割烹さながらの創作和食とお酒をリーズナブルに
『坊々樹』は、1976年創業の大衆居酒屋を前身に、2000年から創作和食にアップグレードした老舗店だ。
コンセプトは、「居酒屋以上割烹未満」。高級和食店に入るのは敷居が高いが、いつもより良いお店で落ち着いて、食事を楽しみたい人におすすめ。名店で腕を磨いた職人が丁寧な仕事で作る旬の創作和食を、肩肘張らずにリーズナブルな価格で楽しむことができる。
日本酒最強のアテ、八寸で季節を感じる
料理は美味しいだけでなく、見た目も美しい。コースメニューに登場する八寸 2000円には旬の食材が華やかに並ぶ。取材時(2月)は、ホタルイカの酢漬け、山ウドの酢味噌あえ、銀ダラの西京焼き、菜の花とカラスミの和え物、卵焼き、野菜の炊き合わせ、たけのこなど。どの料理も素材を生かしながらも、ついついお酒が進む味付けで、まさに日本酒の最高のお供だ。
ペアリングで食事とお酒をより楽しむ
ぜひ試してほしいのが、お酒のお任せだ。店内には店主が全国の酒造を回って厳選した和酒やワインが揃っている。「ご要望があれば、お客様の好みや体調も加味して料理に最適なお酒をご提案します。飲兵衛揃いのスタッフにぜひお任せください(笑)」とのこと。
農山さんが、時には蔵元と朝まで飲み明かしてお店に置かせてもらうことができた数々の名酒の中でも、ぜひ試してほしいのが、島根の王祿(おうろく)、香川の悦凱陣(よろこびがいじん)、石川の宗玄(そうげん)の3種。特に悦凱陣はお燗がおすすめだ。
爽やかレモンサワーでアジフライが止まらない
お店一押し八丈島島レモンサワー650円を片手に味わってほしいのが、生アジフライ1200円。ふわふわの身とざっくざくの骨煎餅はボリューム満点。わさび醤油か、梅とアンチョビを混ぜた梅チョビソースを載せると味がさらに際立つ。ちなみに、梅チョビはそのまま舐めたいくらい飲兵衛仕様に仕上がっているので、これまたお酒が止まらない。アジフライの油を口に含みながら飲むレモンサワーは最高で、次の一口がさらに美味しくなる。
食事を美味しくするのは結局、お米
ついに真打ち登場。老舗米穀専門店隅田屋とタッグを組んで、2年の歳月をかけて辿り着いた究極の炊き込みご飯、鯛とホタテ・菜の花の土鍋ご飯3800円。選米、米の浸水時間や量、炊き込み具合などすべてにこだわった究極の一品だ。取材時は、宮城県産ひとめぼれと富山県産コシヒカリをブレンド。米がしっかりと粒立ち、もっちりふっくらとした食感で、出汁を吸ったご飯が本当に美味しい。
「創業者である父親から店を引き継いだ時に、食をもっと深掘りしたいと思い、色々研究した結果、やはり食事を美味しくするのはお米だと思ったんです」と話す店主の農山さん。「この店を“本物の世界への入り口”として活用してほしい」という言葉通り、本物志向の絶品が揃った、『坊々樹』。大切な人に自信を持って紹介できるお店なので、和食の奥深さを感じにぜひ訪れてほしい。
取材・文・撮影=佐野友美