材料も手間暇もアップした鶏の旨みが感じられるスープ
カウンター席わずか13席。店舗がある早稲田通り沿いにはいつも行列が続いている。
しばらく並んで、リニューアルした鶏そば1050円の食券を買って席へ。丼が運ばれてくると、芳醇な香りが鼻をくすぐる。
琥珀色に輝くスープをひと口。鶏と鶏油(ちーゆ)の旨みがしっかりとあるが、くどさはなくスッキリとした味わい。深いコクも感じられ、上質のスープだと実感した。
スープは、店主で総料理長の山口裕史さんの出身地・会津の会津地鶏を中心に地鶏を4種類使う。素材の鮮度を保つためにゆっくりと2~3日かけて解凍し、熟成をさせる。「今までの2倍ぐらいの材料を使っています」と山口さん。
リニューアルはほかにもある。今までは大きな寸胴で一度にスープを仕込んでいたが、新しいラーメンは小さな寸胴で何度も分けて作るという。このことによってフレッシュな状態で“素材の旨さ”を実感できるのだという。
スープに負けない麺やチャーシュー
力強く、かつまろやかに仕上がったスープより楽しんでもらうため、麺やトッピングもリニューアルした。
麺は以前から取り引きがある京都の老舗製麺所・麺屋棣鄂(ていがく)に新たな麺を依頼。今までよりもさらにしなやかに、伸びにくく、スープに合致する『らぁ麺やまぐち』専用の特注麺に仕上げているという。小麦本来の味わいが感じられるコシが強く滑らかな麺との相性は抜群で、150gという量でもペロッと食べられる。
チャーシューは2種類トッピングされる。肩ロースのチャーシューは沸騰しない温度で煮込み、とろけるような旨さがある。赤身のチャーシューはじっくりとローストして豚肉本来の旨味が感じられる。
じっくり煮込まれた極太のメンマも秀逸で、しっかりとした味わいとシャキシャキした食感がたまらない。
すべてを見直すことによって究極に近づく
山口さんは「今までも小さなリニューアルを行ってきたのですが、今回は大幅にリニューアルしています」と話す。
「素材の分量だけでなく、調理工程、調理器具にいたるまで、細かいところ・見えにくかったところまで一つひとつ突き詰めました」。
山口さんが掲げるのは「素材を前面に打ち出した分かりやすいラーメン」。実際に鶏そばを食べてみると、以前にも増して洗練され、完成度が増した心に残る味だった。
取材・文・撮影=速志 淳 構成=アド・グリーン