特別ゲストともに、ラーメン屋『好日』で腹ごしらえ
12月上旬、前日が真冬の寒さだったため、身を震わせながらの散歩になるかも……と少し危惧していたが、幸いにも冷たい雨も上がり、歩きやすい陽気に変わった。
さんたつ編集部が今回まず訪れたのは、東中野駅。JR総武線で中野駅から1駅隣、線路沿いにお店が点在し、「東中野銀座通り」を含め、魅力を宿した街だ。
さんサポ考案の散歩コースを実踏する本企画、第3弾にして、特別ゲストをお招きしている。
今回の散歩コースの考案者、味論さんが、貴重な時間を割いて来てくれた。味論さんは『めちゃいいぜ賞』(2021.10)、『いいぜ賞』(2022.6、2022.9)、年間アワード『めちゃいいぜ大賞』(2021年)受賞……と、さんたつサポーターのトップランナーの1人。
今回の街歩きは味論さんも一緒で、楽しくなりそうだ!
挨拶もそこそこに、お昼時だったのでまずは腹ごしらえと行こう。東中野駅からほど近く、ラーメン屋『好日』に向かった。
実はラーメン激戦区の東中野。新しいラーメン屋がどんどん入ってきているが、その中の人気店『好日』は飛び抜けてうまい、と味論さんが太鼓判を押す。
店内に入り、ラーメンを注文する。チャーハンかもやしの小鉢がサービスで付くとのことで、筆者は煮卵ラーメンにチャーハンの小鉢を選んだ。
注文した品が運ばれてくるのを待つ間、味論さんと言葉を交わす。「出会って10分の人といきなりラーメン一緒に食べるの、人生初ですよ」と笑う味論さん。なんとも、愉快な状況だ。
やがてラーメンが運ばれてきた。見た目は昔ながらのザ・ラーメン。これはおいしそうだ……!
あっさりシンプルな醤油スープと、コシがありツルツルといける麺がベストマッチ。黄金色のチャーハンもおいしくて、箸が進む。
あっという間にお腹に収めた。ごちそうさまでした!
「かっこいい中野=中野坂上」にあって、目を引く存在である『稲垣商店』
腹ごしらえできたところで、東中野から中野坂上へ歩き出した。
駅間をつなぐ山手通りは幅の広い歩道がずっと続き、とても歩きやすい。緩やかなアップダウンもあって、ランニングが趣味の筆者は「走りやすそう……!」と心の中で呟いていた。
この日はあいにくの曇り空だったが、天気がいい日はこの通りで富士山が見えるという。
通りがかりに見かけたおでん屋、ラーメン屋など、気になるお店を脳内メモにインプットしながら、さんたつ編集部+味論さんは寒さをものともせず、歩き続けた。
途中、通り沿いの氷川神社に立ち寄ってみることにした。
氷川神社は、東京都神社庁のHPによると、御由緒は「長元三年(1030年)後一条天皇の御宇、源頼信公が平忠常征討の際、武蔵国一宮大宮氷川神社より勧請したもので、旧中野村の総鎮守社である。」とある。
静寂に包まれた境内の落ち葉を踏みしめ、ご挨拶。今日の散歩がよきものになるように祈った。
神社を後にし、引き続き中野坂上に向けて歩き出す。
大久保通りとの交差点に差しかかった。味論さん曰く、高円寺の方までもずっと続いている通りで、いい感じの飲食店が点在し、その通りもまた歩くのが楽しい、とのこと。
交差点では、ランドセルを背負った大勢の小学生たちとすれ違った。冷たい空気もなんのその! 元気に駆けていった。
おしゃれな外観の「中野区立中野東図書館」に差しかかったあたりから、街の様相が変わってきた。中野坂上駅周辺に到着だ。
東中野駅の辺りに比べると、山手通りと青梅街道が交差するこの街は、ビル群が視界を占める、「かっこいい中野」だ。
そんな街にあって、昭和が取り残されたような『稲垣商店』は目を引く存在だ。
店先ではバーガーが売られ、自動販売機や喫煙所もある。昔ながらの、いかにも「商店」という趣。
味論さんの勧めに従い、メンチ・コロッケ・ブタカツなどの種類がある激安バーガー(100円)をテイクアウト。手作り感があって、サイズもほどよい。
会計のため店主にバーガーを持っていくと、「はい、100万円ね」と流れるようにジョークを言われ、いいお店だと確信する。編集部はみな「100万円」と告げられる中、味論さんだけ「300万円」と値上がりしていた。
さんたつ編集部であること、街歩きをしていることを簡単に説明すると、帰り際に店主はなぜかバーガーを全員分サービスしてくれた。気持ちはうれしいけど、そんなにバーガーばかりもらっても……。
『稲垣商店』ではたばこ、お弁当なども売られているが、味論さんが以前店主に伺ったところによると、実は乾物屋なのだという。
とても惹かれるお店だった。また足を運びたいものだ。
宝仙寺を経て、古きよきアーケード街・新中野へ
中野坂上駅から青梅街道を西へ進むと、目立つ形で宝仙寺の入り口が現れる。
境内は広々としたとても立派なお寺で、月刊『散歩の達人』2022年11月号でも紹介されていた。
境内で目を引くのは三重塔と、石臼塚。石臼塚は江戸期以来、食を支えた石臼の供養に建立されたという。ハスが茂り、初夏はカエルが遊ぶ。
「中野町役場跡」という石碑もあり、明治から昭和初期にはここに町役場があったことを伝えている。
雅(みやび)な中野を堪能した後で、新中野駅周辺まで歩いてきた。「新」と冠されているが70年以上の歴史がある古きよきアーケード街で、さんたつセンサーがビビビッと反応する。
微笑みの街、「鍋屋横丁」。地元の人に愛され続ける商店街だ。
桃園川緑道を過ぎ、紅葉山公園で季節の移ろいを感じる
鍋屋横丁の交差点を曲がり、北上する。新中野から中野へ向かう道だ。立ち飲み屋、スキューバダイビングショップ……この通りにも気になるお店が見受けられた。
しばらく歩いていると、桃園川緑道と交差した。この緑道は中野坂上から阿佐ケ谷まで長々と続いている。空気階段が『散歩の達人』2022年11月号で路上観察した場所だ……!と、テンションが上がる。
桃園川緑道を過ぎ、さらに歩いていくと「なかのZERO」、そして紅葉山公園の姿が大きくなってくる。
紅葉山公園内に足を踏み入れ、散策。見頃は過ぎていたがいくらか紅葉を目にすることができ、季節の香りが鼻をついた。
園内にはSLが静態保存されていて、その現役時代に思いを馳せることができた。
ここでおもむろに、中野坂上の『稲垣商店』で購入したバーガーを取り出す。気のいいおじちゃん(店主)がサービスしてくれたものだから、全員分並べてみると壮観……というより、シュール。
どこか懐かしさを喚起させる味わいのバーガーたちを頬張る。『稲垣商店』はこれからも変わらずにあってほしいお店だと、願うばかりだ。
隣接する「なかのZERO」内の中野区立中央図書館は、味論さん曰く、広々とした館内の奥はガラス張りになっていて、秋には紅葉山公園の紅葉に心惹かれながら、読書をすることができるそうだ。
施設内の様子を少し窺うと、師走という時節柄もあり、クリスマスツリーの設置準備を進めているところだった。
今日一日、いろいろな中野を探してみて
いよいよゴールの中野駅が近づく。中野のランドマーク、『中野サンプラザ』が目視できるようになってくる。
筆者が初めて中野駅に降り立ち、『中野サンプラザ』を頼もしく見上げたのはおよそ10年ほど前だ。そんな中野の象徴も、閉館に向けたカウントダウンが始まっている。
駅の南口エリアは再開発が進んでおり、この街がまだまだ変化を遂げていくのだと改めて感じる。
今日一日、味論さんとともにいろんな場所を巡りながら、庶民的な中野、かっこいい中野、昭和が残る中野、そして未来に向かう中野を目の当たりにすることができた。
新たな街としての変貌に胸が弾む一方で、変わらずに残っていてほしいものもある。これからの中野に注目していきたい。
同道してくれた味論さん、本当にありがとうございました!
こういった散歩企画を、今後もさんたつサポーターのみなさんと一緒にできたらうれしい。
さて、たくさん歩いて喉が渇いたな……。
今回の散歩コースは、北口の飲み屋街で一杯飲みに行くまでがワンパッケージ。味論さんにそう促されるままに、ふらふらと体は飲み屋街へ引き寄せられていく。
これから目の当たりにできるのは、「夜の中野」。宵の口だけど、たまにはそんな日があってもいいよね……!
取材・文・撮影=さんたつ編集部