アクセス
鉄道:つくばエクスプレス秋葉原駅から同線で約45分のつくば駅下車。つくバス北部シャトル・桜川市バスを乗り継ぎ、町中心部まで約1時間20分。
車:三郷JCTから常磐自動車道を利用し、谷田部ICまで約30km。同ICから町中心部まで約33km。土浦北ICも利用可。
町並み巡り前に予習がてら立ち寄りたい『真壁伝承館 歴史資料館』
真壁陣屋(江戸時代の役所)跡に立ち、ホールや図書館などを併設した『真壁伝承館』。併設施設の一つである『歴史資料館』では地域が歩んだ歴史をひもときながら、真壁の町並みの成り立ちを中心に展示・解説している。戦国時代に当地を治めた真壁家伝来の「猪絵旗指物(いのししえはたさしもの)」(複製品)も一見の価値ありだ。
いにしえの町割が今なお受け継がれる「真壁の町並み」
真壁城(後述)の城下町に起源をもつ真壁の町並み。敵の直進を阻むために設けられた折れ曲がった道やT字路が今も残り、戦国時代の面影を感じられる。町割がほぼ完成した江戸初期以降は物流の拠点として発展。また真壁石と呼ばれるみかげ石の産地であることから、明治期には石材業も興(おこ)り、町内では現在も多くの石材店を見かける。かつての城下町一帯には見世蔵(みせぐら)や木造店舗などの歴史的建造物が現存し、そのうち101棟が国の登録有形文化財に。2010年には地区中心部が茨城県初の国の重要伝統的建造物群保存地区に選定され、地域住民らの尽力により、情緒ある町並みが保たれている。
長期にわたり発掘調査が進む国指定史跡「真壁城跡」
平安時代末期から戦国時代にかけ、400年以上にわたりこの地を治めた真壁氏の居城跡。筑波山麓の小高い丘の上に造られた平城で、調査の結果、複数回にわたる造り替えの跡や池跡、茶道具、鉄砲玉も発見された。土塁や堀の復元整備が進む一方、地道な発掘調査も続いている。町並み散策と兼ねて訪れたくなるスポットだ。
要予約で酒蔵見学もOK『西岡本店』
代表銘柄・花の井で知られる天明2年(1782)創業の日本酒蔵元。地元産米を原料に筑波山系の伏流水で仕込んだ酒は全量純米にこだわる。地元産米と自家製米麹のみで作った食べるあまざけ430円や植物由来の原料に特化した米の飲むヨーグルト540円は、糖類・保存料ともに完全無添加。
職人の仕事ぶりが随所に光る『つくばぷりん ふじ屋』
最初はやや固めで、次にとろとろ食感が口の中に広がるゴールドぷりん399円は、奥久慈卵の卵黄や筑波山近郊の牛乳を使用した看板商品。焼き芋475円、和栗572円、さしま茶475円など県産食材の魅力を、味わい・食感とも存分に引き出した各種ぷりんも評判で、職人の技に思わず唸(うな)る。
一服しながら気になるおかきをポリポリ『おかきカフェ』
国産もち米を主原料としたおかきを自社工場で製造する藤永製菓が運営。おかきパフェ450円はじめ、ドリンクメニューも充実し、寒い季節は特製おしるこ450円が人気だ。販売スペースには濃いしょうゆ味1袋298円を筆頭に、バラエティ豊かな50種ものおかきが揃う。
レストランを備えたサイクリストにやさしい宿『見晴らしの丘真壁 うり坊』
眺めのよい高台にあり、雰囲気の異なる本館、大正館、サイクル棟からなる。併設の『Cafe restaurant うりうり』(11時~14時LO)は外来利用もでき、地元産の自然薯、長芋、大和芋を使った山芋料理のほか、イタリアンやエスニック料理なども提供。
サイクリングがてら気になるスポットにも寄り道「つくば霞ヶ浦りんりんロード」
常磐線土浦駅と水戸線岩瀬駅を結んでいた筑波鉄道の廃線跡と、霞ヶ浦を周回する湖岸道路をつないだ約180kmのサイクリングコース。コース北端に隣接する岩瀬駅前の『高砂旅館』(☎0296-75-2165)では、桜川市観光協会(要電話予約)および広域レンタサイクル(要ネット予約)の自転車貸し出しに対応している。真壁休憩所まで約10km。
おびただしい数のはにわに圧倒される珍スポット『はにわの西浦』
道路際から店舗2階まで、数えきれないほどの大小はにわがずらり。元々陶器の鉢などを手がけていた父・山中征一さんが始めた店を、現在は2代目の誠さんが継いでいる。割れにくい地元の土を使った作品は、はにわのほか土器・鉢・オブジェなど多彩だ。価格も400円~300万円と幅広い。
夜の町並みを行灯(あんどん)が照らす
2011年の東日本大震災により、登録有形文化財を中心に甚大な被害が生じた真壁の町並み。沈みがちな町に元気を取り戻そうと結成されたのが真壁切り絵の会だ。切り絵作家竹蓋(たけふた)年男氏の指導を受けた会員が手がけた切り絵作品を、30基ある行灯に毎月差し込み、地域の季節の移ろいを表現。切り絵特有のコントラストがほのかな灯りに似合う。
住民の生活の場に風情ある建物が溶け込む
「こちらの施設に来られた方から、『真壁の町並みはどこですか』と尋ねられたことが何度かあるんですよ」と困惑気味に教えてくれたのは、『真壁伝承館 歴史資料館』でお目にかかった桜川市教育委員会文化財課の寺﨑大貴課長だ。施設を含む一帯が国の重要伝統的建造物群保存地区であり、おそらく登録有形文化財をいくつも目にしていたはずだが、京都や角館(かくのだて)、金沢、萩などの町並みを思い浮かべた方々は、すでに町並みの中心にいることに気づかなかったらしい。試しに界隈(かいわい)を歩いてみると、たしかに行く先々で歴史的建造物に出合うものの、観光地然とした雰囲気は乏しく、住民の生活の場に風情ある建物が溶け込んでいる印象が強い。
そんな道すがら声をかけたのが『ムラカミ書店』の村上頼子さんで、東日本大震災による被災で町全体が意気消沈するなか、できることから始めようと「真壁切り絵の会」を立ち上げ、町なかに行灯(あんどん)を設置すべく尽力した方だと知った。「登録有形文化財は大半が耐震構造ではなかったため、屋根瓦が落ち、壁は崩れ、石蔵が倒壊するなど、相当な被害があったんです」と村上さん。不幸中の幸いだったのは震災前年の2010年に重要伝統的建造物群保存地区に選定されていたため、修復に際して助成を受けることができ、多くの歴史的建造物を残すのに役立てられたそう。昼行灯ではせっかくの切り絵の魅力も半減すると感じ、「日が暮れてからまた来ます」と言い残してその場を離れた。
サイクリストたちが笑顔で集うスポットも
重要伝統的建造物群保存地区と真壁城跡の間を貫いて南北に延びるのが「つくば霞ヶ浦りんりんロード」だ。真壁休憩所には旧筑波鉄道で使用されたホームが残され、真壁みかげ石を用いたサイクルラックも備わっている。思い返せば、『つくばぷりん ふじ屋』の店頭や『おかきカフェ』の店内でもくつろぐサイクリストを見かけたし、『見晴らしの丘真壁 うり坊』に至っては「サイクリストにやさしい宿」が謳(うた)い文句であるなど、自転車で気軽に立ち寄りやすい環境が整っているのもこの地の特徴だ。一方、真壁休憩所で行き交う人の様子を観察していると、地域住民とおぼしき方の姿も多く見かけた。平坦で走りやすいサイクリングロードは地元の方にとっても重宝する生活の道なのだろう。
さて、暗くなるのを待って再度町なかに足を運ぶと、あちらこちらで行灯が瞬き、季節の一コマをモチーフにした切り絵が見事に浮かび上がっていた。時節柄、多くの人が行き交うような喧噪(けんそう)はなかったが、その分おごそかな心持ちになる。自分だけの特別な時間を過ごしていると、建物から出てきた女性が「こんばんは」と笑顔で声をかけてくれ、厳粛な気分がホッと緩んだ。
【耳よりTOPIC】辛さのなかに香りが際立つ福来(ふくれ)むすび
筑波山麓に自生する福来みかん。国登録有形文化財の宿『伊勢屋旅館』(☎0296-55-0176)では、香りのよい福来みかんの皮を天日で干し、その粉末を加えた七味唐辛子を使った福来むすびを考案。地元産・羽鳥米にしょうゆと七味を加え、ごま油で香ばしく焼き上げた手づくりの味だ。辛さだけでなく、鼻を抜ける風味もいい。
取材・文・撮影=横井広海
『散歩の達人』2025年12月号より








