豊富な種類が魅力の『八州屋かまぼこ店』のできたておでん

『八州屋かまぼこ店』は東急東横線の妙蓮寺駅前で営業するおでん種専門店だ。昭和49年(1974)に創業し、50年の歴史を誇る。

駅前という立地のため客足が絶えないが、人気の理由はそれだけではない。長年技を磨いてきた店主の練り物の味は素晴らしく、おかみさんのぬくもりある接客と相まって身も心もあたたまる。

今回は店頭で調理したできたておでんに注目したい。お店の向かって左側、8つに仕切られた鍋で調理している。

深い褐色の汁にはさまざまな種類のおでん種が並んでいる。煮えにくいちくわぶなどもしっかり味が染みていそうだ。おそらくはあらかじめ下茹でしているのだろう。

おでん種専門店になじみのない方は、何を選んでよいかわからない場合もあるだろう。店頭には価格表が貼られているので、じっくり考えてからオーダーできる。もちろんおかみさんに聞けば親切に教えてくれるので、会話を楽しみながら選んでもいい。

全体の味を知りたいのなら、盛り合わせを購入してもいいだろう。たくさんの種類が入っており、汁もたっぷり詰まっている。筆者もこちらの商品を手に入れた。

14種類ものおでん種が詰まった、『八州屋』のおでん盛り合わせ

帰宅したら、さっそくおでんを楽しんでみる。盛り合わせには14種類のおでん種が入っていた。

時計回りに12時から、がんも、ちくわぶ、焼きちくわ、こんぶ、生あげ、しらたき、こんにゃく、大根、えび天、さつま揚げ、ボール(中央上)、うずら玉子巻(中央右)、つみれ(中央左)、ごぼう巻(中央下)。

袋の口はしっかり輪ゴムで止められ、さらに手提げ袋に入れてくれる。こぼれたり破れたりする心配はないが、丁寧に持ち帰ろう。希望をすれば練りからしもつけてくれる。

おでん汁は色は濃いが、口当たりがよくまろやかだ。複数のおでん種から旨味が溶け込んで、ほんのり甘みがある。

ここからは1品ずつおでん種を紹介していこう。

大根は輪切りを3分の1にした形をしているが、分厚く食べ応えがある。中心まで褐色に染まり、まろやかな旨味が口いっぱいに広がる。

生あげも厚めでたっぷりおでん汁を吸い込んでいる。大豆のほのかな甘みと油の香ばしさがおでんの旨味と見事に調和している。

焼きちくわは青森県の丸石沼田商店のものだ。牡丹ちくわと呼ばれるもので、表面に丸い焼き色がつくことから名前がついたという。じっくり煮てもすり身の旨味がしっかり残っている。

がんもは半分に切られており、ほかのおでん種をいろいろ食べたい方にはちょうどよい分量となっている。こちらも汁がじゅわっとあふれ、噛み締めるごとに幸せな気分になる。豆腐製品は原料は同じなのに、異なる味わいとなるのが不思議だ。

しらたきはボリューム感があり、結び目も大きいので汁をよく抱き込んでいる。おでんの味を邪魔せず、むしろおいしく引き立てている。

ちくわぶはくたくたになる一歩手前のもっちりとした口当たりとなっている。神奈川県のちくわぶメーカー、「いわて屋」のものを使用している。

こんにゃくは小ぶりながら魅力がぎゅっと詰まっている。味がよく染みており、ぷりぷりとした食感も残っている。

えび天は、そのまま食べるのとは異なる魅力がある。すり身がおでん汁の旨味と溶け合って、非常に味わい深い。海老とネギの色合いと魚を模した形状は、眺めているだけでも幸せな気分になる。

うずら玉子巻はできたておでんで最も値段が高い種だ。それでも130円というお手頃価格となっている。うずら玉子は上下に2個入っており、クリーミーな黄身の味わいを存分に堪能できる。

さつまあげは具材が入っていないシンプルなおでん種だ。そのぶん『八州屋』の練り物のおいしさを味わうことができる。ほどよい弾力を残しており、噛めば噛むほど旨味がにじみ出る。

ごぼう巻はひと口サイズで食べやすいが、滋味深い味わいは健在だ。ゴボウはほどよい柔らかさで、すり身やおでん汁と見事に調和する。

つみれやボールは小さく数も少ないが、それぞれの個性がしっかり感じられる。すり身を茹でてつくるつみれ、揚げてつくるボール、どちらも味わい深い。おでんの旨味を引き出す役割も担っている。

こんぶはとろっとした舌触りが心地よく、旨味もしっかり残している。地味ではあるが、なくてはならない存在だ。

持ち帰って温めるだけで本格的な味を楽しめる『八州屋かまぼこ店』のできたておでん。非常に手軽なので、妙蓮寺にお越しの際はぜひ購入していただきたい。

『八州屋かまぼこ店』の基本情報

『八州屋かまぼこ店』
〒222-0011 神奈川県横浜市港北区菊名1-4-10
045-432-5745
定休日:日
営業時間:11:00~19:00

取材・文・撮影=東京おでんだね