薬師如来は毎月8日

東京都国分寺市「国分寺」の薬師如来像。
東京都国分寺市「国分寺」の薬師如来像。

私たちの生活スタイルを一変させ、たくさんの人が苦しんできたコロナ禍。

「アマビエ」なんていう妖怪も注目を集めましたが、仏教の世界で疫病退散の祈願といえば「薬師如来」です。

手に持った薬壺(やっこ)には、万病を治す薬が入っていて、疫病退散の他にも古くから病気平癒の御利益もあるとされて来ました。

日本に疫病が大流行した西暦700年代。聖武天皇は、疫病をはじめとしたさまざまな社会不安を払拭すべく、全国に「国分寺」を作る命令を出します。

そうして各地に作られた国分寺の御本尊の多くも「薬師如来」だったほど、古くからその御利益は信じられてきたのです。

そんな薬師如来の縁日は毎月8日です。

「日本の古い美術、興味はあるけど知識がないから、博物館やお寺に行くハードルたかいなぁ」と感じている方いませんか?今回は、そんな方に向けて「超簡単」に、仏像の見方をご紹介。これを知って出かけると、博物館やお寺にお出かけするハードルが一気に下がります!
これまでこの連載で、仏像に著された髪型や印(手のポーズ)などが、それぞれ何を意味するのかなどをご紹介してきました。今回は、仏像が持っている「道具」について深掘りながらも超カンタンに解説!なお、これらを仏教では「持物(じもつ)」と呼びます。それぞれの意味を知ることで、お寺巡りがもっと深みのある楽しいものになるはずです!

阿弥陀如来は毎月15日

東京都目黒区「蟠龍寺」の阿弥陀如来像。
東京都目黒区「蟠龍寺」の阿弥陀如来像。

今から1000年ほど前、世界は急激に荒廃して滅びていくという「末法思想」の考えが広まりました。

そうなると人々は、この世での幸せではなくあの世での幸せを願うようになります。

そこで一気に人気を得たのが、極楽浄土の教主(オーナーみたいなもの)である「阿弥陀如来」です。

阿弥陀如来に、「この世が終わったら、極楽浄土で過ごさせてください!」という祈願をする人が多くなったのです。

現代でも、多くのお寺の御本尊になっている阿弥陀如来、毎月15日に思いを馳せてみてはいかがでしょう。

閻魔大王は毎月16日

福岡県「海元寺」の閻魔大王像。
福岡県「海元寺」の閻魔大王像。

あの世の裁判官としておなじみ「閻魔大王」の縁日は毎月16日です(1日も縁日としているところもあります)。

中でも1月と7月の16日は、地獄で休みなく働く獄卒(鬼)たちの休日でもあります。

となると、鬼に苦しめられていた亡者もその日だけは穏やかに過ごす1日。

その日は、閻魔大王を祀るお寺でも、ご開帳が行われますので、私たちは、閻魔大王の縁日に「真面目に生きていきますので、どうか地獄に落とさないでください」と手を合わせてみましょう。

それが、自分自身への宣言となり、律した生活をするきっかけにもなりますよ!

観音菩薩は毎月18日

長野県「仏法紹隆寺」の十一面観音像。
長野県「仏法紹隆寺」の十一面観音像。

その名前が表す通り、私たちの声(音)を良く観察して助けを出してくれるのが、観音菩薩。

しかも、どんな人でも助けられるように、顔が増えたり(十一面観音)、手が増えたり(千手観音)と変身までするスーパーヒーローのような存在です。

仏の格としては、悟りを得た「如来」の方が菩薩より上位ではありますが、まだ悟りに向けての修行中である菩薩は、如来以上に私たちに近い存在であるため、古くから親しまれて来ました。

毎月18日には、観音菩薩を祀る各寺院で、秘仏が公開されたりしますので、お出かけしてみては?

御朱印集めを趣味にする人も多く、注目が集まっている寺社仏閣巡り。しかし、信仰や伝統に気圧されてハードルが高いと感じている方もいるのではないでしょうか。そんな方のために、まずはお寺に安置されている仏像の超簡単な見方をご紹介します。初回の【如来編】に続いて、第2弾となる今回は【菩薩編】をお届け!

弘法大師は毎月21日

熊本県「日輪寺」の弘法大師像。
熊本県「日輪寺」の弘法大師像。

実在したお坊さんである弘法大師(空海)の命日は、3月21日(旧暦)です。

10年かかるとされる経典を、わずか3カ月で体得したり、インターネットや英和辞典もない時代に、3カ国語を話したりする、稀代の天才だった空海。

仏教に興味のない現代人でもその名前は知っているとおり、日本一ともいえるスター僧侶です。

そんな空海の縁日は命日でもある毎月21日。

東京近郊では、西新井大師や川崎大師などで、21日には法要が行われ、参道にはたくさんの露店が並びます。

八幡神は毎月23日

東京都渋谷区「金王八幡宮」。
東京都渋谷区「金王八幡宮」。

11万社あると言われる日本の神社の中で最も数が多い八幡宮。その御祭神となっているのが八幡神(=応神天皇)です。

応神天皇は弓矢の技術に優れていたことから、後の時代には戦(いくさ)の勝利を祈願する神様として武将たちの尊崇を集めました。

また、神社に祀られる神様でありながら、東大寺の奈良の大仏が建立される際に、「協力する」という託宣(お告げ)が出るなど、仏教にも近い存在です。

別々の宗教を一緒くたにする、実に日本っぽい神様と言えるでしょう。

そんな八幡神の縁日は毎月23日です。

菅原道真は毎月25日

東京都立川市「阿豆佐味天神社」。
東京都立川市「阿豆佐味天神社」。

学問の神様として知られる菅原道真は、「天満宮」「天神」の御祭神です。

そんな菅原道真は、6月25日生まれで命日が2月25日であることから、縁日は毎月25日になっています。

道真は政治的策略によって、京都から九州の太宰府に飛ばされ、後に亡くなりました。

道真亡き後、朝廷の中心部に雷が落ち、要人たちに多くの死傷者が。さらに時の天皇も崩御(亡くなること)してしまいます。

そこから、道真は日本三大怨霊として恐れられますが、学者として優秀であった道真を天神様として手厚く祀ることで、強大な負のエネルギーをプラスに変えたのです。

そんな、パワフルな道真が祀られる天満宮、25日に参拝してみてはいかがでしょう。

大日如来・不動明王は毎月28日

長野県「平福寺」の大日如来像。
長野県「平福寺」の大日如来像。

真言宗において最高位である「大日如来」の縁日は毎月28日。

大日如来は「宇宙そのもの」を表し、私たちのどんな行いも全て大日如来の中での出来事だと考えられています。

最高位なので、御利益はなんでも!まさに、全方位型の仏と言えるでしょう。

如来は悟りを開いているため、服装は簡素な場合がほとんどですが、大日如来は特別に冠や首飾りをつけるなど煌(きら)びやか。

見た目にも特別感あふれる如来なので、その姿を是非拝観してみてください!

また、不動明王は大日如来の化身であるとされるため、縁日は同じく毎月28日になっています。

 

縁日は、楽しい露店だけでなく、普段は見られない仏像が拝観できたり、あまり聞く機会のないお坊さんや神主さんの話が聞けたりします。

学生時代は、お坊さんの話ってつまらないって思ったこともありましたが、今きくと「ストレス社会の乗りこなし方」みたいな話もいっぱい入ってて、いいデトックスにもなりますよ!

「次の休み、特に予定ないなぁ」なんて思ったら縁日になっている神仏が祀られる神社仏閣に出かけてみては?

写真・文=Mr.tsubaking