お話を聞いたのは……
仏師・城崎侊和(じょうざきこうわ)
福岡県福岡市出身。仏像彫刻を関侊雲氏や紺野侊慶氏に師事し、現在は福岡県飯塚市を中心に仏師として活動している。公式HP:https://jozakikouwa.jp/ Instagram:@kouwajozaki
仏師が独り立ちするまでの修業期間は?
——現代の日本で、「仏師になろう!」と思うきっかけは少ないように感じますが、城崎さんが仏師を志したワケとは?
城崎 学生の時から、骨董品など伝統あるもの見るのが趣味で、仏像もそのひとつでした。大学を出てから一般企業に就職をしましたが、働きながらも「像の世界に携わりたい」という気持ちが消えずにあって、弟子を受け入れてくれる先を見つけたので、門を叩きました。
——28歳で京仏師の流れを組む関侊雲氏の門を叩き、一人前の仏師になるための修業が始まったのですね。修業期間については、師匠ごとや弟子の成長度合いによってさまざまですが、城崎さんはどんな時間を過ごしたのでしょうか。
城崎 うちは、最初の修行期間が3年です。月に数万円の手当があり、住み込みなので衣食住はあります。僕の場合は、その先も師匠に教わりながら理解を深め、技術を学びトータルで11年の修行でしたね
——11年間の修業の末、晴れて一人前の仏師となったということですが、ここでふと気になることが。仏師として独り立ちするには、何かしらの免許や資格は必要なのでしょうか。
城崎 いえ、免許はありません。師匠に認めてもらえるかですね。僕も、すべての仏師を知っているわけではないですが、10年前後という修業を経て独立していらっしゃる方が多いような印象です。
——会社員であれば、入社の翌年には後輩が入ってきて教える側に回ることも多いかと。そう考えると、10年もひたすら学び続けるのは、とても深い世界だということが伝わってきます。
知られざる仏師の1日
——晴れて独立し、地元・福岡県に自身の工房を構えたとうかがいました。仏師の生活はどんな様子なのか、おおよその1日のルーティンを教えてください。
城崎 朝は7時くらいに起きて、8時頃から彫りはじめます。昼食を挟んで、午後もまた17時くらいまで仏像を彫っていますね。夕食のあとはだいたい事務や雑務です。問い合わせメールの対応や、経費の計算、備品の買い出しなどをしています。
——主に日中に彫刻の作業をする理由は何かあるのでしょうか?
城崎 照明を4つほど入れて作業していますが、強い光が単一方向からくると、影によって目指す姿とずれてしまったりします。だから、日の光が大事なんですよ。
——地域の方との交流も意識的にされているとか。
城崎 仏師という職業は、知らない方からすると「何者なんだろう?」と思われますよね。昼間は、トントンカンカン音も出しますし。たくさんの刃物を使う仕事なのできちんとコミュニケーションを取らないと、地域の方が怖がってしまうかもしれないので(笑)。
仏像の値段はどうやって決まる?
——仏像は精緻で丁寧な仕事の上に完成していることが、私たち素人にも伝わってきます。完成までにはどのくらいの期間を要するものなのでしょうか。
城崎 小さなものでも本体だけで1カ月、台座や光背まで入れると2カ月はかかりますね。大きなものになると、半年や1年というものもあります。僕の場合、1年間で3体を完成させているくらいのペースです。
——こうして造られる仏像、基本的には受注製作ということですが、その価格の設定方法も気になります。
城崎 お寺からはもちろん、個人の方からもご依頼はいただきます。ご希望の尊格(※)とサイズをおうかがいし、おおよその価格を提示しながらご予算とすり合わせつつ相談して決めますね。
(※=阿弥陀如来・不動明王・観音菩薩など仏像の種類のこと)
仏師として「造る」以外の仕事も
——日本では、宗教離れが進んでいるとも言われています。仏像の需要も先細りしているように感じますが、制作の依頼はどのようにやってくるのでしょう。
城崎 師匠や知人づてといった、昔ながらのルートももちろんあります。ですが、SNSの広告やホームページなどからの問い合わせも意外と多いんですよ。日本全体での需要は減っているのは確かかもしれませんが、僕はいただいたご依頼に真摯に向き合うだけですね。
——そんな思いで自身の作品制作に取り組みながら、仏像の魅力を伝えることも城崎さんの仕事のひとつ。
城崎 地域の文化センターで、仏像・木彫教室をやっていて、生徒さんは20 人くらいいますね。「仏像」というととっつきにくさを感じる方もいるかもしれませんが、シンプルに「無心で手を動かせるのが楽しい」とか「ものづくりが好き」という方も多いです。
——最後に、やや聞きにくいポイントである「仏師って食っていけるの?」という疑問を、失礼ながら単刀直入に聞かせていただきたいです。
城崎 僕くらいだと、「すごく儲かる」なんてことはありませんが、ひとりで暮らして工房をやっていくくらいは、おかげさまでなんとかなっています。
とはいえ「いつかは弟子をとれるくらいの工房にしたい」と話す城崎さん。その背景には「古くから伝わる仏像の技術と魅力を、未来にもつないでいきたい」という思いがありました。私たちが静かに手を合わせる仏像の背後には、長い修業の時間と、日々の生活を積み重ねる一人の仏師の姿がありました。城崎さんの言葉を知った今、仏像は「ありがたい存在」であると同時に、「誰かの手で、今も造られているもの」として見えてきます。
お寺や博物館を訪れたとき、仏像の向こう側にある時間や人の気配にも、少しだけ思いを巡らせてみたくなりますね。
取材・文=Mr.tsubaking 写真提供=城崎侊和









