックスタジオ』
本棚のボックスごとに棚主(店主)が異なるシェア型書店。店番は棚主の当番制で、同時に展示やワークショップが開かれることも。デザインや動画配信を行うBaobab Design Companyの安部啓祐さん、設計事務所であるスタジオテラの石井秀幸さん、野田亜木子さんが共同運営。「世代を超えて交流が生まれているのがうれしいです」。
金は13:30〜18:00、土は12:30〜18:00、金・土のみ営業。
ひと息ついたら思う存分読書して『in the LIBRARY』
店主の北村祐子さんは編集者でもあり、蔵書の多くは仕事の資料。趣味で集めた本もあり、村上春樹コーナーから青春の残り香が。『千駄木 腰塚』のジューシーフランクを挟むホットドッグ700円。大きめサイズのバナナブレッド500円。西早稲田『TWEEDLE COFFEE』によるLIBブレンド500円はコクと苦味がありつつ、マイルドで読書にぴったり。
10:00〜18:00LO、火・水(不定休あり)。
お参り後に訪れればきっと御利益も倍増『池上本門寺 お休み処』
池上本門寺の境内で営まれ、参詣者だけでなく近くに住む家族連れ、年配の常連客など地元の人も通う食堂。「うな丼のうなぎをそばに乗せてみよう」とスタッフの会話から生まれたうなぎとろろそばは、リピーターが多いメニューだ。カツオ出汁の旨味とうなぎの脂が合わさり、いい香り。
11:00〜14:30LO、月休(祝、イベント時は営業)。
☎03-6410-3139
熱々もんじゃでおなかも心も温かい『冨士SON』
眞渋(ましぶ)冨士雄さんが、月島でもんじゃ修業を積んだ息子と始めた店だから『冨士SON』。鉄板で焼けるソースの香りがたまらない。冨士SONもんじゃは、ホタテやアサリ、切りイカをはじめ、海鮮中心の具材を富士山のごとく器に山盛り。焼酎も揃え、八丁味噌を使ったどて煮など、冨士雄さんの妻・紀三江さんお手製のつまみも好評だ。
11:30〜23:00LO、火休(祝の場合は営業)。
☎03-5748-1075
老若男女が訪れる小さな洋菓子店『cano’s』
「池上駅前で約100年続いた『欧風菓子エノモト』で高校時代にバイトしたことが、パティシエを志したきっかけです」と、店主の片岡花乃さん。人気のチーズテリーヌ420円は、濃厚な味わいとなめらかな口溶けが印象的だ。塩味と甘みが絶妙なバランスで混ざり合う塩キャラメルソースのプリン390円。ブレンドコーヒー500円。
12:00〜売り切れ次第終了、不定休(Instagramで要確認)。
池上で知る人ぞ知るピンクの妖精に遭遇『STUDIO BERCHIN』
美容師で、オリジナルキャラクター「べるちん」をモチーフにしたアートも制作する高橋沙絵さん。2024年にオープンしたこの場所は普段は美容室として運営し、さらにアトリエ、ギャラリーも兼ね、展示は誰でも自由に鑑賞することができる。営業スケジュールは不規則だが、シャッターが上がっていればぜひ中へ。もしやべるちんは街の隠れキャラ的存在?
凛(りん)とした富士山の姿に、心まで晴れ渡るよう
昼食前にと、まず立ち寄った『池上会館屋上展望台』。南東の方角に富士山の雪帽子が見え、なんだか清々しい気分だ。思わず両腕を上げて大きく伸びの運動。
屋上から池上本門寺の境内へは、実は直通。正面から、総門をくぐって96段ある石段を上ったほうが御利益は得られるかもしれないが、ちょっと大変だなって時は『池上会館』のエレベーターなんて裏技を使っちゃう。いいの、いいの。きっと仏様は寛大だから許してくれるはず。
本堂(大堂)でお参りをしたら『池上本門寺 お休み処』で腹ごしらえ。ここのうなぎとろろそばは、きれいに並べられたトッピングが一枚の風景画みたい。横たわるうなぎは丹沢山や蛭ヶ岳、大室山の峰々。かまぼこはそこから顔を出す富士山。まるでさっき見た景色でしょ。そして逆さから見ると、とろろと柚子が、たなびく雲間からのぞく太陽にも思える。
呑川沿いには地域の溜まり場がある。『ノミガワスタジオ』は、普段はBaobab Design Companyとスタジオテラの活動拠点になっているが、金・土のみ『ブックスタジオ』として開店。複数の棚主(店主)が出店するシェア型書店で、イベントも開催する。おそらくこの辺の子供たちにとっては、親と先生以外にも、世の中にはいろんな大人がいるんだって知ることができる貴重な空間。「ちょっと面白い場所知ってんだよね、みたいなノリでクラスの友達を連れて来るんでしょうね」。そう言って、運営メンバーの一人、安部啓祐さんはにっこり。
一方、駅ビルに入っている区立の図書館はこぢんまりしてはいるが、蔵書のラインアップや閲覧スペースが工夫されていて人気。
「開館前に人が並んでいて、池上の人は本が好きなんだと思いました」
現役編集者でもある北村祐子さんは、2024年、これをきっかけの一つに『in the LIBRARY』を始めたという。本棚にある本は主に北村さんの私物で、2000年前後のカルチャー誌やエッセー、文芸書とグッとくるタイトルがずらり。店内での閲覧は自由で「たまに昼から閉店までいて、1冊読了していくお客さまもいます(笑)。貸し出しもできますので気軽に声をかけてください」。
人と人との縁がつながり、街を元気にしていく
外に出るとピンクの生命体に遭遇。この「べるちん」は『STUDIOBERCHIN』を根城にする「ピンクの妖精」だって。生みの親の高橋沙絵さんが言うには「大田区には現代アートの拠点が多いそう」で、自身は2024年に池上へ。「この物件を内見しに来た時、不動産屋さんがこの街を面白くしてくれる人に入居してほしかったって言ってくれたんです」とうれしそうだ。まさに「べるちんが引き寄せてくれたご縁」。
駅の南側にも2024年にオープンした新しい風が。『canoʼs』の片岡花乃さんは生まれも育ちも池上の辺りで、創業100年超という老舗ながら、2024年に惜しまれつつ看板を下ろしたかつての池上の顔「欧風菓子 エノモト」で修業時代を過ごしたそう。『canoʼs』名物の「あのモンブラン」について聞くと、「『あの』が何を指すのかは……」と微笑(ほほえみ)つつ指で内緒のポーズ。うん、分かります!
さて、最後にもう一度富士山を拝もうか。駅前通りの『冨士SON』は家族経営の親しみやすい雰囲気がいい。2025年で20周年を迎え、今では娘の夫、孫など一家揃って店を切り盛り。最近は武蔵新田に2店舗目もできたとか。そんな会話で盛り上がっていたら、目の前に運ばれてきた冨士SONもんじゃが迫力ドーン! 全部食べられるかな?
取材・文=信藤舞子 撮影=逢坂 聡
『散歩の達人』2026年2月号より








