通常のフードホールやフードコートと異なるのは「固定テナント料なし、什器等の初期費用なし」であること。代表の嶋﨑秀泰さんは「地方のお店やメーカーなどが『東京で店を出したい』と思っても、金銭面や環境等の要因で諦めざるを得ないことが多い。そんな人たちが純粋に商品のおいしさを追求し、広く展開していけるような環境を実現させるべく、この業態にたどりつきました」と語る。
入居テナントの5店舗はそれぞれが個性的。1階はハーブティーが豊富なカフェとチーズタルト専門店。2階はナポリピザスタンドと、ベーグルショップ。3階は、アジフライの専門店だ。
「それぞれの店舗に、オープンするに至ったストーリーがあります」。
例えば、アジフライ専門店『あじふらい てしお』で厨房に立つのは元寿司職人の店主。都内の寿司店などで修業し、あなご屋『銀座ひらい』で店長を務めた店主の「新しいことにチャレンジしたい」という思いを実現させたのがこの店舗だ。
目指すのは、地域密着で地元の人に愛されるランドマークのような場所。新業態の施設ということもあり、一見入りづらいように思えるが「最近では地元の常連さんも増えてきました」と言う。大事にするのは、お客さんと「直接会話すること」。各店舗がなぜここでオープンしたのか、どういうストーリーがあるのかを話すと、「応援するよ!」と通ってくれるお客さんが徐々に増えているそうだ。
各店の連携体制もこの施設の大きな魅力。例えば、2階のベーグルショップでベーグルを購入すると「一緒に1階のお店のドリンクはいかがですか」と、別店舗の商品をその場で注文することができる。施設内はどこの席に座ってもOKで、屋上のテラスでも飲食が楽しめる。各店舗で注文した商品も、一緒に運んできてくれるのだ。
ちょっとした休憩でふらっと入るもよし、がっつりごはんを楽しむのもよし。もちろん、入ってから決めるのもアリだ。この施設が新たな「門前仲町のランドマーク」になる日も近いのでは。
文・撮影=近藤かおり(『散歩の達人』編集部)
『散歩の達人』2024年7月号より