SART【23:50】スカイツリーの消灯をカウントダウン
ライトアップが美しい、東武スカイツリーラインの跨川橋近くの隅田公園からの眺め。スカイツリーは、毎日、時間や行事などに合わせた点灯演出がなされ、東側の民の心を和ませる。24時に消灯し、その後はゲイン塔の上部と天望デッキ下のみが照らされる。
【0:10】人のいない浅草寺は散歩にもってこい
雷門から本堂へと続く仲見世の直線が美しい。閉店後に降りるシャッターの絵柄は浅草ゆかりのものばかり。人が密集する日中は難易度の高いちょうちんの前での記念写真も、夜中ならスムーズに撮れる。
雷門・境内は常時通行可能(本堂は6:00~17:00)。
【1:00】富士塚登頂で運をつけよう
富士山信仰が盛んになった江戸時代に分社された浅草富士浅間神社で、通称「お富士さん」。境内にはミニミニサイズの富士塚があり、五合目からスタートの上り・下り各7段、全14段の登拝ができる。なんなら5周ぐらいまとめて拝んでおきたい。
常時参拝可能。
【01:30】『のみ処 やすらぎ』でホッとやすらぐ
「夜中に上質な刺し身が食べられるなんて幸せ」と常連に愛されるのみ処。店主の平塚保秀さんはすし屋で10年修業して独立。日々、多彩なメニューを揃えるなかでも、魚介には強い思い入れを持つ。故郷・会津の馬刺しや地酒もおすすめ。
17:00~翌3:00、水・木休。
☎080-1055-5268
【02:30】待乳山聖天も、桜橋も、私だけのもの
標高約10mの丘の上に立つ待乳山聖天(まつちやましょうでん)。上りきったら、闇夜で深呼吸。浅草寺の支院の一つ。毎年1月7日の大般若講・大根まつりでは、法要の後、お供えされた大根を調理した風呂吹き大根が御神酒とともに参拝者に授与される。
境内は常時通行可能(本堂は6:00~16:30)。
【03:30】『イサーン』でアローイ(おいしい)なタイ料理をいただきます!
トムヤムクン(S)1380円も、青パパイヤを包丁で手切りするソムタムタイ1480円も、つくり置きは一切なし。シェフのポーンさんが注文後に一から丁寧に手作りするから香りも味わいも鮮烈! 甘・酸・辛が絶妙なバランスで三点倒立。
17:00~翌5:00、無休。
☎03-5246-4613
【05:00】おはよう、浅草! 日の出とともにスカイツリーを眺めよう
言問橋と吾妻橋の間、隅田公園からの眺め。東の空から神々しい日の出が。ご来光でなくとも初日の出でなくとも、ありがたさが増す。空のグラデーションだけでなく、川面に映る景色もまた幻想的。ワンコの散歩をする人、朝ランに励む人。それぞれの朝が始まる。
GOAL【06:00】朝の雷門を見て、浅草、バイバイ!
夜のしっとりした情景から変わり、清々しさで満ちる雷門。朝一番、穏やかな早朝の参拝で一日をスタートさせよう。毎朝6時30分から本堂での勤行「朝座」が行われ、僧侶たちが朗々と読むお経の声が響き渡る。仲見世の多くの店舗は9~10時頃に開店。
見知った街なのにドラマチック
「浅草寺は夜こそ美しいですよ」なんてつぶやきから、にわかにさんぽ隊を結成した、N島、O田、私の3人は23時30分、吾妻橋に集合。日の出まで約6時間、深夜の浅草を味わうことが目的だ。「深夜の」となると俄然、冒険感が湧いてくる。
仮眠をしたか云々(うんぬん)と話していると、24時ぴったりに目の前のスカイツリーが消灯した。真夜中に突入だ。
浅草寺の総門・雷門へと向かう。日中は歩くのに苦労する仲見世も、ゆったり話をしながら歩ける。闇夜にそびえる五重塔や朱塗りの二天門は迫力を増し、タイムトリップ感満載。江戸時代の江戸っ子もこんな風景を見ていたのだろうか。ここでO田が、突如、おみくじを引く。まんまと凶。——待ち人来ず。失(う)せもの出ず……。みくじ掛けに結び、気を改めて散歩を続けよう。
観音裏はもう多くが本日閉店。住宅も多く、私たちも自然に小声になる。路地の先に希望の明かりが見えてきた。『のみ処 やすらぎ』は深夜に満席を迎える。和洋の一品料理、黒板メニューの品数が多く目移りする。
「カウンターのお客さま、ほぼ全員飲食店の方ですね」と店主の平塚さん。『やすらぎ』あるあるだ。
神様も眠る丑(うし)三つ時、待乳山聖天へ詣(もうで)る。闇がいっそう深くなった感じがする。おや、境内の一角では「お下がり大根」が配布されているではないか。待乳山聖天にお供えした大根を自由に頂戴できるのだ。ありがたや(しらすおろし、豆乳味噌汁で味わいました)。
大根を背負い、隅田川へ。1人なら怖気づく未明の川沿いも、さんぽ隊なら心強い。曲線的な桜橋は一晩中ライトアップされていて、これまた美景である。
午前3時。夜が明ける前に、浅草2丁目にある深夜の味方『イサーン』へ駆け込む。365日無休、朝5時まで営業という超人的な店である。「この時間帯に本格的なタイ料理を味わえるの!?」とN島、歓喜。「台風の時でも朝5時まで開けてるよ。遠くから来てくれる人もいるから、閉まってたら悪いじゃない」と店主の山田さんはすごいことをさらりと言う。
店を出ると、うっすら空が白んできた。冒険が終わるようでちょっと寂しい。せっかくなら、隅田公園から広い空を眺めよう。みるみる空の色が塗り替えられ、生まれたての朝日の圧倒的な神々しさで、新しい朝が始まった。見知った街、いつもと同じはずの一日がこれほどドラマチックに感じられるとは。歩ききった充足感にと、浅草の未体験ゾーンを踏破した満足感に包まれた。
取材・文=沼 由美子 撮影=オカダタカオ
『散歩の達人』2025年12月号より







