清洲同盟とは!
まず紹介するは、戦国時代において一番有名な同盟と言っても良いであろう、清州同盟である。これは先に記したように織田信長様と徳川家康殿の同盟じゃな。
尾張を治め美濃への進出を目指されておった信長様と今川家を離れて三河統一を目指す家康殿、互いの利害が一致して起こった同盟であるわけじゃ。
同盟関係が長く続くことが少なかった戦国時代において、二十年続いた他に類を見ない同盟じゃと現世では言われておる。『どうする家康』でも話の肝となるであろうな。
然りながら!
この同盟、現世で言われておるような対等な同盟ではなかったのじゃ!
確かにこの同盟が結ばれた当初は両者は対等に御座った。
されど、次第に東から迫る武田家の圧力に耐えられなくなった徳川家は大名家としての国土支配を断念し信長様に従属する形へと関係性が変化していったのじゃ。
これを示す話を2つ紹介いたそう。
一つ目は信長様から戦の見舞金を頂戴しておること。
1573年の高天神城の戦いにて徳川殿は武田勝頼殿の進攻によって遠江支配の要であった高天神城を奪われてしまう。この敗戦によって武田家の攻勢は激しさを増すのじゃが、ここで注目するは信長様の対応じゃ。
なんと信長様は敗戦の見舞いとして軍資金をお与えになったのじゃ!これは他の家臣にされていたことと同様で、主と従の関係が垣間見える一幕であった。
二つ目は領土を信長様より拝領しておること。
家康殿は武田家を滅ぼした折に得た駿河国を信長様から賜っておるのじゃ!武田攻めはもちろん家康殿も主力として大活躍された。大名家としての立場があるならば賜るまでもなく家康殿が切り取った地とみなされるはずであろう?
故に信長様と家康殿との間に明確な上下関係があった事を示しておるのじゃ!
これらのことから家康殿は領土の支配に苦心し信長様の庇護を受けて領土を守ることへと指針を変えたことがわかる。
勿論、家臣の中では家格が高く、武田を滅した折には信長様が徳川殿を饗応されるなど特別な存在ではあったぞ!
蛇足となるが、徳川殿の領土の石高は明智光秀殿、羽柴秀吉、柴田勝家様、滝川一益殿に次いでの大きさであったぞ!
甲相駿三国同盟とは!
続いて紹介致すのは『甲相駿三国同盟』じゃ。
これは甲斐の武田家、相模の北条家、駿河の今川家の三家の間で結ばれた同盟のことである。大河ドラマ第1回で放送された桶狭間の戦いよりも前の出来事じゃな。
この三家は戦国黎明期よりそれぞれと衝突と和平を繰り返してきた。
信濃へ領土を拡大して上杉謙信との戦に備えたい武田信玄殿、関東の支配を盤石にしたい北条氏康殿、織田家と戦って尾張の支配を目論む今川義元殿、それぞれの思いが一致して起こった同盟じゃ!
信玄殿の嫡男義信殿に義元殿の娘嶺松院殿が嫁ぎ、義元殿の嫡男氏真殿に氏康殿の娘早川殿が嫁ぎ、氏康殿の嫡男氏政殿に信玄殿の娘黄梅院殿が嫁ぐという現世の“三角トレード”のような形で同盟の証となる婚姻関係が結ばれたのじゃ。
東日本の三雄が纏まったことで相対する周りの諸国は戦々恐々、今川と相対した織田家も猛攻を受けることとなったのじゃ。
この同盟は10年以上続き、戦国史の中で随一ともいえる大規模な同盟関係であった。
じゃが桶狭間の戦いで義元殿が討たれたことで武田信玄殿が今川家を見限り、それどころか今川領へと侵攻を開始する。更には三国同盟を無視した信玄殿に憤った氏康殿が武田領へ進軍を始め瓦解してしまったのじゃ。
勿論、このことは徳川殿にも大きく関わる。故に『どうする家康』でも触れられることもあるであろうな!
甲三同盟とは!
最後に紹介致すのは甲三同盟である!!
これは甲斐の甲に三河の三じゃな。
つまり!!徳川殿と武田信玄殿の同盟なのじゃ!!
武田と徳川といえば三方ヶ原の戦いや長篠の戦いなど、敵同士の印象が非常に強いのではなかろうか?
じゃが初めは同盟関係にあったのじゃ。大河でも徳川殿が今川からの独立を果たす前に信玄殿に救援を頼む一幕が描かれておった。
して、この同盟は先に話した甲相駿三国同盟を終わらせた大きな要因となっていたのじゃ。
信長様と清州同盟を結び、今川領を奪い領土を拡大したい徳川殿と、今川家を見限り今川領にある港を欲する武田家の思いが合致した。
故に武田家は駿河を、徳川家は遠江を切り取る密約を交わし、それぞれ今川領への侵攻を開始するのじゃ。
因みに同時期、武田家は我ら織田家とも同盟を結んでおって、今川家の敵であった織田家と手を組んだことは今川家との対立が決定的になったとも言えよう。
じゃがこの甲三同盟も長くは続かなかった。
駿河を奪った武田家が同盟の約束に反して遠江にまで手を伸ばし始めたのじゃ。
勿論徳川殿はこれに憤り、手切りとなった。次第に武田は家康殿の領土にも直接攻撃を仕掛けることとなる。これも大河でどう描かれるのか見ものであるわな。
他にも面白き同盟はたくさんある!
此度の戦国がたりはいかがであったか?
『どうする家康』のこの後の展開に深く関わってくる三つの同盟を挙げてみた。
無論戦国時代は日ノ本各地で様々な同盟が結ばれておって、同盟と裏切りが繰り返された中国地方や逆に有力大名のほとんどが血縁で同盟関係にあった東北地方などは面白い同盟の例が多くある。
此度の話をみて興味を持ったならば調べてみると良い!
無論、名古屋城にて儂に聞きに参るもよしじゃ!
今の名古屋城は梅が見頃でな、旅行にもちょうど良い季節だで皆が集うてくれるのを待っておるぞ!
では、此度の戦国がたりはこれにて終い。
さらばじゃ!!
取材・文・撮影=前田利家(名古屋おもてなし武将隊)