白い暖簾に「あおき」。京急蒲田駅の西口からすぐ、路地にある。
白い暖簾に「あおき」。京急蒲田駅の西口からすぐ、路地にある。

鹿児島特有の麦味噌が香る甘めのとん汁

店主の丸山正一さん。毎日、厨房に入っているそう。
店主の丸山正一さん。毎日、厨房に入っているそう。

店主の丸山正一さんの故郷も鹿児島。店名に冠されたとん汁も、鹿児島特有の麦味噌だ。「生まれはどこですか? 東北の人には、この味噌汁は甘いみたいですよ」と丸山さん。なるほど甘めの白味噌だが、発酵食品特有の香りと旨みが口の中に広がり滋味深い。定食のとん汁には、素揚げしたピーマンとナス、かぼちゃの薄切りが乗り、まるでスープカレーのような見た目。全てのメニューには、お椀サイズのとん汁がつくが、とん汁(大)を注文すれば、この丼サイズのとん汁が楽しめる。揚げ野菜の下にも、にんじん、大根、ごぼうと具沢山。豚肉も甘味が強く、塩味は控えめ。軽めのランチなら、このとん汁とご飯、サラダだけでも十分満たされる。

とんかつの名店「とんかつ檍」の新業態店

カタロース生姜焼き(250g)定食。とん汁がついて1500円。
カタロース生姜焼き(250g)定食。とん汁がついて1500円。

丸山さんは、2010年に蒲田で「とんかつ檍」を立ち上げ、現在は全国で10数店舗を展開させるに至っている。蒲田でとんかつと言えば、必ず名前が上がる名店になった。味の決め手はなんといっても ブランド牛・林SPFポークの底力。脂身の甘みと肉の柔らかさが抜群で、とんかつでは、そのSPFポークの持ち味を最大限に生かした揚げ方をしているそう。『とん汁と玄米の店 檍食堂』のとん汁の肉もしょうが焼きも、このSPFポークだ。

この『檍食堂』は、2022年8月末に丸山さんが満を時してオープンさせた食堂だ。

「『とんかつ檍』では12年やっていました。林SPFポークは『とんかつ檍』開業当時、もう2010年頃に出合った豚で、本当に脂の甘みが強いんですよ。うちの豚肉は全て林SPFポークです。メンチカツも林SPFポークで、ひき肉から作っています。玄米を出したのは最近の健康志向から。女性客には好評ですよ(笑)」

カキフライの牡蠣は調理用牡蠣の最高峰、三陸赤崎産

カキフライが4個のったカキフライ定食は2000円(季節限定)。
カキフライが4個のったカキフライ定食は2000円(季節限定)。

カキフライの牡蠣も驚くほど肉厚で、ふっくらと柔らかい。特有の磯臭さも全くなく、牡蠣の概念をくつがえすようなおいしさだ。衣もサクサクで箸が止まらなくなる。

「生食でおいしい牡蠣は他にもありますが、牡蠣フライにするには三陸、赤崎産の牡蠣が一番」と丸山さん。他にもササミカツ定食の鶏肉は薩摩の純然鶏、とん汁は鹿児島産の無添加麦味噌を使っている。「鹿児島の生まれですからね、鹿児島の食材を使いたいんですよ」。
地元愛の強さにがぜん、檍(あおき)という場所が気になってくる……。

玄米は岩手県産の無添加玄米、白米は宮城県産のつや姫、玉子は茨城の奥久慈産と、とにかく日本各地から食材を厳選して使っている。つけわせのサラダまでが力強い。全てが主役級の食材ぞろいだ。米は一度に大量に炊くので、さらにおいしくいただける。

カウンター席からは揚げ物のいい香りがする。
カウンター席からは揚げ物のいい香りがする。

営業時間は15時まで。ランチで勝負をかける

店の営業時間は11時から15時までと、遅めのランチまで。夜は営業していない。ランチに特化した店なのだ。開店当時は目立たない路地にあることから知られていなかったが、今では行列のできる人気店になった。カウンター6席、テーブル席4席と小さい店は、すぐに満席になるが、その分回転も早い。入り口のドアや窓はガラス張りなので、中の様子もうかがえる。女性ひとりでも入りやすい店づくりだ。寒くなる季節には、とん汁と炊き立ての玄米で温まりたい。

季節のおすすめは、窓の張り紙でチェックして。
季節のおすすめは、窓の張り紙でチェックして。
住所:東京都大田区蒲田4-7-6/営業時間:11:00~15:00/定休日:日・月/アクセス:京急蒲田駅から徒歩1分

取材・⽂・撮影=新井鏡子 構成=アド・グリーン

「とんかつ激戦区」として、ひそかに注目を集めている街・蒲田。その中心となっているのが『とんかつ檍』。ブランド豚である林SPFを使用して作るロースかつは今や蒲田のとんかつの代名詞ともいうべき人気を誇っている。「とんかつの概念を変える」という店の味について伺った。
とんかつ屋と並んでカレー屋の入り口がある。なんとも不思議な光景だが、とんかつの名店『とんかつ檍(あおき)』が営んでいるカツカレー専門店と聞いて納得。どちらも開店とともに人が列をなす蒲田の言わずと知れた人気店だ。