【レトロゲームと出合う方法 ① ゲームセンター】
それは語り継がれるべき文化
「ゲームセンターに一度も入ったことがない」という人は少ないだろう。そこには陽キャにも陰キャにも思い出があったハズ。残念ながら近年店舗数が減少しており「どこの街にも1軒2軒はあった」という時代ではないが、そんな今だからこそ、レゲーを愛する人のために、思い出のゲームを揃えたゲームセンターが存在している。
その場に入ってみれば、きっと何かがよみがえる。懐かしくもみずみずしい空気を吸いに行ってみよう。
【懐かしいけど、新しいゲームセンターへ!】
あの思い出が、フレッシュな経験になる
ふと思い出す「あの頃」のゲームセンター。地元のあそこはもう閉店し、記憶の中にしかない……否、実はそうではないのだ。
少し足を延ばせば、懐かしのゲームが待っている場所がある。
さあ、街へ新しい思い出を探しに行こう。
『高田馬場ゲーセンミカド in オアシスプラザ&ナツゲーミカド』時空を超えて遊べるレゲーの名所[高田馬場]
全世界から注目を集めるレトロゲームの聖地。2009年に80年代からのゲームを中心に集められた『inオアシスプラザ』が、2020年に70年代のゲームとピンボールを中心にした『ナツゲーミカド』がオープンした。店長の池田稔さんを中心とした熱いゲーム好きによって集められた、1000種以上のゲームが定期的に入れ替えられている。『inオアシスプラザ』に約250作品、『ナツゲー』に約50作品を揃え、ゲーム好きを待っている。
店長さんのイチオシはコレ! 「ドンキーコング」 (1981)
「好きなゲームはたくさんありますが、誰にでも勧められるといえばこれです。デモを見れば遊び方が分かり、コインを入れたらすぐに面白いのがすごいです」(店長:池田さん)。
『高田馬場ゲーセンミカド in オアシスプラザ&ナツゲーミカド in 白鳥会館』店舗詳細
ナツゲーミカド:東京都新宿区高田馬場4丁目8-8/営業時間:ゲーセンミカド:10:00~24:00
ナツゲーミカド:13:00~22:00(土・日・祝は12:00から)/定休日:無/アクセス:JR・私鉄・地下鉄高田馬場駅から徒歩1分
『GiGO 秋葉原3号館 RETRO:G』頭と体、両方でレゲーを体感しよう[秋葉原]
『RETRO:G』は『GiGO 秋葉原3号館』にある、レトロゲーム専門フロアだ。店の特色として、1人用、2人用、対戦、皆で楽しめる大型筐体と、幅広い楽しみ方ができるラインナップを揃えている。その品揃えのなかには、マニアが実物の稼働している姿に驚く、貴重な逸品が混ざっていることも。自身もレゲーが大好きだというフロア責任者の馬場俊輔さんによると、銃を使うガンシューティング系が、レゲー初体験の人におすすめだそう。
担当さんのイチオシはコレ! 「PROP CYCLE」 (1996)
「人力飛行機を操縦するゲームで、なんと自転車型の筐体に跨って、ペダルを実際に漕ぐことで飛びます。自分の足で大空を遊ぶ感覚になれるんです」(担当:馬場さん)。
『GiGO 秋葉原3号館 RETRO:G』店舗詳細
【レトロゲームと出合う方法② ゲームショップ】
宝が眠る場所か、狩りの舞台か
「レゲーショップって中古ゲーム屋と何が違うの?」という人もいるだろう。ひと言でいえば、扱っている商品の幅が違う。というのも、ファミコンが登場した1983年がもう40年前になるワケで、レゲーショップと名乗るところは扱っている商品の幅が広く、博物館のような意味合いさえ生まれているので眺めているだけでも楽しいのである。
そこは宝が埋まっている場所であり、所有欲を発散するための狩りの舞台でもあるわけなのだ。
【電気街ゲームショップを歩いてみよう】
なくしていたものに出会う楽しみがここに
全国各地でレゲーの購入は可能だが、やはり秋葉原はモノの集まりが違う。
棚を見ていると思わず体に電流が走るような、驚きの出会い・再会があり得る。どの店にもそれぞれ独自の特色があるため、周回必須なのである。
『スーパーポテト』眺めるだけでアガる圧巻の陳列
ビルの3~5Fと広いスペースを持っているのが特徴。3・4Fでは幅広い年代とジャンルの、ソフト&ハードの他、Tシャツやアクスタなどの各種グッズも幅広く取り扱っている。そして5Fは、駄菓子屋が併設されたレトロゲームセンターとなっている。まさに往年のゲーム好きが喜ぶものが詰め込まれた、という感がある。
お宝発見⁉
いわゆる家庭用ゲーム機関係だけではない。例えば1990年代後半に大流行し、さまざまな種類が発売された、いわゆる「キーチェーンタイプ」の電子ゲームが今も大人気だそう。
『スーパーポテト』店舗詳細
『駿河屋 秋葉原店ゲーム館』現行機から博物館行きの代物まで揃う
驚くほど幅広い年代の家庭用ゲーム機、その各種周辺機器、レトロPCゲーム、それに加えて現行ゲーム機のゲーム……と商品の扱いが豊富。で、ありながら専門家でないと分からないような、ディープな品まで並んでいる、“沼れる”店だ。
いい意味で、雑多にたくさんの物が集まっているから生まれるエネルギーにあふれたお店なのだ。
お宝発見⁉
「ドラゴンクエスト」「ゼルダの伝説」といった名作系は、変わらずファンが多いという。また90年代に人気だった“NEO-GEO”関連商品が、外国人中心に人気が高いそう。
『駿河屋 秋葉原店ゲーム館』店舗詳細
『BEEP 秋葉原』キッズ時代の憧れPCが手に入ることに涙
「80年代の秋葉原にあったお店を再現する、というのがコンセプトです」というのはお店のプロデュースを担当する、RF丸山さん。特筆すべきは「PC-9801」「X68000」といった、当時の少年たちが憧れ夢中になったPCの実機が買えることだろう。令和の世に、目の前でPCの名機が動いているのを見られるだけでも行く価値がある!
お宝発見⁉
ファミコン以前に流行ったLSIゲームが箱つきで置いてあるのも驚き。また昔のゲームやサントラなどを、現代に復活させる試みにも積極的に取り組んでいるそう。
『BEEP 秋葉原』店舗詳細
『レトロげーむキャンプ』初心者に優しいサービスがうれしい
秋葉原電気街の背骨となっている大通りである、中央通りの路面店なので立ち寄りやすい。全商品起動チェック済みなのはもちろん、当時のゲームは内蔵電池により進行度合いを保存するものが多いのだが、その電池を入れ替えた上で販売する、といったサービスをしているのがうれしい。かゆいところに手が届いたお店だ。
お宝発見⁉
店長の田中祐博さんがおすすめするのが『パネルでポン』。初心者でもやりこみ勢でも楽しめる。『メタルギア』は、外国人に特に人気が高いのだそう。
『レトロげーむキャンプ』店舗詳細
【レトロゲームと出合う方法 ③ コンセプトバー】
「楽しい」を共有したいと思うなら
「好きなものについて語り合う」。この世にこれほど楽しいことはない。とはいえ、学生時代にも難しかったようなことが、大人になったからといってできるわけ……と考えるのは早い。レゲー好きの多さからだろう、今は懐かしいカルチャーに愛着をもつ仲間が集う 「ゲームバー」または 「サブカルバー」 が、日本全国に存在している。
始めからレトロゲームが好き、という人間が集まるのだから話は早い。さぁ、仲間を求めて出かけよう。
レゲー仲間が欲しいなら、『8bit cafe』に集え!
「旅人たち」が仲間を求めて集まる場所へ
ゲームを中心に、80~90年代のものを中心に、さまざまなサブカル関係のあれこれが集められたカフェ&バー。
店内が広めでボックス席も多く、世代も性別も国籍も超えて人が集まってくる、まさに 「出会いと別れの酒場」 だ。
さて、レトロゲームをプレイしたら、「レトロゲームについて仲間と話したくなる」、それは当然ではないだろうか。むしろゲームそのものより、ゲームにまつわる話をしている方が面白い、まであるだろう。そんな同好の士と出会えるのがレトロゲーム酒場なのだ。
東京における代表的なお店『8bit cafe』の店長・ナヲさん曰く「80〜90年代、学校帰りに友達が集まってだべっていた部屋、そんな場所を再現したかったんです」。その言葉のとおり、ゲームをはじめとして、漫画、音楽、フィギュアなど、皆見覚えがある、時代の象徴になるようなものが店内のあちこちに置かれている。
ナヲさんにここに集まる人とどうすれば仲良くなれるのかを聞くと、
「店内に置かれているものを話のきっかけにしてもらえたら。無理にゲームの話でなく、最初は衣食住の話からはじめる、というのもアリです。自分の知っている話で盛り上がっている人がいたら、僕に振ってくれたらつなぎます。最近は日本のゲームが好きな外国の方も多いので、異文化交流もできます。皆で楽しんでください」とのこと。
レトロゲームをきっかけに、勇気を出して新しい仲間を見つけて、新しい冒険の旅に挑戦してみるのはいかが?
『8bit cafe』店舗詳細
昭和~平成ゲームヒストリー
昭和53年(1978)
『スペースインベーダー』が発売。社会現象となる。「インベーダーハウス」と呼ばれる、このゲームをプレイできる店が日本各地に登場し、ゲームセンター文化隆盛の礎の一つとなった。
昭和58年(1983)
『ファミリーコンピュータ』が発売。家庭用ゲーム機はすでにあったが、『ファミコン』は安価で画面が美麗、たちまちキッズに大人気となり、昭和60年の『スーパーマリオブラザーズ』の発売で一気に国民機となった。
昭和61年(1986)
実際に車に乗って操作できる 『アウトラン』、前年の『スペースハリアー』など“体感ゲーム”がゲームセンターに登場した。
平成元年(1989)
『ゲームボーイ』が登場。発売当初はパズルゲームの 『テトリス』 で大ブレイク。携帯ゲーム機の歴史が始まった。
平成3年(1991)
『ストリートファイターⅡ』発売。始めはゲームセンターで稼働し、「対戦」という文化を一躍メジャーにした。
平成6年(1994)
家庭用ゲーム機『プレイステーション』『セガサターン』が登場、ゲームにおける表現を格段に向上させた。
平成8年(1996)
『パラッパラッパー』が登場。家庭用ゲーム機の 『プレイステーション』 で発売され“音ゲー”というジャンルを確立した。音ゲーはゲームセンターも大いににぎわし、新しい客層を呼び込むことになった。
さらに平成8年には『ポケットモンスター赤・緑』も発売されている。
1990年代後半
メイド喫茶の隆盛から“コンセプトバー”と呼ばれる文化が一般的になり、そこに、昔からあったサブカル系バーの流れが合流、ゲームバーが各地に開店するようになっていった。
これらの日本で培われてきたゲーム文化は、現在外国人に再評価を受けており、ゲームセンターも、レゲーショップも、ゲームバーも、洋の東西を問わない、さまざまな人々が集い、盛り上がっている。
取材・文=来栖美憂 撮影= 高野尚人 イラスト=ボブa.k.aえんちゃん
『散歩の達人』2023年7月号より