アクセス
鉄道:JR・私鉄・地下鉄新宿駅から小田急小田原線急行で約1時間20分の開成駅下車。JR東京駅から東海道新幹線(または東海道本線)・小田急小田原線も利用可。
車:東名高速道路東京ICから同道を利用し、大井松田ICまで約58km。同ICから開成町中心部まで約3km。
江戸期の暮らしぶりを垣間見る、町を代表する名所『あしがり郷 瀬戸屋敷』
町の中心部からやや離れた閑静な地にあり、江戸時代に名主(なぬし/地域の代表)を務めた瀬戸家の屋敷を一般に開放。重厚な主屋を囲むように土蔵や水車、井戸、庭、池が配され、落ち着きある空間が保たれている。ひと息つける『café hacco』や発酵と旬野菜をテーマにしたショップ『アトリエhacco』も併設。
体にやさしいオリジナル発酵メニューが評判『café hacco』
『あしがり郷 瀬戸屋敷』の敷地内にあり、『瀬戸酒造店』の生米麹を用いた甘酒や、地域の季節の果物・野菜などを取り入れた発酵メニューを提供。屋内席のほかテラス席があり、イベント時以外は茅葺き屋根の主屋でも飲食できる。
丹沢山水系の仕込み水でまろやかな味わいに『瀬戸酒造店』
1980年に自家醸造を中断した江戸末期創業の酒蔵が、経営を刷新して2018年に再始動。蔵付き酵母を使用した伝統の「酒田錦」、日本酒の可能性を追求した「セトイチ」、あじさいの花から抽出した酵母を用いた「あしがり郷」の3タイプ22銘柄の日本酒を製造・販売。
少量ながらも品質には自信あり「快晴茶」
都市近郊でありながら、土壌が肥沃で水や気候にも恵まれた土地柄を生かし、質の高いお茶を生産。自慢の煎茶は澄んだ緑色で、渋みを抑え、その分甘さが際立つ。『あしがり郷 瀬戸屋敷』や道の駅『足柄・金太郎のふるさと』などで販売。各50gで煎茶1080円、ほうじ茶648円、玉露1620円、和紅茶1620円。
☎0465-46-7552
気軽にふらっと立ち寄れる茅葺き屋根の着物屋『古民家ガーデン 紋蔵』
築約160年の古民家を活用し、NPO法人ふれあいサークルすずろが運営。各地から寄付された着物をリサイクルして販売(1000~5000円)するほか、レンタル着付け(2000円~、予約優先)にも対応。着物をリメイクしたワンピースやパンツなどもあり、洋服にない色合いや柄が新鮮。
役場前の気さくなパン屋さん『Bakery ASRUN(アスラン)』
代表である佐藤陽平さんの真面目で底抜けに明るい人柄が個性豊かなパンにも反映。イチオシのバゲット324円は北海道本別町の前田農産から取り寄せた小麦「キタノカオリ」を使用。外はカリッ、中はモチモチとした食感で、特有の甘みも素晴らしい。
抜けるような青空の下、パークゴルフに興じたくなる「開成水辺スポーツ公園」
酒匂川の河川敷に広がる開放的な運動施設で、なかでも関東地方初のパークゴルフ場(全3コース27ホール)の人気が高い。料金は3コース利用が330円、2コース220円、1コース110円と格安。クラブやボールも無料で借りられるので、手ぶらでもOKだ。
かまぼこ工場から出来たてが直送される唯一の直売所『佐藤修商店 開成店』
でんぷんや卵白を一切用いず、素材本来の旨味を生かし、卵アレルギーの人でも安心して食べられるよう工夫を重ねたかまぼこ・ちくわ・笹かまぼこ・揚げかまぼこを製造・販売。とりわけ食感と味わいを重視し、厳選した上質なすり身を使用している。個人用から贈答用まで品揃えも充実。
長年にわたる治水の労苦に思いをはせる『酒匂(さかわ)川ふれあい館』
町の北側から東側へと流れ下る流路延長約27kmの酒匂川。灌漑(かんがい)用および生活用として地域に恵みをもらたす一方、急流の暴れ川として幾多の氾濫(はんらん)を繰り返してきた歴史を、パネル展示で紹介。館周辺の土手には治水に尽力した痕跡も多く残るので、あわせて見学を。
閑静な住宅地にあるブルワリー&イタリアン『KAISEI HANDMADE BEER GARAPAGO RACING』
良質な地下水を使用したクラフトビールを醸造。通常8種のビールが用意され、4種飲み比べは1430円。ぶ厚いピザ生地に旬野菜がたっぷりのったガラパゴMIX 1430円(写真1枚目右下)ほか、前菜からパスタや魚・肉料理までメニューも充実。
公開日には憧れの的だった前面展望席に座れる「ロンちゃん」
かつて小田急線で活躍した特急ロマンスカー(3100形)の先頭車両を、開成駅東口を出てすぐの公園に展示。公募により「ロンちゃん」の愛称が付けられた。内部公開日は限られているが、外観だけでも郷愁が色濃く漂う。
●内部通常公開日毎月第2・4日曜、10~15時。神奈川県開成町吉田島4307-2 開成駅前第2公園内 ☎0465-83-2331(開成町役場代表)
東日本最小の町で徒然旅
「開成町は神奈川県内の自治体で面積が最小なんですね」と同町産業振興課商工観光班の川合義夫さんに、あいさつがてら切り出したところ、「ええ、たしかにそうなんですけど、実は東日本で最小なんですよ」と思いがけない答えが返ってきた。「ですので、はたして見て回るだけのスポットがどれだけあるのか、その点が気がかりでして」と少々不安げだ。神奈川県最小どころか、東日本最小だと知り、私の懸念も一気に高まった。「いや、小粒なりにも、その土地ならではのキラリと光るものや素敵な出会いがあれば、なんとかなるだろう」と高をくくり、いざ徒然旅へ出かけた。
川合さんによると、開成町はあじさいの里として知られ、町のマスコットキャラクターもあじさいをモチーフにしているそう。あいにく花期とは真反対のタイミングなのであじさい観賞はあきらめ、まずは町内きっての見どころと教わった『あしがり郷 瀬戸屋敷』を目指した。
驚いたのは町の中心部からさほど離れていないにもかかわらず、屋敷周辺には田園風景が広がっていたこと。「なるほど、こんなのどかな一面もあるんだ」と感心しながら、近くで「快晴茶」を生産する井上哲さんに声をかけると、「たしかに面積は狭いけど、意外に自然豊かで、コンテンツも豊富だから、いろいろ訪ね歩いてみるといいですよ」と背中を押してくれた。
いつしか心細さも消え「田舎モダン」を実感
続いて酒匂川畔の開成水辺スポーツ公園へ足を運び、冬の陽射しに温もりを感じながら、眺めのよい土手の上に立ってみた。ちょこんと姿を見せる富士山をはじめとする山々に見守られていると、ここが東日本最小面積の町であることもすっかり忘れてしまうほどだ。
前出の川合さんによれば、人口増加率は長年にわたり県内市町村でもトップクラスとのこと。裏を返せば、それだけ日常生活を送りやすい住宅事情が揃っているのだろう。そういう視点で平坦な町を探索してみると、たしかに大型スーパーやチェーン店が充実している一方、勢いのある個人店も行く先々で目にする。たとえばパン屋さん一つ取っても、町民それぞれにお気に入りがあるのは、選択肢が豊富な表れと言えそうだ。
狭いながらも、魅力的なスポットがぎゅっと詰まった町巡りがいよいよ終盤を迎えた頃、当初の懸念はどこかへ消え去り、すっかり満足げな心持ちである自分の様子に気づいた。
せっかくなので、町を離れる前に最寄り駅である開成駅を訪れ、駅前の公園に置かれた「ロンちゃん」にお別れのあいさつをするとしよう。懐かしい気分で朱色の車体に近づいたところ、小田急の新型特急ロマンスカーがすぐ脇を颯爽と駆け抜けていった。
【耳よりTOPIC】環境負荷軽減に重きを置いた役場庁舎
町内探策中に目に留まったのが町役場庁舎だ。地上3階建ての端正な外観もさることながら、井水熱や太陽光を活用した省エネ空調システムをはじめ、日射の軽減への工夫、消費電力の削減に向けた徹底した取り組みが図られているそう。国内の庁舎として初めて建築物省エネルギー性能表示制度によるネット・ゼロ・エネルギー・ビルの認証を受けている。
●神奈川県開成町延沢773
取材・文・撮影=横井広海
『散歩の達人』2026年1月号より









