大きな窓から街の風景を眺める
池袋駅東口から明治通りを雑司が谷方面に歩くこと8分。駅前の喧騒から離れて、ずいぶんのんびりした雰囲気になってくる。月とロケットのイラストだけが書かれた看板は意外と目立ち、散歩気分で歩いていてもすぐに見つかった。店は雑居ビルの2階にあり、1階の飲み屋脇の小さな赤い階段を上り、薄暗く蛍光灯が光る廊下にあるガラス扉を開く。
店内に入ると雰囲気は一転、足元から天井いっぱいまでの大きな窓からは明るい日差しが差し込んでいた。せわしなく車が走る明治通りの風景も切り取られた絵のようだ。
「この窓に惚れて物件を決めたんです」と店長の岸山さん。古い映画に出てくるような、ちょっとレトロなロケットの内部から外を見ているような気持ちになったと話す。そういわれて窓の外を見ていると、乗り物に乗ってゆっくりと旅をしているようなおだやかな気持ちになる。
モロッコ、イタリア、ギリシャなど地中海沿岸地域の料理が専門
「環地中海料理」と呼ばれるモロッコやイタリア、ギリシャ、スペインなど地中海沿岸諸国の料理は、オリーブオイルをふんだんに使い、トマトなどの野菜や果物、豆類を多く使うのが特徴。健康的といわれるこの料理を、この店ではさらに日本人の口に合うように調理しているため、体にもやさしくおいしいと評判だ。
4種類からセレクトできるミートソース。合わせるのはパスタ?ライス?
鶏肉で作る「なつかしのミートソース」、鶏と根菜を和風の出汁と味噌、カレーで味付けた「オリエンタルミートソース」、牛肉と豚肉を鶏のブイヨン作る「肉を感じるごろごろ系ミートソース」、そして今回いただいた「豚肉とレンズ豆の塩ミートソース」の4種類から選べるミートソースが人気だ。「レギュラーはモチモチの生パスタですが、店内で精米して昆布、オリーブオイル、塩で炊いたライスで食べるのもオススメですよ」とのこと。麺か飯か。う〜ん、これは悩む。悩んだ末、今回はパスタをセレクト。岸山さんがたくさんの生パスタを食べ比べ、これぞ!と行き着いたのがこの生パスタだったという。それを聞いたらどうしても食べたくなってしまったのだ。
ブイヨンの旨味たっぷりの塩ミートソースがモチモチのパスタと絡み合う
パスタを茹でて仕込み済みのソースをかけるため、オーダーしてからあっという間にできあがり。ふんわりと野菜を煮込んだおいしそうな香りが漂ってきた。
豚肉から出たコクと、タマネギ、ニンジン、セロリなどの野菜から丁寧に取ったブイヨンが混じり合うソースはやさしい味わいで、モチモチのパスタと絶妙に絡み合う。さすが探し求めた味のパスタは弾力もすばらしく、小麦の風味が甘く香るのもいい。噛むごとにレンズ豆がほろりと砕け、こだわりの塩によって豚肉の旨味がさらに引き立っている。粒マスタードを入れてみると適度な酸味が全体の味を引き締める。味に変化とアクセントがつくのでぜひ試してみよう。
すばらしい香りが楽しめる自然派の葡萄ジュース
平日のランチだったので、葡萄ジュースをオーダー。ナチュラルワインがたくさん揃う店ならではのこだわりたっぷりの1杯だ。濃縮還元ではなくストレート果汁100%で、赤がコンコード種、白がナイアガラ種と甘みの強いブドウの品種が揃っている。これもナチュラルワインがたくさん揃う店ならではだ。
ワイングラスを少し揺らすと驚くほど芳醇なブドウの香りが立ち上った。香りで充満したグラスを傾けひと口飲むと、思った以上にブドウが重厚な味わいで、後味は自然な甘みとさわやかな酸味ですっきりしている。豊かな香りに包まれると、ふうっとひと息つくほど心地いい。
食へのこだわりから繋がる人の縁
「自分の子どもに食べさせることを考えて料理を提供しています。だから偽物の食材や調味料は絶対に使わないんです」と話す。塩についてはとくに思い入れが強く、いろいろな塩を試した結果、天日干しでミネラル豊富なゲランドの塩を選んでいる。
岸山さんに食と健康、栄養素のバランスについて聞きたがる客も多いため、店のイベントとして講座を開講する予定もあるとのこと。音楽のライブ、哲学など学術系の勉強会、料理教室など多種多様なイベントの開催で、また新たな人間関係が生まれる。それを楽しむ岸山さんのロケットはまだまだ旅の途中、これからも新たな風景を見せてくれることだろう。
(金・土はディナー/15:00〜23:00・入店21:00まで)/定休日:日・月・不定/アクセス:JR・私鉄・地下鉄池袋駅から徒歩8分、地下鉄副都心線雑司が谷駅から徒歩6分
取材・⽂・撮影=ミヤウチマサコ 構成=アド・グリーン