品川駅からアクセス抜群の和中折衷老舗居酒屋
港南口のエスカレータを下り、小さい広場を通り抜けた右側に『居酒屋 三平』はある。JR品川駅の中央改札口からは徒歩6分、港南口を出てからは徒歩1分というアクセスのよい場所で、いつでも気軽に立ち寄ることができる居酒屋だ。
店の前に着いて看板を見ると、ちょっと気になる「中華」と「和中折衷料理」の文字。ここは居酒屋のはずだが、と首をかしげながら店に入る。右には個室、左に開放感のある座敷、奥にはテーブル席が並ぶ。会社の仲間や友人同士のグループで来ても、1人で来ても、明るく広い店内でゆっくりと楽しめそうだ。
今回は人気のランチメニューでリピーターも多いという、もやしそば(あんかけ醤油)&半チャーハン980円を注文。
運ばれてきたもやしそばをあつあつのうちにいただく。鶏ガラスープにあんかけ醤油味は昔ながらの町中華のしょっぱめの味付け。だれでもほっと安心する味わいだ。長年守ってきた味なんだろうと納得する。もやしや人参などの野菜とちぢれ麵があんかけスープとからまって、とろりとした食感を楽しめる。特にきくらげの食感はあんかけスープと相性がいい。
チャーハンはパラパラしすぎず、ほどよい感じの炒め具合。控えめの味付けで、もやしそばのしっかりとした味とのバランスがちょうどいい。あつあつ感が続くあんかけスープはチャーハンと一緒に食べるのにピッタリだ。半チャーハンといってもボリューム満点で、ランチメニューとしては大満足! 人気の理由がよくわかる。
常連さんの要望に応え中華メニューを充実させる
「1950年に祖父が今の店より品川駅に近い場所に4坪のカウンター席だけの、ホルモン料理とお酒を出す店を開店しました」と店の歴史を教えてくれたのは3代目オーナー。1964年には現在の場所へ移転し今の居酒屋へ業態を変更、常連客からの要望を聞きながら、居酒屋メニューだけではなく、中華メニューも充実させてきた。
「今では和食や中華、居酒屋メニューなど多彩な料理を、一品一品職人さんが手作りして提供しています」とオーナー。なるほど、看板の「中華」「和中折衷料理」とは常連さんの要望に応えて本格的な中華メニューを取り入れたということかと納得。
3代目は大学を卒業したあと、大手の居酒屋チェーンや食品メーカーに勤務。その後、会計事務所や大学院で勉強を重ねたという経歴を持つ。お客さまの満足を第一に考え、常連さんの顔はだいたい覚えているそう。
「お客さまは常連客が中心で、品川にある大手企業に務める人や地元のみなさんが足繁く通ってくれています。地元で長く営業している老舗の居酒屋なので、安心感もあるようです」とオーナー。新幹線が品川駅に停まるようになってからは出張帰りのサラリーマンや海外からのお客さんも増えて、客層も幅広くなってきている。
オーナーのポリシーは、出来合いのものを使用しないこと。大田市場から仕入れた新鮮な食材を使って調理している。メニューも新しいものを無理に追いかけたりはせず、長年お客さんから支持された料理を大切にしているそう。
店名の『三平』の由来を聞くと、「かなり昔の話で、よく分からないのですが、お客さんには、お酒を3杯は飲んでいただきたいという思いから3杯、さんぱい……さんぺいとなったと聞いてます」と笑う。
創業から変わらない自慢の居酒屋メニューも楽しみたい
『居酒屋 三平』は11:30の開店からお酒を注文することができるので、昼飲みや仕事帰りの一杯でもおすすめの店だ。そこで、忘れてはいけない居酒屋メニューが、創業以来継承しているというホルモン炒め(モツ煮込み)550円。
創業当時、近くにある食肉処理場から入手した新鮮なホルモンで作った料理で、現在でも変わらない味だ。ホルモンを3時間しっかりと煮込んでから炒めネギをかけただけのメニューだが、臭みのない、とろりと柔らかい食感は、素材のよさと丁寧な調理によるものだろう。濃いめの味付けも酒の肴にはぴったりだ。
今回はランチをいただいたが、老舗居酒屋らしい自慢のメニューにすっかり魅せられた。次回は、休みの日に昼からホルモン炒めと冷たいビールをゆっくりと楽しみたいと思う。
構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=羽牟克郎