1階と2階で表情を変える極上カヌレ
『クラマエカヌレ』の1階はテイクアウト専門のカウンターと、ペットを連れてカヌレを楽しめるイートインスペース。つやつやとした木製カウンターがカヌレへの期待をかきたててくれる。2階はゆったりとくつろげるカフェだ。
『クラマエカヌレ』の魅力のひとつはカヌレへのこだわり。1階のカウンターで販売しているのは焼きたてカヌレ。普通のカヌレは常温だが、ここでは焼きたてを店頭に並べている。
『クラマエカヌレ』を運営する、CLASSIC INC.広報担当の廣濱舞さんは「カリッとした外側の食感と、とろりと溶けるカスタードのような中身の食感の対比を楽しんでもらうために、焼きたてを提供しているんです」と語る。
公式SNSアカウントで発表されるカヌレの焼き上がり時間に合わせて来店するお客さんもあとを絶たない。
2階のカフェで楽しめるのは最高級の食材で作られた上質なカヌレ。こちらは常温で提供するタイプだ。
卵のプロが多くの卵を試してたどり着いたカヌレ専用卵に、フランス産カソナードのブラウンシュガー、そしてレンチラムのネグリタ。厳選された最高級の食材たちは伝統的製法で焼き上げられる。
作りこまれた世界感のカフェで味わう最高級の伝統的カヌレとペアリングスイーツ
今回は2階のカフェにおじゃまして、グランカヌレ&アールグレイのティラミス1580円とカヌレ ド ティ850円をいただいた。
丁寧に蜜蝋が塗りこまれたカヌレは陶磁器のようにつややかだ。その深く濃い輝きは何百年もの間、音楽家達の手から手へを渡り歩いたバイオリンのよう。
切り分けると目に飛び込むのはしっとりとしたカスタード色の生地。ひと口ほおばると、しっかりした歯ごたえとやわらかな生地のコントラストが楽しい。香ばしさと濃厚な甘みで口の中はまさにパラダイス。
『クラマエカヌレ』のスイーツはすべて、グランカヌレとのペアリングを考えて開発されているという。
アールグレイのティラミスは驚くほどに軽やかで、ほおばった瞬間にすっととろける。アールグレイの上品で豊かな風味がしっかりと感じられ、クリームの甘味とクラフトのしょっぱさ、オレンジピールの柔らかな酸味が静かに調和を保ってお互いを引き立てあう。カヌレにティラミスをオンして食べるとまたたまらない。
カヌレ ド ティーは、『クラマエカヌレ』のオリジナルブレンド紅茶。カヌレに最も合う紅茶を探求し、辿り着いた。スリランカのディンブラ地方の、ビンテージゴールデンとインドのアッサムの組み合わせだ。たっぷりとポットに注がれたカヌレ ド ティーを保温するキャンドルのゆらめきが非日常感に花を添える。
華やかな香りと、ハチミツのような心地よい甘さが口に広がり、一口飲むたびに新鮮な感覚でカヌレを楽しめる。
カヌレを最高の空間で堪能してもらうために
薄ピンク色の座り心地のよいソファに、マーブル模様のテーブル。ゆったりとくつろげる柔らかな間接照明。店内にはカヌレを頬張り、空間を楽しむ人々の笑顔があふれる。
廣濱舞さんは「当店のカヌレやスイーツは質が高いという自負があります。ですからそれに見合った内装、世界観を大事にしています。高級なものを召しあがっていただくのだから、いい気分で召し上がれるようにしたいです」と語る。
「世界観を壊さないためには細部まで常に気を使っています。食器やカラトリー、照明や小道具にいたるまでこだわりつくしています」
カヌレと共に出てくるのはおとぎ話の挿絵に登場しそうなゴールドのカラトリーだ。カウンターの奥には紅茶葉の入った瓶とカップ、ソーサー、グラスが凜とした表情を見せてくれる。
見渡す限り整った空間に洗練された調度品。ラグジュアリーなワゴンに乗せられて運ばれる食事についつい目を細めてしまう。贅沢な食器に美しく盛り付けられたカヌレとスイーツ。最高のカヌレを極上の空間で過ごす。至福のひとときだ。
高級感溢れる2階に対して、1階の飲食スペースはシンプルであたたかみがある。散歩の途中にふらっと立ち寄りたくなる親しみやすいしつらえだ。
『クラマエカヌレ』は、カヌレの質にこだわりカヌレをいかにおいしく食べてもらうかを考えぬいて作られたカヌレ専門店。1階のイートインスペースで他店にはないカリカリトロトロの焼きたてカヌレを食べてもよし、2階の上品かつゴージャスな空間でカヌレに没頭してもよし。
「まだオープンして1年経っていないので、いろいろと手探りですが、季節の食材を大事にして季節ごとのスイーツも何度か提供しています。今後も定期的に出していきたいですね。今後はハロウィンやクリスマスなど、季節ごとのイベントで何かしら催しをすることを考えていますのでぜひチェックしてほしいですね」と廣濱さんは語る。
『クラマエカヌレ』はあなたの日常に輝きと喜びをトッピングしてくれるはずだ。
取材・文・撮影=かつの こゆき