無邪気でたくましい姿が胸を打つ『ねこかつ川越店』【川越】
2013年開店の『ねこかつ 川越店』では、現在約40匹が暮らしている。だが、その数はほんのひと握り。「保護した子は隔離してワクチン接種などの医療処置を行います。そのシェルターに約70匹と、預かりボランティアさんたちが各家庭で世話している約80匹、日進店に約20匹で、計200匹以上保護しています」と、店長の萩原夏美さん。
集まる猫は基本的に野良猫。「近所で猫が産まれた」「地域に増えて困っている」などの相談に対応したり、地方の保健所からも救出する。多頭飼育崩壊や高齢者が飼いきれなくなった猫の受け入れも増えたという。「保健所でも譲渡は行っていますが行きにくさがありますよね。なので、まずはうちのような場所を利用してもらえたら。来店して遊んでもらうだけでも猫たちの助けになりますし」。
そんな同店の特徴は、他店には多い入店年齢制限がなく未就学児も滞在できること。小さい頃から猫好きになってほしい、お迎え希望なら家族全員で接してほしいとの思いからだ。多数の人が出入りすることで猫たちは新しい家に慣れるスピードも早いという。
また、保健所で残されがちな全盲や下半身麻痺などのハンディキャップのある猫も多く引き受けている。そういう猫と接する機会があるのは貴重だ。「ハンデといっても+αのお世話が必要なだけで、育て方は他の子と変わりません。痛々しいとか、見た目を気にしているのは人間だけで、猫は全く気にしてない。人間よりも遥かに適応能力は高いんです」。無邪気でたくましい姿には癒やし以上のものを感じずにはいられない。
毎週、外部で譲渡会も行い、年間400〜500匹の譲渡数を誇る『ねこかつ』。「ここにいるほうが幸せでは? と、お迎えを迷う方もいます。お言葉はうれしいのですが、この子たちが“ずっとのおうち”に行けるのが私たちの目的。その分また、1匹でも多く保護することができますから」。
『ねこかつ 川越店』店舗詳細
猫との暮らしを一軒家で疑似体験『NECOT(ネコット) COFFEE HOUSE』【葛西】
築45年の一軒家。一見、保護猫カフェには見えない『NECOT COFFEE HOUSE』は、2014年に佐藤亜紀子さんの自宅で愛猫13匹と共にスタートした。
「15年以上前、周辺は野良猫が多くて猫ロードと呼ばれていました。自費で避妊手術をして世話する方がいたのですが、当時は地域猫への意識が低くて。その活動をサポートできればと思い立ったのがきっかけです」
かつてイギリスで人が集い語らう社交場の役割を果たした“COFFEE HOUSE”。それを店名にしたとおり、猫が好きな人、関わる人の情報交換や憩いの場になっている。
現在、在籍する猫は8歳以上のシニアを中心に42匹。保護せざるを得ない野良猫、多頭飼育崩壊の現場や悪徳ブリーダーから救い出した猫もいる。
その暮らしの場が民家であることも大きな魅力。店舗空間は3室で特別広いわけではないが、ほどよく生活感があり、訪れる者も動けなくする居心地のよさ。入店人数を絞り、滞在時間も90分ベースの完全予約制だ。「来てくださった方には強制的にゆっくりしてもらいたくて。猫も落ち着くのか『ここは猫が懐っこくて、誰かの家みたいにくつろげる』とよく言われます」。
また、猫を飼うための工夫や注意点なども参考にしやすい。「啓蒙というと大げさですが、少しでも正しい飼い方を知ってもらえる場になることも目的なんです」。
大勢の猫たちと暮らす保護猫カフェは、当然別れも多い。だが、看取りを重ねることで、感じたことがあると佐藤さん。「死が怖くなくなったわけではないですが、生まれて生きて死んでいくという一連の流れを受け入れられるようになりました」。
では最終目標は?と問えば、「保護猫カフェの終焉」と予想外の答え。「それは捨てる人、捨てられる猫がいなくなるということです。この業態がなくなることが一番だと思っています」。いつか来るその日を願って。
『NECOT COFFEE HOUSE』店舗詳細
取材・文=下里康子 撮影=鈴木奈保子
『散歩の達人』2024年12月号より