アンティークで揃えられた店内は屋根裏をイメージ。秘密基地みたいで胸が躍る

恵比寿駅西口から銀座恵比寿通りを経由し恵比寿二丁目交差点へ。方向音痴な筆者にとって、交差点は最大の敵である。慎重に地図を確認し横断歩道を渡って左折するとほどなく店がある。店の前に“富士大志館 つけナポリタン”と書かれたのぼりがはためいていたのですぐわかった。風向きがよく、電柱に隠れていなくてよかった。ビルの横にある階段で2階まで上り、店に向かう。

目の前の道は車の往来が激しいのだが、遠くからでも目立つのぼり。
目の前の道は車の往来が激しいのだが、遠くからでも目立つのぼり。
建物と建物の間にある階段を2階まで上ると店がある。
建物と建物の間にある階段を2階まで上ると店がある。

2階にあがるとテラスが広がっていて驚いた。ベンチや壁などに手作り感があってまるで秘密基地みたいだ。天気のいい日は明るい自然光のなかでのんびり食事やコーヒーを楽しめる。

DIYが得意なオーナーを筆頭に、スタッフで手作りしたというテラスは解放感たっぷり。デニムのクッションも個性的。
DIYが得意なオーナーを筆頭に、スタッフで手作りしたというテラスは解放感たっぷり。デニムのクッションも個性的。

一方で店内はアンティーク家具で整えられ壁一面に洋書が並んでいる、シックで隠れ家的な雰囲気だ。どれもこれもステキで興味深く、キョロキョロしつつ店長の福田さんに話を聞いた。

「オーナーが静岡の富士市で飲食店を開いていて、東京へ進出という形で2010年5月にオープンしました。富士市のB級グルメ・つけナポリタンのほかに、サイフォンで淹れるコーヒーが楽しめますよ」。印象的な店名はオーナーが持っている絵から取ったそうで、福田さんの「一度聞いたら忘れないですよね(笑)」という言葉に大きくうなずく。

店内は大きなシャンデリアやサイフォン、赤のベロア生地が上品な椅子やテーブルなどアンティークで揃えられている。
店内は大きなシャンデリアやサイフォン、赤のベロア生地が上品な椅子やテーブルなどアンティークで揃えられている。

どんな洋書があるのか気になる(読めないけど)。飴色になったイスの質感を確かめながら、インテリアやそれに施されたレリーフをじっと見ているだけでもなんだか楽しい。

「昼間もライトは落とし気味なんですが、夜は各テーブルにキャンドルを灯しています」だとか。カップルで来たらムード満点だ!

ゆっくりくつろげるソファ席。洋書も手にとって読んでもいいそうだ。
ゆっくりくつろげるソファ席。洋書も手にとって読んでもいいそうだ。

こっくりとしたトマトと濃厚なビーフの旨味が決め手。静岡のご当地グルメ・つけナポリタン

ランチは看板メニューのつけナポリタンをいただこう。トッピングは半熟卵、ブロッコリー、コーン、オニオンスライス、がっつり唐辛子、がっつりガーリックから2つ選べるので、半熟卵とブロッコリーをオーダーした。ちなみに平日は1300円でワンドリンク付き、土日祝はつけナポリタン単品1000円に加えワンドリンクオーダーが必須となる。

近くに座っている大学生風の男性2人組は、慣れた様子で「コーンとガーリックで。それから麺大盛りで」とオーダーしている。フムフム、それもアリだな……。自分の好きな味をカスタムしながら食べられるのは楽しい。

つけナポリタンにもいくつか種類がある。平日はすべてのメニューにドリンク付きなのがうれしい。
つけナポリタンにもいくつか種類がある。平日はすべてのメニューにドリンク付きなのがうれしい。

厨房に入らせていただくと長身のイケメンスタッフ・小山大樹さんがおいしさの秘密を教えてくれた。

クールな眼差しと静かな微笑みがステキなスタッフの小山さん。おすすめのトッピングはガーリックと唐辛子だそう。
クールな眼差しと静かな微笑みがステキなスタッフの小山さん。おすすめのトッピングはガーリックと唐辛子だそう。

厨房ではちょうどソースの仕込み中で、ビーフとトマトのいい香り。小山さん、作り方のポイントはどんなところでしょう?

「そうですね、牛すじを圧力鍋で柔らかくなるよう煮込み、さらにトマトホール缶、味噌、醤油、砂糖を加え、具を細かくつぶしながら4時間煮込みます。けっこう煮詰まっていくので濃厚なソースに仕上がります」と、鍋を混ぜながら答えてくれた。

牛すじとトマトがゴロゴロ。店長の福田さんは「この鍋いっぱいでおそらく80人前くらいあるんですけど、土日は完売してしまいます」という。
牛すじとトマトがゴロゴロ。店長の福田さんは「この鍋いっぱいでおそらく80人前くらいあるんですけど、土日は完売してしまいます」という。

ちなみにつけナポリタンに並ぶ人気のシーフードつけナポリタンは、濃い魚介のトマトソースで、仕上げに生クリームを加えたものなのだそう。そっちも気になる!

コトコト煮込むのがポイント。鍋の底が焦げ付かないようこまめにかき混ぜる。
コトコト煮込むのがポイント。鍋の底が焦げ付かないようこまめにかき混ぜる。

続いて麺をゆでる。平打ちの生パスタかと思ったが、なんと中華麺だという。「最初はパスタでも試したそうなんですが、ソースが絡まなくて。つけ麺用の中太麺をゆで水でシメた後、再び温め、麺がくっつかないようにオリーブオイルで和えてあります」と福田さん。ほほう、これまた酔狂な。温かいうちにさっそくいただきましょう。

トマトソースの上にはトッピングの半熟玉子とブロッコリー、そしてチーズがかかっている。チーズは熱々ソースに溶けて旨味がアップ。
トマトソースの上にはトッピングの半熟玉子とブロッコリー、そしてチーズがかかっている。チーズは熱々ソースに溶けて旨味がアップ。

天気のいい日だったのでテラスでいただだく。パスタなの? つけ麺なの? とにかくおいしそうだ。まずは、中太麺にレモンをかけていただきましょう。

レモンをかけるとさわやかな風味と酸味が増してあっさり食べられる。
レモンをかけるとさわやかな風味と酸味が増してあっさり食べられる。
具がゴロゴロ。スプーンですくいながら麺と一緒に食べよう。
具がゴロゴロ。スプーンですくいながら麺と一緒に食べよう。
ソースをたっぷり麺に絡ませていただきまーす!
ソースをたっぷり麺に絡ませていただきまーす!

うーん、こっくりとしたトマトと濃厚なビーフの旨味が相まってもっちもちの中太麺によく合う。ソースには甘みとコクがあるのだが、トマトの酸味がいいバランスだ。ブロッコリーの食感や爽やかな味わい、噛んだ途端に黄身があふれ出す半熟玉子、とろ〜りとソースになじむチーズも優秀なトッピングの役割を果たしている。

夜はキャンドルのやさしい光が照らすムード満点の雰囲気。くつろぎながらクラフトジンを味わえる

夜になるとキャンドルのやさしい光に照らされ、店内はいっそうムードいっぱいの空間になる。「自分が言うのもなんですが、デートに向いている店だと思いますよ。実際、カップルも多いですね」と福田さん。

ドリンクも豊富で、自家製サングリアやレモネード、ジンジャーワインなどひと手間加わったメニューのほか、ジャパニーズクラフトジンも揃う。そしてアヒージョや自家製ジンジャードレッシングで食べるローストビーフサラダといった、お酒に合う料理もラインナップされている。

とくにジャパニーズジンが豊富に揃う。カウンターでグラスを傾けるのもいい。
とくにジャパニーズジンが豊富に揃う。カウンターでグラスを傾けるのもいい。

福田さんが「お酒の種類が豊富で各種取り揃えているんですが、とくに今、日本の酒造メーカーによるジンが人気で、うちでも力を入れているんですよ。レアなものも揃っています」と尾鈴ジンやJIN7、美風などをはじめとした人気のボトルを紹介してくれた。

洋書が並ぶソファ席でゆったりくつろげる。
洋書が並ぶソファ席でゆったりくつろげる。

おいしい料理と酒を楽しんだあとは、つけナポリタンでシメるのもよし。福田さんによれば「つけナポリタンだけ食べに来るお客様も多いんですよ」というから、お酒が飲めない人でも気軽に食事を楽しめるのでご安心を。今度はディナータイムに訪れて、お酒を飲みながらシーフードつけナポリタンがいいかもな〜。

構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=パンチ広沢